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GDPの基準改定が証明した「経済学者のウソ」と日本再成長への道=三橋貴明

経済学者たちは「労働投入量や資本投入量を増やす構造改革を実施すれば、潜在成長率が高まる」と主張するが、日本の潜在成長率が低迷しているのは、単にデフレでGDP成長率が高まらないためなのである。因果関係が、完璧に逆になっている。(『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』三橋貴明)

※本記事は、『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 2017年2月11日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本の潜在成長率を高めたければ、財政出動でGDPを拡大せよ

突然に上方修正された「日本の潜在成長率」

内閣府は1月25日、「今週の指標 No.1159 基準改定等を反映した2016年7-9月期四半期別GDP速報(2次速報)を踏まえたGDPギャップ及び潜在成長率について」を公表した。驚くべきことに、日本の潜在成長率(潜在GDPの拡大率)が、いきなり+0.4%から+0.8%に上方修正された。

理由について、内閣府は、「直近の潜在成長率は+0.8%となり、1次速報に基づく試算値(+0.4%)から上方改定となった。この要因としては、基準改定を通じて、各種の推計手法の開発や、より詳細な基礎統計の取込みのほか、研究開発(R&D)投資の資本化を含む国際基準(2008SNA)に対応したことなどにより、直近のGDP成長率が上方改定されたため、足下のGDPのトレンドの伸びが上向き、全要素生産性(TFP)の伸びとして潜在成長率の推計に反映された結果である」と、説明している。

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潜在GDPとは、日本の全ての資本や労働が稼働し、100%の稼働率を達成した際に生産されるGDPと定義される。例えば、労働人口が増える見込みならば、その分だけ潜在成長率は増える。あるいは、資本が多く投じられるならば、やはり潜在成長率は上向く

とはいえ、現在の日本は労働人口は増えておらず、投資(資本を投じる、という意味)も低迷中だ。それにも関わらず、潜在成長率が、唐突に2倍になった。なぜなのだろうか。

なぜ唐突に潜在成長率が2倍になったのか?

潜在成長率は「労働投入量」「資本投入量」そして「TFP(全要素生産性)」の三つにより決定される。

問題は「TFP」だ。TFPは、実は事前に把握ができず、経済成長という「結果」から労働投入量、資本投入量の寄与度を控除し、算出されるのである。すなわち、労働投入量と資本投入量に変化がなく、それでも実質GDPが拡大した場合、「TFPが高まったため、潜在成長率が増えた」と解釈されるのだ。

内閣府は16年12月、GDP統計の基準を国際基準2008SNAに変更した。結果的に、日本のGDPは約30兆円増加した。GDPが統計手法の変更により成長したものの、労働投入量と資本投入量が劇的に変わるわけではないため、内閣府は、「全要素生産性(TFP)の伸びとして潜在成長率の推計に反映された結果」と書いているのである。

不思議な話だ。事前に計測することが不可能なTFPが、統計手法の変更によりGDPが拡大した結果、増えたTFPが増えた結果日本の潜在成長率が倍増した。

要するに、潜在成長率を高めたいならば、GDPを増やせばいいというだけの話なのだ。日本が財政拡大政策に転じ、GDPが増えると、労働投入量や資本投入量の動向がどうであれ、「TFPが伸びたため、潜在成長率が高まる」という結果にならざるを得ない。

Next: 「労働・資本投入量を増やせば潜在成長率が高まる」という迷信が日本を殺す



「労働・資本投入量を増やせば潜在成長率が高まる」という迷信が日本を殺す

ところが、経済学者たちは労働投入量や資本投入量を増やす構造改革を実施すれば、潜在成長率が高まると主張する。

「日本の潜在成長率は低く、GDPは拡大しない。だから、労働投入量や資本投入量を増やす構造改革が必要だ」というのが、経済学者たちの主張だが、話はまるで逆なのである。潜在成長率を高めたいのであれば、政府がGDPという「需要」を拡大すれば、それで話が済んでしまう。労働投入量や資本投入量がどうであれ、「TFPの伸びとして推計に反映された結果」日本の潜在成長率は上昇することになる。

結局、GDPが現実に成長している国は、潜在成長率が高まる。あるいは、デフレでGDPが成長しない国は、潜在成長率が低い。ただ、それだけの話なのだ。

日本の潜在成長率が低迷しているのは、単にデフレでGDP成長率が高まらないためなのである。因果関係が、完璧に逆になっている。

日本の潜在成長率を高めたいのであれば、政府が財政出動でデフレギャップを埋め、GDPを拡大すればいい。この単純な事実を、2008SNAへのGDP基準改定が証明してしまったのである。
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・統計手法変更で倍増した潜在成長率(2/11)
・政府の「実質負債」対GDP比率(2/4)


※本記事は有料メルマガ『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』2017年2月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』(2017年2月11日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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