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強い相場に乗るだけ。東京株式市場はまだまだ全然バブルではない=江守哲

日本株はバブルになっていると指摘する人が増えましたが、私は「そうかなぁ?」と思いますね。割高感はありませんし、新しい領域に入ったと理解すべきです。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年11月6日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

日経平均が一時2万3,000円台回復、日本株は歴史的大相場に入った

日銀が相場を押し上げているのではない

この動きはやはり本物です。バブル崩壊後の高値更新も視野に入ってきました(※編注:本稿執筆11月6日時点。日経平均は11月9日の取引時間中、25年10カ月ぶりに一時2万3,000円台を回復しました)。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

10月は本当に強い1カ月間でした。結局、日銀がETFを購入したのは30日と31日だけでした。あれだけ上昇すれば、さすがに買えないですね。相場を押し上げるわけにはいかないので。

しかし、下げると日銀が居る。これほどの安心感もありません。繰り返すように、日銀のETF買いを利用するくらいのしたたかさがないといけません。日銀買いが下値を支えてくれるので、心配は無用です。

この株高は誰のおかげ?

米国ではFOMCが開催されましたが、日本でも金融政策決定会合が開催されました。長短金利操作を柱とする現在の金融政策を維持しました。

最新の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、17年度の物価上昇率見通しを前年度比0.8%(従来1.1%)に下方修正しました。黒田総裁は会見で、2%の物価上昇目標について「まだまだ遠い」とし、実現に向けて大規模金融緩和を継続する考えを強調しました。まさに従来通りの発言です。

2%の物価目標の実現には、賃金の上昇が不可欠とされています。安倍首相は経済財政諮問会議で、「来春の労使交渉で3%の賃上げが実現するよう期待する」と具体的な水準に言及する異例の発言を行っています。

個別の民間企業が政府の言うことをそのまま聞かなければならないようになれば、それはもはや民間企業ではなくなります。非常に危険です。

政府は賃金を上げる企業に明確なインセンティブを与えることを示さなければ、企業は動きません。安倍首相はそのあたりを勘違いしています。強権発動でもすれば言うことを聞くと考えているのでしょうか。思い上がりもよいところですね。口だけでなく、謙虚に人の言うことに耳を傾け、それに真摯に対応すべきですね。

それはともかく、黒田総裁の任期は来年4月に迫っています。

黒田総裁は次期総裁について、「経済や金融が国際化しており、国際的な人脈が必要」と指摘しています。ちまたでは、「ポスト黒田も黒田氏」などと言われているようですね。それほどまでに人材不足なのでしょうか。優秀で柔軟な方は居そうなものですが。

黒田氏は、「景気は所得から支出への前向きの循環メカニズムが働き、緩やかに拡大している」としています。また「物価は企業の賃金や価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっている」とし、「弱めの動きが続いており、2%の物価目標にはまだまだ遠い」としています。

やはりここでも、企業側の責任を指摘しています。もっとも、金融政策でできることは限られていることを考えれば、仕方のない発言ともいえます。

またETF購入については、「現時点で東京の株式市場の3%程度を買い入れた。経済、物価にプラスの影響を及ぼしていくことを目的にやっており、株価をターゲットにやっているわけではない」と強調しています。

そして「国債買い入れの80兆円のめどと、6兆円のETF買い入れ方針の性格はまったく違う」としています。黒田総裁は「国債買い入れはあくまでイールドカーブをコントロールするための手段と位置付けている」とする一方で、「年間約6兆円のETF買い入れは方針」としています。

まぁ、相変わらずの口で上手く煙に巻こうとする得意の手法ですが、すでに市場にバレバレですから、もう少し謙虚にご説明された方がよいですね(笑)。特に、記者への対応は横柄すぎますので。イエレンFRB議長を見習ってほしいところです。

それはともかく、このような政府・日銀がいろいろ言ったとしても、最終的に重要なことは、各企業が努力をして収益を上げており、その結果が株高であるということです。政府・日銀が株高を演出したと考えているのであれば、それこそ思い上がりですね。

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この株高は「バブル」ではなく企業努力の賜物

それにしても、株価の上がり方はものすごいものがあります。1日の日経平均は400円超の大幅高でした。主要企業の決算発表を材料に買われました。

10月31日に1回目の集中日を迎えた3月期決算企業による9月中間決算発表を材料に、好決算を発表した個別銘柄に買いが集中しました。特にソニー東京エレクトロンなどが急伸し、これが日経平均株価の上げ幅拡大を支援しました。想定以上の好業績を発表する企業が目立つ上、米国における良好な経済指標の発表や半導体関連株の上昇、さらに円安傾向なども株高を支援しています。

この勢いでいくと、バブル崩壊後の96年6月に付けた戻り高値である2万2666円を目指す動きになりますね。もう目の前ですが(※編注:本稿執筆11月6日時点)。

一方、第4次安倍内閣が1日に発足しましたね。初閣議で17年度補正予算案の編成を指示するとともに、衆院選で公約に掲げた教育無償化を柱とする2兆円規模の政策パッケージの策定に着手することを言明しました。

安倍首相は「賃上げの流れを加速させ、デフレ脱却を確実にする」としました。さらに5日に来日したトランプ米大統領との首脳会談では、北朝鮮情勢への対応を協議するとしています。

さて、上場企業の17年9月中間の連結決算発表は中盤を迎えていますが、11月2日までに発表した604社(金融を除く)の売上高は前年同期比9.4%、経常利益は同27.2%増で、きわめて強い内容です。好調な世界経済や円安を背景に、国際競争力の高い輸出企業の業績が拡大しているといえます。また為替レートは1ドル=111円で、前年同期より約6円の円安水準だったことも、収益に貢献したといえます。

9月中間の好業績を受けて、2日までに発表した企業の3割に相当する186社が18年3月期(通期)の経常利益予想を上方修正しています。経常利益見通しは前期比13.8%増で、8月時点の予想である5.6%増から大幅に拡大しています。日本の主力企業の収益力は相当上がっているということです。

そのうえ、株価も全く割高感がありません。きわめて健全な状況にあり、株高基調は自然な流れでしょう。

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日本株はすでに「歴史的大相場」に入っている

より長い期間でみれば、日本株はすでに新しい領域に入っています。年末23000円を達成することが、次のステージにつながることになるでしょう。

私の周りにも、「バブルになっている」と指摘するひとが増えてきました。そうかなぁと思いますね。とにかく、割高ではありませんから。バブルのときには、PERが異常値になります。いまはまだ適正です。今後の業績拡大では、割安になっていきます。さらに言えば、本当のバブルになれば、株価はこのようなレベルでは済まないでしょう。いまは新しいステージに移行していることを理解しなければなりません。

どこまで割り切って買いを入れられるか

海外の長期投資家はすでに行動しています。外国人投資家が2.7兆円買っている最中に、日本の投資家は同じくらい売っています。本当にもったいないとしか言いようがありません。

歴史的大相場」に入っているのです。今後のパフォーマンスは、どこまで割り切って買いを入れられるかにかかってきます。「22年サイクルの上昇サイドのトレンド」に入っているのですから、ここは素直に買いたいですね。

それができるかどうかで、今後15年超のパフォーマンスが決まってきます。よく考えて行動したいところです。

【日経平均株価:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ18335円~23400円(17年末23020円)/弱気シナリオ14970円~19915円(17年末15620円)

【日経平均株価:11月の想定レンジ】

強気シナリオ21660円~22770円/弱気シナリオ14970円~16860円

【TOPIX:2017年の想定レンジ】

強気シナリオ1473~1860(17年末1833)/弱気シナリオ1215~1574(17年末1270)

【TOPIX:11月の想定レンジ】

強気シナリオ1734~1860/弱気シナリオ1221~1328

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年11月6日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した為替、コモディティ各市場の詳細な分析(約1万8,000文字)もすぐ読めます。

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2017年11月6日号の目次

・マーケット・ヴューポイント~「強い相場に乗るだけ」
・株式市場~米国株はバブルではない強さ、日本株はバブル崩壊後の高値を更新へ
・為替市場~ドル円は114円を挟んで動きづらい状況
・コモディティ市場~金は軟調、原油は55ドル超え!
・今週の「ポジショントーク」~すべてが強くなる
・ヘッジファンド投資戦略~「仮想通貨をどう考えるか」-投資戦略構築のポイント~
・ベースボール・パーク~「月曜日は大学野球観戦、土曜日は休んで、日曜日は久しぶりに野球」
・セミナー・メディア出演のお知らせ

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株式・為替・コモディティなどの独自の市場分析を踏まえ、常識・定説とは異なる投資戦略の考え方を読者と共有したいと思います。グローバル投資家やヘッジファンドの投資戦略の構築プロセスなどについてもお話します。さらに商社出身でコモディティの現物取引にも従事していた経験や、幅広い人脈から、面白いネタや裏話もご披露します。またマーケット関連だけでなく、野球を中心にスポーツネタやマーケットと野球・スポーツの共通性などについても触れてみたいと思います。

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