今週は材料は多いものの、飛び抜けて重要なものはありません。それでも、ちょっとした点を短期筋が取り上げて売買を行ない、市況が振れる恐れはあります。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)
※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2018年1月21日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。
馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2018/01/21より
過ぎし花~先週(1/15~1/19)の世界経済・市場を振り返って
<2万4,000円台定着が遠く感じる日経平均、その背景は海外勢が日経平均を「おもちゃ」に>
(まとめ)
先週の日経平均株価は、米国株価指数の上振れで2万4,000円を超えることがあっても、定着できませんでした。米ドル安・円高気味の推移や、高値警戒感(もしくは年初来の株価上昇スピードの速さに対する警戒感)から、国内投資家が売りを入れたため、と言われていますが、引き続き日経平均先物や同指数に影響の大きい値嵩株が、売りも買いも「おもちゃ」になって、不安定化していることが要因だと考えます。
(詳細)
先週の世界の株式は、米ニューヨークダウ工業株の1/17(水)の上振れ(前日比322.79ドル高、1.25%上昇)などを受けて、全般に堅調に推移しました。ただし、米国の株価指数も毎日上昇一本槍、ということでもなく、この水曜日の株価上昇も、前日1/16(火)の株価下落の反動という面もあります。
日本株については、この水曜日の米国株価の上昇を受けて、翌1/18(木)に、日経平均株価が一時2万4,000円を超えましたが、2万4,000円台で定着することができず反落して、この日は前日比でも下落して引けました。
このように、日経平均が一旦つけた高値水準を維持できなかった要因は、様々に報じられています。たとえば、米ドル円相場が、111円台に入っても110円台に押し戻されるという、米ドルの上値が重かったことが指摘されています。あるいは、高値警戒感(日経平均の水準が高すぎるのではないかとの警戒感)や、株価上昇のスピードに対する警戒感(水準はともかく、上がり方が速過ぎるとの警戒感)から、国内投資家が売りを出した、との観測報道もあります。
ただ、相場付きをみると、先週はNT倍率(日経平均÷TOPIX)が日々ジグザグに上下に振れ、日によって日経平均とTOPIXのザラ場における方向性がばらばら(どちらかが上げている時にどちらかが下げている)な局面も目立ちました。昨年10月のように、日経平均先物が買い上げられる一方、という展開ではなく、海外投機筋が買いも売りも先物に積極的に入れて、指数が(経済や企業収益の実態とは関係なく)短期の売り買いで振れているように見受けられます。
また現物株についても、ファーストリテイリング、ファナック、ソフトバンクといった、日経平均の計算値に大きく影響を与える値嵩株が、(やはり海外筋の売買だと報じられていますが)上下に振れており、そうした銘柄群の企業実態に基づいた売買では全くなく、日経平均を動かそうという意図が感じられます。
今後も、引き続き海外短期筋に振り回される(国内投資家はほぼ様子見になっている)展開が続くとすると、とりわけ大きな材料がないのに、日経平均が2万4,000円に迫ったり超えたりし、逆にとりわけ大きな材料がないのに大きく反落するといった、目が回るような相場付きになると懸念されます。
なお、前で米ドル安・円高気味の推移になったと述べ、実際1/17(水)には110.19円まで米ドル安が進みましたが、こちらも、とりわけ大きな円高材料があったわけではなく、先物市場の円売りポジションの解消など、実態とは関係のない動きに振り回されているように思われます(シカゴの通貨先物のポジションは、毎週火曜日時点のものが公表されますが、1/16(火)は、1/9(火)に比べ、円の売り越しが6186枚(1枚は1250万円)減少し、円売り残の買い戻しが進んだと考えられます)。
株式、為替以外の市場では、国際商品市況において、一時は原油価格が上昇し、WTI先物(期近物)は1バレル64ドルを超える場面もありました。週末にかけては若干軟化し、63.47ドルで引けていますが、まだ高水準です。
また、そうしたエネルギー価格の上昇からか、米10年国債利回りが2.66%に達する局面がありました(週末は2.64%)。これは2014年7月以来の水準です。こうした米長期金利の動向は注目すべきところですが、それはこの後の「盛りの花」で述べます。
ここで、先週の主要な株価指数の騰落率ランキング(現地通貨ベース)を見てみましょう。
騰落率ベスト10は、
- パキスタン
- 香港
- インド
- アルゼンチン
- 台湾
- コロンビア
- ブラジル
- モロッコ
- ポーランド
- チリ
と、新興国が優勢でした。
一方、騰落率ワースト10は、
- 豪州
- 英国
- スリランカ
- ギリシャ
- ノルウェー
- スイス
- イスラエル
- ルクセンブルグ
- ベルギー
- スウェーデン
と、欧州諸国が目立ちます。ただし全般には下落率は小さく、ワースト10位のスウェーデンは実は週間で株価が上昇しています。このため、先週株価が下落した国は9つだけでした。
外貨相場(対円)の騰落率ベスト10は、
- メキシコペソ
- 南アランド
- 豪ドル
- ノルウェークローネ
- 英ポンド
- チェココルナ
- 中国人民元
- スイスフラン
- マレーシアリンギット
- スウェーデンクローナ
と、資源国が多いです。
一方、外貨相場(対円)の騰落率ワースト10は、
- トルコリラ
- アルゼンチンペソ
- チリペソ
- フィリピンペソ
- イスラエルシェケル
- チュニジアディナール
- ロシアルーブル
- インドルピー
- 韓国ウォン
- ベトナムドン
でした。米ドルはワースト11位となっており、米ドルは対円だけではなく、他の主要通貨に対しても下落気味で推移したと言えます。
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来たる花~今週(1/22~1/26)の世界経済・市場の動きについて
<材料面では無風だと考えるが、投機筋の売りの「口実」にならないかは要注意>
(まとめ)
今週は、材料は多いものの、それで内外の実体経済などに対する判断が大きく左右される、というものは見当たりません。ただ、先週、短期筋があちこちの市場でポジションをどたばた動かしたことを踏まえると、大したことがない材料を大したことにして、短期筋が売り買いの「口実」に使い、内外の市況が上下に振れる展開になることが、懸念されます。
(詳細)
今週は、材料はそれなりに多いです。ただ、本来であれば、それが内外の実体経済などを判断するうえで、とびぬけて重要であるとか、市場動向に多大な影響を与えそうだ、というものはありません。それでも、ちょっとした点を短期筋が取り上げて売買を行ない、市況が振れる恐れはあります。
金融政策を決定する中央銀行の会合としては、日本では1/22(月)~1/23(火)に日銀金融政策決定会合が開かれます。金融政策について、全く何の変更もないでしょうし、会合後の記者会見では、黒田総裁は慎重な言い回しに努め、1/9(火)の債券買いオペにおける買い入れの減額で為替市場が振れた時のような、金融緩和縮小思惑が市場に勝手に広がるようなことは、極力避けようとするでしょう。
ただ、ここ数回の会合では、株式ETF買い入れ策の副作用を指摘する声があったなど、現在の金融政策に対する批判的な声は、委員からも上がっています。その点が強く表れると、円高思惑などが広がることはありえます。
ECB(欧州中央銀行)は、1/25(木)に理事会を開きます。ここでも金融政策の変更はないでしょうし、9月まで続ける予定の量的緩和について、10月以降の方針を示すには、まだ早過ぎます。
ただ、これまで理事などから、10月以降は債券の買い入れは必要ないのではないか、といった、出口戦略に前向きな声が挙がっているだけに、理事会後の記者会見では、ドラギ総裁に対し、10月以降の方針を探ろうとの質問が多いと見込まれます。そこで総裁が前向きと解釈される発言を行なった場合、ユーロが買われることがありうるでしょう。
最近では、ユーロ圏の緩和縮小観測でユーロ買い・米ドル売りが行なわれると、対円でも米ドルが売られる傾向が強くなっています。したがって、米ドル安・円高が進行しないか、気になるところです。
経済統計では、日本ではコンビニエンス売上高(1/22、月)や百貨店売上高(1/23、火)などの小売業界統計や、1/24(水)の貿易統計などが発表されます。
米国では、1/24(水)に中古住宅販売、1/25(木)に新築住宅販売といった、住宅統計が多く公表されます(以上は、日米とも、12月分の統計)。また米国においては、1/26(金)に10~12月期のGDP統計が明らかになります。
企業決算については、米国では10~12月期の決算発表社数がかなり増えてきます。昨年の収益実績だけではなく、2018年における、連邦法人税率引き下げの影響度合いを示す会社が多いと考えられるため、注目度が高そうです。日本でも、10~12月期の決算発表の本格化が始まります。
米国では、1/19(金)に期限が来た暫定予算について、下院では1/18(木)に期限切れ後の1か月分の予算が可決されました。しかし上院では、現時点で合意がなされていません。このため、予算は失効し、今のところ政府機関(例外的に防衛や治安関連を除く)は、お金を使うことができず、閉鎖となっています。
ただし、もともと1/20(土)~1/21(日)は政府機関はほとんど休みなので(確認していませんが、ワシントンDCの観光施設など、一部政府が管理しているところは、閉まっているかもしれません)、大きな影響は出ていません。このため、この土日も議会上院が協議して、追加の暫定予算が可決されれば、月曜日からの政府機関閉鎖は避けられる、という見解もあります。ただ、そうならず、閉鎖が長引く恐れはあります。
とは言っても、たとえばオバマ政権時も閉鎖はありました(2013年10月)。その時、それで米国経済がどうかなったわけではありません。そのため、気にしなくてよいと考えるものの、もともと米国株価を利食い売ろうと考えていた投機筋が、政府機関の閉鎖をネタにして売りを出す展開などはありうるため、要注意だとは言えます。
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『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2018年1月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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