確定拠出年金(iDeCo)を知っていますか? 聞いたことはあってもよく知らない方のために、基礎知識と具体的な「はじめ方の3ステップ」をご紹介します。(『20代~40代のあなたのFPのマネー講座』冨士野喜子)
プロフィール:冨士野喜子(ふじの よしこ)
ファイナンシャル・プランナー。大学卒業後、教育出版会社、外資系生命保険会社を経て独立。20~30代へ向けたライフプランニング・相談業務・セミナー講師として活動中。結婚、出産、子育てなどのライフイベントを踏まえて、夢を叶えるためのライフプランを立て、それに伴うお金の貯め方、家計費節約、生命保険の活用、住宅ローンを含めた住宅取得のアドバイス、女性の働き方などの提案を行っている。
個人型確定拠出年金のキホンと「はじめ方の3ステップ」を解説
iDeCo(イデコ)とは?
iDeCo(イデコ)とは、「個人型確定拠出年金」の愛称です。つまり「個人型」「確定拠出」「年金」です。
個人型 ⇔ 企業型
確定拠出」⇔ 確定給付
と対になっており、
- 企業型確定拠出年金
- 確定給付企業年金
というものもあります。何だかややこしいですね…。
そもそも年金制度は、以下の「3つ」あります。
- 公的年金
- 私的年金
- 企業年金
「iDeCo」は、その中の(3)企業年金の一種です。これについては後ほど詳述しますが、先に(1)と(2)について簡単に説明しましょう。
<1. 公的年金とは>
公的年金とは、「基礎年金」「厚生年金」(「共済年金」)です。20歳を超えたら、何かしらの「年金保険料」を支払うこととなります。これは(未納・滞納していなければ)誰もが必ず貰える年金です。
<2. 私的年金とは>
主に、民間の保険会社・銀行で契約する「年金保険商品」です。
「企業年金」とは
企業年金は、「会社が従業員の老後の生活保障のために、掛金を積み立てる」ものです。
従業員数が1000人以上の企業では72%、100~299人の企業では36%の導入率になっています(2013年 厚生労働省の調査による)。そもそも「企業年金制度はない」という会社も多いのです。
またここ最近では、加入していた「厚生年金基金(企業年金の1つ)」が解散し、「書類が手元にきたけどよく分からない…」というご相談も何件かありました。その他、「退職した会社で加入していた企業年金の続きがわからない」というご相談もあります。
<企業年金の歴史>
企業年金制度自体は、昭和34年から国の制度として始まりましたが、社会の変化に伴ってその種類が変わっています。
現在のライフスタイルや社会環境では、
- 1つの会社に勤め続けることが普通ではなくなった
- 企業年金の導入は、会社にとって負担が大きい
といった理由から、
- 個人で資産を持ち運び、管理・運用できる
- 老後の資産形成ができる
という企業年金制度として、平成13年に「確定拠出年金」制度が誕生しました。もう17年も前のお話で、実はずいぶん前からある制度なのです。
そして、今までは「企業型」が中心でしたが、昨年1月からより多くの方が使えるように制度改正され、「個人型」が注目されています。今まで加入できなかった「主婦」「公務員」も加入対象となり、「誰でも」加入できる制度となったのです。
Next: 確定拠出年金制度(イデコ)のメリット・デメリットは?
個人型確定拠出年金制度(イデコ)のメリット
- 掛金が全額所得控除となる(税金が安くなる)
- 受け取り時も税金優遇がある
- 運用益(増えた分)には税金がかからない
- 掛金が5,000円/月~と始めやすい
- 掛金は途中で止める(0円にする)こともできる
(編注:2018年以降、年間の限度額を超えなければ、月単位ではなくまとめて拠出できるようになりました。例えば、支出が多かった月は掛金を0円にして、他の月やボーナス時期に多く拠出することができます。)
個人型確定拠出年金制度(イデコ)のデメリット
- 必ず増えるとは限らない(運用リスク)
- 60歳まで引き出しできない
- 手数料がかかる
- 所得によって、「税金優遇」の金額は違う
と、メリット・デメリットはあります。また、1つの金融機関を選んで口座を作るので、「どこで作るか?」も重要になります(途中で金融機関を変えることも可能ですが、手数料と手間がかかります)。
具体的な手続き方法「3つのステップ」
具体的な手続き(3つのステップ)と、その際のポイントについてお伝えいたします。
- 金融機関を決める
- 積立金額を決める
- 運用商品を選ぶ
ステップ1:金融機関を決める
金融機関によって、「サポート体制」「商品の数」「手数料」が変わってきます。
「サポート体制」は、どこもそう変わらないと思います。基本的にはコールセンターが設けられており、運用状況はインターネットにて確認できるようになっています。
「商品の数」は金融機関によって差はありますが、20~30種類の商品を揃えているところが多いです。
「手数料」については、
- 国民年金基金連合会
- 運営管理機関(口座を開設した金融機関)
- 事務委託先金融機関
に支払います。
<1. 加入申込手数料(初回のみ)>
国民年金基金連合会に支払います。これは、どの金融機関も2,777円です。また、金融機関によっては「運営管理機関に支払う手数料」が発生することもあります。合計して、初回の手数料は3,000~4,000円程度です。
<2. 移換手数料>
転職、掛金の拠出をストップする場合などで、資産を移す時に支払います。4,000円程度です。
<3. 年間手数料(毎年5,000円程度)>
(積立期間中)
・事務取扱手数料
国民年金基金連合会が行う、掛金の収納等の事務にかかる手数料です。1,236円/年です。
・運営管理手数料
運営管理機関に支払う手数料です。年間1,000円程度です。
・資産管理手数料
事務委託先金融機関に支払う口座管理の手数料。年間2,000~4,000円程度です。
(受け取り時)
・一時金給付手数料・年金給付手数料
事務委託先金融機関が行う、個人ごとの積立金の給付事務にかかる手数料。年間432円です。
(投資信託を運用商品に選んだ場合)
信託報酬と信託財産留保額の資産額×数%を支払います。
<どんな商品がある?>
以下から商品を選びます。
- 元本保証型
- 投資信託(国内債券、外国債券、国内株式、外国株式、バランス型商品、REITなど)
選ぶ商品は1つだけでなく、割合を指定して種類を分けることもできます。商品の数よりも、色んな種類の商品ラインナップがある金融機関を選ぶと良いと思います。
Next: ステップ2:積立金額を決める/ステップ3:運用商品を決める
ステップ2:積立金額を決める
積立金額は、毎月5,000円~1,000円単位で決めることができます。
積立金の限度額は、
会社員:23,000円/月
公務員・主婦:12,000円/月
自営業:68,000円/月
です。
基本的に、60歳までは引き出しができません!無理のない範囲で積立をしましょう。
積立をストップすることはできます(積立をストップしている期間も運用はできます)。また、積立金の変更は、年に1回のみ可能となっています(編注:2018年1月1日の制度改正により、毎月定額の拠出に加え、月ごとに金額を指定した拠出が可能になりました。ボーナス時にまとめて拠出するなど、自分のライフプランに合わせた拠出が可能となります。)
ステップ3:運用商品を決める
最後に、運用する商品を決めます。ポイントは、以下の3点になります。
<1. 初心者は「バランス型」を選ぶ>
「元本保証型」は、手数料を考えるとマイナスになることがあるので注意しましょう
<2. 年に1度は運用状況のチェック>
インターネットの画面で確認できます。
<3. 運用商品は途中で変更することも可能>
「スイッチング」と言います。積極的に運用されたい方は「外国株式」「国内株式」などを取り入れてみると良いですね。
「手続が面倒くさ~い!」と言われる方が多いのですが、気軽に投資にチャレンジできるチャンスです。税金の優遇、手数料という面から考えてみて、特に会社員の方は、ぜひ取り入れてみてください。
『20代~40代のあなたのFPのマネー講座』(2017年2月9日, 4月4日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
20代~40代のあなたのFPのマネー講座
[無料 ほぼ月刊]
あなたはどんな<未来>をイメージしていますか??その思い描いた<未来を創る>為に必要なツールの1つとしてお金は重要な役割を果たしています。ちょっとしたマネーの知識や知恵が明るい<未来を創る>後押しをしてくれます。現場で経験を重ねたFPがお伝えします。