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「中国不動産バブル崩壊」はウソ?ホント? 上海で“街の不動産屋さん”に聞いてみました

アジアのローカル景気やおカネ事情を現地在住ウォッチャーがレポート。今回は中国・上海にある「街の不動産屋さん」に、現地の不動産景況感や今後の見通しを聞いてみました!(取材・文 / ジンダオ)

【 取材時の為替レート:1人民元 = 約19円 】

“中国不動産バブル”の実態は?学生街でがんばる「街の不動産屋さん」に聞いてみる

大家好(だーじぁーはお)!皆さんコンニチワ。
路地ウラウォッチャー・中国担当の「ジンダオ」です。

今回は、上海市虹口区の不動産仲介会社にお邪魔して、激しい競争を勝ち抜くための商売術や、現地の不動産景況感を聞いてみたいと思います。

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ここ数年、日本の新聞や週刊誌で、「中国の不動産バブルがいよいよ崩壊!?」なんて煽り記事をよく見かけますよね。それが本当なら、「街の不動産屋さん」にも何らかの影響が出ているはず。

中国はとても広く、地域によっても事情は異なりますが、投資の参考になるかもしれません。

こちらが目的地の「吉旺房产(じーわんふぁんちゃん)不動産」です。

上海中心部の中山公園駅から3号線で約20分、赤峰路駅近くの財経大中山北路キャンパス裏手に店を構える、まさに「街の不動産屋さん」。

このあたりは虹口区内でも大学が数多く集まるエリアで、販売用物件はもちろん、学生向けの賃貸物件がたくさんあるんです。私も上海留学時代には、この不動産屋で物件を紹介してもらいました。

オーナーの邱さんご夫妻です。現在の会社は創業13年目、社長の邱さんと奥様の2名で経営しています。繁忙期には物件案内の臨時スタッフを雇うこともあるそうですが、少数精鋭のため、カバーするエリアは虹口区周辺に絞っています。

Next: マンションが10年で3倍以上に値上がり!中国不動産ビジネスの流れ

路地ウラウォッチャー – ジンダオ

38歳・長崎市生まれ。中国上海に中国語ゼロで渡航して早11年目。語学留学を経て、語学学校の立ち上げ、中国横断3ヶ月バックパックなどドップリ中国にハマる生活。趣味は中華食べ歩きと中華アンティーク収集。訪中当初から中国人に間違えられるアジアンテイストな顔つきのお陰で、中国人に紛れ込むのはお手の物。

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マンションが10年で3倍以上に値上がり!中国不動産仲介ビジネスの流れ

邱さんの会社が扱うのは中古物件の売買と賃貸の仲介。基本的な流れは、売買も賃貸も同じです。

売り手(または家主)が、邱さんの会社に物件情報を登録。訪問してきた買い手(または借り手)に予算、希望条件などをヒアリングして、マッチしそうな物件を紹介していきます。

そして気に入った物件が空き家だったり、居住中であっても住人の許可が取れる場合は内覧へ。特に問題なければ、売り手(家主)と買い手(借り手)のスケジュールを調整し、実際に面会してもらって契約の運びとなります。

その後、物件売買の場合は不動産登記の変更などを行い、また、外国人客が賃貸物件に入居する場合は賃貸契約書とオーナー身分証、不動産登記書などを揃えて派出所に登録申請を行います。

ビジネスモデルとしては、売買の場合、売り手と買い手からそれぞれ売買成約額の1%を手数料として徴収。また賃貸の場合、家主と入居者からそれぞれ月額賃料の35%を手数料として徴収するシステムとなっています。

例えば、100万元(約1,900万円)で売買が成約した場合は、2万元(約38万円)の手数料が邱さんの会社に入るわけですね。

ところで、邱さんの会社がカバーする上海市虹口区エリアで100万元(約1,900万円)の物件というと、現在では、だいたい、1LDK・40平米程度のマンション(6階建て・エレベータなし)になるでしょうか。

これと同様の物件が、10年ほど前には30万元(約570万円)で取引されていましたので、当地の不動産価格はずいぶん値上がりしている印象があります。

そこで気になる上海の不動産市況を、邱さんに聞いてみました。

Next: 不動産価格は値上がり傾向。それでも将来を懸念する理由とは?

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上海の不動産価格は値上がり傾向。それでも将来を懸念する理由とは?

最近の上海の不動産価格を邱さんに質問したところ、「上海の不動産価格は、いまも多少は値上がり傾向にあるよ」とのこと。

少なくとも、邱さんの会社がカバーする上海市虹口区エリアでは「不動産バブル崩壊」といった現象は起きていないようです。交通至便なエリアであることも大きいかもしれません。

ただし、「今後もこの値上がりが続くとは思えないけどね」とも。邱さんは、その理由として、物件取得者の年齢層や、一人っ子の多い中国の人口構成を挙げていました。

いまの上海で不動産を多く持っている年齢層は、私と同じ50代以上が中心なんだな。そうすると、必然的に不動産の相続がたくさん発生するだろう?まあ両親から貰ったり、自分で取得したり、理由は人それぞれだけれども。旦那が1つ、嫁が1つ、それぞれすでに物件を持った状態で結婚する、そんな上海人が大勢いるんだ

物件数のダブつきを指摘する邱さんは、さらに以下のように続けます。

その上、彼らは結婚を機に、新たに自分たちが住む家を持つようになる。でもだ、その夫婦が生む子どもは、やっぱり一人っ子なワケだよ(笑)つまり将来、その子どもには、合計3つの不動産が引き継がれることになる。同じ状況が、どこの家庭でも起きるはずだ

足元の不動産市況は悪くないものの、10~20年スパンで考えれば、将来の人口減少は確実。物件が余り、借り手も減る以上、不動産価格の値上がりが続く道理はない。上海市虹口区で「街の不動産屋さん」を経営する邱さんは、そのように考え、いまから対策を検討しているようでした。

Next: 邱さんのかき入れ時は2月と9月。その理由と気になる収入は?

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邱さんのかき入れ時は2月と9月。その理由と気になる収入は?

邱さんの商売のかき入れ時は、売買物件なら9~10月だそうです。

最大の理由は、上海の灼熱の夏が遠のき、物件を探すお客さんが外出しやすくなるから。

加えて、内装工事に1ヶ月程度をかけ、その後、工事後の悪い空気を2ヶ月ほどかけて入れ替えることを考慮すると、新年からタイミングよく新居で暮らしはじめるには、この季節に物件を購入するのがベストなのだそうです。

いっぽう、賃貸物件の場合は2月と9月が繁忙期。2月は、旧正月明けに地方から仕事を探しにくる若者が上海にやって来ますし、9月は中国の年度始めのため、各省からの学生や他国からの留学生が大勢やって来るとのことです。

気になる売上は、閑散期で2~3万元(約47.5万円)、繁忙期で10万元(約190万円)くらい。調子のいい年は、年間60万元(約1,140万円)を売り上げることができるそうですよ。

約800メートルの路地ウラに、競合他店が7店舗も

邱さんが店舗を構える、約800メートルの“路地ウラ”。この通りは、「我愛我家」などの現地大手業者や小規模業者が7店舗も競合する、不動産仲介業の激戦区です。

上海市虹口区周辺は、銀行やスーパー等の生活施設が一通り揃っており、地下鉄の駅や路線バスの停留場も近く、学生客が多く見込めるエリア。そのため各社こぞって出店するのですが、今回の訪問でも、経営不振から店じまいをしている不動産業者を見かけました。

あえて激戦エリアに絞って商売を続ける邱さんに、その理由を聞くと、「我々のような小さい会社にはブランド力がない。そんな商売ほど、人脈と口コミがモノを言う。それにはエリアを絞った方がいいんだよ」とのこと。

また大手業者に対抗するため、小規模業者同士で協力し、お互いが取り扱う物件を紹介しあい、得られた手数料を折半するといった取り組みも行っています。

ちなみに、そんな邱さんご夫妻は、現在の会社を創業する以前は某日系企業の工場で働いていました。邱さんは製造、奥様は営業として、6年以上を勤めたそうです。

しかしやがて、日本留学経験があって日本語を話せる中国人ワーカーばかりを可愛がる日本人社員と、日本語を話せない一般中国人ワーカーの間で大規模な対立が発生。

後者に属していた邱さんご夫妻は、それを契機に、親族が経営していた不動産仲介業に鞍替えしたとのことでした。

このようなトラブルは、中国の日系企業では珍しくないのですが、そのせいで邱さんのように仕事熱心な方が日系企業から離れていってしまうのであれば、それは少しもったいない気もしました。

邱さん(50代)不動産仲介業
に景気アンケート!

あなたの景気は100点満点で何点?
「70点くらいかな。最近、日本人と韓国人の留学生が減って、紹介件数が下がったからなぁ」

これから景気は良くなると思う?悪くなると思う?
「数年程度は上向きだろう。ただ10年先はわからんなぁ。特に不動産はな」

いまいちばん欲しいモノは何?
「家は賃貸用を含めて持っているし、クルマもある。物欲はこれといってないな。それよりも大学を卒業したばかりの娘だ。いま社会人1年目、将来有望な仕事で稼げるようになって欲しいよ。彼氏もまだいないようなんだが、ジンダオお前どうだ?」

路地ウラウォッチャー – ジンダオ

38歳・長崎市生まれ。中国上海に中国語ゼロで渡航して早11年目。語学留学を経て、語学学校の立ち上げ、中国横断3ヶ月バックパックなどドップリ中国にハマる生活。趣味は中華食べ歩きと中華アンティーク収集。訪中当初から中国人に間違えられるアジアンテイストな顔つきのお陰で、中国人に紛れ込むのはお手の物。

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