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【2月米雇用統計】利上げ「年4回」意識も目先上値は限定的、レンジ114.0~116.0円=ゆきママ

巷ではプレミアム・フライデーが話題となっていますが、投資家にとっては今日の雇用統計ナイトこそが特別な金曜日ですよね。そして、これまでと変わらず今回も利上げが1つの大きなテーマとなっていますが、ここ1~2週間で見通しに大きな変化がありました。これらを含めて今晩の雇用統計が為替相場にどのような影響をもたらすか、しっかり解説していきたいと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

ドル円は最高の環境だが、早くも115円達成で高値掴みには要注意

年3回どころか4回を見込み始めたマーケット

先月の段階では年3回よりも年2回の利上げが予想の中心で、利上げの開始時期は6月になるのではないかといった見通しでした。ところが先週、突然FRBメンバーである各連銀総裁や理事、さらにはイエレンFRB議長が利上げへの強い意志を示したことで、見通しが一変しました。

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特にイエレンは慎重な人物として知られており、これまでも利上げにはかなり消極的でしたから、トランプの政策が明らかにならない段階では動かないだろうとされてきました。言ってしまえば「イエレンは3月利上げなんてできないだろう」と市場関係者はたかをくくっていたわけですが、それが見事に裏切られる格好となったわけです。

そして、今や年3回の利上げがメインシナリオとなったばかりか、年4回という可能性まで市場は織り込み始めています。あまりの変わり身の早さについていけない感もありますが、Fedウォッチからも年4回の利上げというのは読み取ることができます。

FF金利先物の動向に基づき算出された今年の利上げ回数

上の図は今年12月時点の金利見通しから利上げ回数を割り出したものです。0.25%刻みの利上げであれば年4回という見方が2割強もあることになります。

3月の利上げはほぼ既定路線でFedウォッチでも9割以上といった見通しにとなっていることから、この部分での変化がさほど望めず、ドル円の上値は伸びないのではないかといった指摘もあります。

しかしながら、本日の雇用統計の結果次第では「年4回」という可能性を探っていくことになるため、金利の上昇余地、引いてはドルの上昇余地は十分あるのではないかと考えています。

というわけで、今回も賃金上昇率(平均時給)の変化を中心に金利動向(米長期金利)から相場を見ていきたいところでしょう。やはり賃金上昇圧力が強くなければ、FRBは利上げを急がないということになってしまいますから、ここが前回に続き最大の焦点となりそうです。

Next: ADPが1年ぶりの高水準で期待感もうなぎ上り



ADPが1年ぶりの高水準で期待感もうなぎ上り

それでは、先行指標や事前予想値、注意すべきポイントなどについて解説していきます。まずは先行指標から。

先行指標の結果(数値はいずれも速報値)

ISM製造業雇用指数は前月を下回っているものの、数字そのものは強いですから、どれをとっても非常に良好であると言えるでしょう。とりわけ、ADP雇用報告については市場予想の+19.0万人を大きく上回る+29.8万人となっており、1年ぶりの水準を記録したことで暖冬の影響を期待する声も出始めています。

もっともADPの数字と雇用統計の相関性はあまりないといった話もあるので、過信は禁物です。ですが、少なくとも先行指標から米経済が下振れしている兆候はなく、本番への期待感が高まっているというのが妥当な見方でしょう。

そして、気になる雇用統計の事前予想値については、非農業部門雇用者数が+20.0万人、失業率が4.7%、賃金上昇率が前月比で+0.3%となっています。ADP雇用報告を受けて非農業部門雇用者数は予想値が引き上げられましたが、これでも控えめといった感じなので、最低ラインと見ておいた方が良さそうです。

また、焦点の賃金上昇率については、ここ最近、明らかにモタつきが目立ちます。年4回の利上げを織り込んでいくためには、+0.3%という数字はクリアする必要があるでしょう。

ADPでは、建設や製造業といった賃金水準の高い職種が雇用者数を押し上げる格好となっています。なので大丈夫だとは思いますが、実は前回の1月雇用統計時に建設・製造・金融といった面で雇用が伸びているのにも関わらず、賃金上昇率は前月比+0.1%とイマイチだったので、個人的には気は抜けないと感じています。

環境は最高だが、早くも115円達成で高値掴みには警戒

本日早朝に1ドル=115円の大台を突破しました。114円後半からは売り注文も多く、115.00円近辺にはオプションに絡んだ注文もあってこなしていくのはかなり困難と考えていましたが、雇用統計前に達成しています。

こうなると115円半ばにある強い抵抗帯を抜け、一段高という可能性も十分あります。流石に年初来高値(1月3日118.60円)がターゲットになったとは言い難いですが、上値は追いやすい環境になったと言えるでしょう。

しかも、ここ最近はトランプのドル高に対する口撃もあまりなく、さらに今後発表される予算教書や税制改革への期待が維持されていますからね。

特に期待感の維持に関しては、トランプマジックというほかありません。「税制改革が形になるのは夏頃」とムニューシン米財務長官が発言した時点で材料出尽くしとなってもおかしくなかったのですが、トランプは期待を裏切らないという絶対の信頼が市場にはあるようで、期待感は残り続けています。

将来的にはトランプへの期待が一気に巻き戻される場面もあるでしょうが、現在の状況としてはドル円にとってはほぼ最高の環境なので、バイアスとしては上方向で間違いないのかなと思います。

とはいえ、やはり上値が伸びたら伸びたでトランプのドル高けん制発言が懸念されることになるでしょうし、絶好の売り場になるということも否定できずなので、高値掴みにならないように注意しながらトレードしていく必要がありそうです。

Next: 想定レートは1ドル=114.00~116.00円!チャンスは限定的



想定レートは1ドル=114.00~116.00円!チャンスは限定的

ADP発表後から期待感先行の流れとなっており、本校執筆時点(10日午前11:30時点)のレートが1ドル=115.20円近辺。流石にここから2円も3円も伸びていくという相場はちょっと考え難いですね。

多少行き過ぎ感のある中で、これまでの上値の重さも考慮すると116.00円という節目が1つのピークかと思います。また、今週は底堅く114.00円ラインをわずかに割り込む程度でしたので、多少予想を下回る程度なら底もせいぜいこの近辺になると考えています。なので、想定レートは狭めの1ドル=114.00~116.00円としています。

やはり来週にはトランプ政権の予算教書やFOMCなどを控えていることを考えれば、流れについていきたいと思いつつも決め打ちは難しい状況です。なので、予想並みの結果となった場合は、狭めのレンジで推移する可能性が高そうです。つまり、チャンスはかなり限られているのかなと思います。

というわけで、今回の雇用統計におけるトレード戦略は、チャンスのみトレードするということになります。具体的には、初動は非農業部門雇用者数の数字に引っ張られがちで、賃金の数字を無視する傾向がありますから、ここにギャップがあればということです。

例えば、非農業部門雇用者数が事前予想値の+20.0万人を下回り、賃金上昇率が+0.3%という予想値を上回るパターンなどです。この場合、初動は雇用者数の数字を受けてドル売りに傾くでしょうが、その後は徐々に賃金に目が向いて再評価されてドル買いになります。

ここ最近はこの逆、雇用者数が予想を上回り、賃金上昇率が予想を下回って結局は下方向といったパターンも含めて、初動の動きが騙しのようになることが非常に多いですから、こういったチャンスがあれば狙っていきたいところでしょう。

とはいえ、押し目と戻り売りのどちらかといえば、やはり押し目の方を丁寧に拾った方が良いのではないかと思います。先ほども書いたように、バイアスとしては上方向にありますからね。

このように今回の雇用統計は雇用者数が予想を下回って、賃金上昇率が予想を上回るというような限られたシチュエーションでしか、わかりやすいトレード機会はなさそうです。まずは無理せずということを念頭に置きつつ、慎重に参加して頂ければと思います。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年3月10日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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