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なぜ今、始めるべきなのか? 個人型確定拠出年金(iDeCo)が示す日本の未来=荒川雄一

確定拠出年金(iDeCo)を始めてますか? 国が作った運用益が非課税になる等メリットが大きい制度ですが、裏を返せば「年金は自分で用意を」ということです。(『プロが教える投資信託運用術』荒川雄一)

プロフィール:荒川雄一(あらかわ ゆういち)
国際フィナンシャルコンサルタント、海外ファンドアドバイザー。金融機関に影響を受けない独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として、投資顧問会社IFA JAPANほか、リンクスグループ3社の代表を務める。投資教育にも力を入れており、国立高知大学講師、大前研一氏監修BBT大学院大学講師などを歴任、講演回数800回以上。その他、日本経済新聞社、各マネー誌、フジTVなど執筆、出演も多数。

年金は自分で用意しろ? 若い人ほど早く始めるべき理由と注意点

iDeCo(個人型確定拠出年金)の最新状況

新年早々、1月4日に国民年金基金連合会から「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の加入状況が発表されました。2017年11月末時点で、加入者総数は71万2,081人となりました。11月の新規加入者は2万6,661人で、2017年としては最も少ない月でした。

1月から3月までの新規加入者:12万9,539人
4月から6月までの新規加入者:12万4,037人
7月から9月までの新規加入者:10万6,985人

と、最初の月平均4万3,000人ほどのペースから、徐々にスローダウンしています。

11月は忙しい年末近くでもあり、2018年から「積み立てNISA」もスタートするなど、いろいろな理由が考えられます。また「NISA」と違って、「60歳までは受け取ることができない」というのも、加入資格がある方が少し躊躇する理由として考えられます。

しかし、人口統計は嘘をつきません。日本の人口は確実に減ってきています。医療の進歩で寿命は伸びていますが、年金を収める人の数は確実に減っていくのです。

若い人ほど、年金受給額が減少する可能性がある

現在、20歳から60歳までの人であれば、「iDeCo」の加入資格があります。利用できる方は、もう始められましたでしょうか!?

自分自身が若い頃を振り返ってみてもそうですが、年上の人から「老後(退職後)の備え」と言われても、確かにピンときませんでした。ただ、今の若い方が歳を重ねた時には、公的年金は、正直どうなっているか分かりません。

もう既に60歳を過ぎてしまって「iDeCo」を利用することができない方は、おそらく今後、減額されるようなことはあっても、なんとか年金をもらい続けることができるでしょう。

ところが、iDeCoを利用できる年齢の方は、若ければ若いほど、公的年金の受け取る額が減少していく可能性があります。

そのために国は、iDeCo(確定拠出年金)という、

a. 拠出時には、所得控除
b. 運用益に非課税
c. 60歳以降の退職時は、退職所得控除の利用可能

と至れり尽くせりの制度を作ってくれました。

裏を返せば、これだけメリットを用意しているのだから、「これからは、年金は自分で用意してください!」「もう国を頼らないでください!」と明確なメッセージを送っているのです。

このメッセージをしっかりと受け止め、まずは「iDeCo」を開始しましょう!

Next: 始めようと考えている方へ~iDeCoで投資信託を運用する際のリスクは?



iDeCoで投資信託を運用する場合のリスクとは?

まず運用面ですが、「iDeCo」で投資信託を利用する場合、よく「リスク」とか「標準偏差」という説明がされます。

この2つは、投資信託ではほぼ同義語として使われます。「リスク」という用語は、一般的には「危険な」といった意味で使われますが、投信信託や海外ファンドの世界では、「ブレ幅」という意味で用いられます。「想定(期待)リターン」に対して、どれくらい上下に「ブレ」があるかという意味です。

例えば、投資信託でも、投資対象(資産)が異なると、以下のようにブレ幅が大きく変わってきます。

        直近1年  直近3年  直近5年
国内債券A投信 : 2.80   1.94   1.80
国内株式B投信 : 21.39   16.77   18.30
新興国株式C投信: 22.67   18.46   20.66

例えば、「想定リターン1%」で「ブレ幅“3.0”」といったケースでは、上振れは+4%(1%+3%=4%)、そして、下振れは-2%(1%-3%=-2%)といった計算を行います。

そして、この「-2%から+4%の範囲」に入る確率が、統計学的に68%の確率と言われています。

同様に、「ブレ幅を2倍の“6.0”」にした場合は、その範囲は「-5%から+7%」となり、確率は95%となります(※統計上の確率で、必ずその通りになるという意味ではありません)。

以上のような説明を聞くと、何となく上下に大きくブレたりしない投資信託の方が、良い気がする方も多いかもしれません。

ただ、それも投資手法により、変わってきます。「iDeCo」のように、拠出できる上限金額が決まっていて、“コツコツ”と積み立てる場合には、むしろブレ幅の大きい商品の方が、大きく下がった時も買い続けることによって、平均取得単価を引き下げ「利益を得る可能性」を高めることができるケースもあります。

今後、日本政府の方針でもある「貯蓄から投資へ」という波に乗って、「NISA」「iDeCo」といった制度が、どんどん拡大・拡充されていく可能性大です。その時に、この「積立投資」という手法は、大変有効です。

重要なのは「どの金融機関で口座開設するのか」

次に、投資信託を活用するにあたって、運用面とともに忘れてはいけない要因が「コスト」です。

自分で新しく「iDeCo」始めるためには、口座の開設が必要です。ただ、どこの証券会社でも、銀行でも、同じではありません。どこを選択するかによって、口座の維持管理費用選べる投資信託金融商品の品ぞろえがまったく違うからです。

通常の金融商品と違い、「iDeCo」の場合、より差が大きいと言えます。その理由は、至って明快です。一言で言えば、金融機関にとってこの制度は、あまり儲からないからです。そのため、長期的観点にたって、「iDeCo」を取り込んでいこうと考える金融機関と、そうでない金融機関の取り組み方の差は、天と地ほども違います。

いくらら上手な運用をする投資信託を選択しても、「100戦100勝」ということはあり得ません。しかし「コスト」は、相場が上向きでも、下向きでも必ずかかるため、どこの金融機関で口座開設するかは、とても大切なポイントです。

また「iDeCo」は、税制上の優遇も大きいため、加入できる方はぜひとも検討したほうが良い制度といえます。

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「プロが教える投資信託運用術」』(2018年1月10日, 2017年3月22日, 2016年10月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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