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【1月米雇用統計】平均時給の伸びに強気材料なし、今夜は戻り売り・ショート狙い=ゆきママ

年明け早々からドル円相場は荒れ気味の展開となっています。読者の方からも、今後の展望について多くの質問をいただいていますので、今日は雇用統計だけでなく、今年の見通しも含めて解説して行きます。ぜひぜひお読みいただければと思います。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

今夜は「戻り売り・ショート狙い」想定レンジは108~110.5円

今年の裏テーマは「日銀テーパーによる円高」

今年の表向きのテーマは、ECB(欧州中央銀)が量的緩和を終了させて金融政策の正常化へ…ということでユーロ高がありました。しかしながら、年を明けて程なくすると、突如として日銀のテーパリング(量的緩和)が話題となり、大きく円高に傾きました

これは日銀オペ(公開市場操作)において約1年ぶりとなる超長期国債の買い入れの減額があったことで、政策を正常化に向けようとしているのではないかといった警戒感が海外勢を中心に急速に広がったことが影響しています。

日銀は『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』打ち出してイールドカーブ ・コントロールを目標としていますから、金利にコミットした政策を行う以上、多少の増減というのはあって当たり前なのですが、海外勢は非常に神経質に受け止めているようです。

1月9日の日銀オペによる買い入れ減額後、日銀の黒田総裁を中心に火消しに走りましたが、目立った効果はなく、無限と思われたしつこい円売りもどこかに吹っ飛んでしまいました。

したがって、今後も引き続き裏テーマとして日銀のステルス・テーパリングによる円高というのが燻り続ける可能性が高いと言えそうで、まずはそのつもりでトレード戦略を考えていく必要がありそうです。

ドル円の展望を考えるならユーロドルを見よ

日本人のほとんどがドル円を中心にトレードしていることもあって、読者の方からいただくのはドル円に関する質問がとても多いのです。しかしながら、ドル円ばかりを見ているだけでは、ドル円の展望を占うのは困難と言えるでしょう。

やはり、為替相場の中心は何と言ってもユーロドルです。ここ数年は日銀の異次元緩和や、欧州の政情不安からドル円が活発にトレードされてきましたが、昨年からは再びユーロドルがシェアを伸ばしており、存在感が増しています。つまり、為替相場を考える際には、1にも2にもユーロドルということになります。

ユーロドルの日足チャート

そして、今のユーロドル相場を見れば一眼でわかるように、非常にユーロが強い状況が続いています。そして、お分かりのように、このユーロ高が続く限り、ドルの上値は抑えられることになります。それは、ドル円でも例外ではありませんから、ユーロ高が続く限りはドル円の上値も限定的と見ておきましょう。

Next: 重視されるのは平均時給。先行指標や事前予想値は?



平均時給への期待が空振りに終わる可能性も

前置きが長々なりましたが、いよいよ本題です。今回の雇用統計においても、重視されるのはインフレ動向の鍵を握る平均時給ということになります。

この平均時給については、今年1月から18州で最低賃金が引き上げられたことなどを背景に、前月比+0.3%・前年同月比+2.6%という、まずまず堅調な数字が見込まれています。

ただ、気をつけないければならない点として、昨年も1月から今年を上回る20州以上で平均時給が引き上げられたにも関わらず、平均時給が予想を下回ったことが挙げられます。その後、1年間を通して非常に緩慢な伸びが続いたことも忘れてはなりません。

ちなみに、賃金がなかなか伸びていかない理由としては、構造上の変化やロボット化が挙げられています。構造上の変化としては、低賃金労働を中心に労働そのもののシェアが拡大し、失業率の押し下げに寄与しているものの、同時に賃金が上がらない要因になっているといった指摘がありました。

また、離職率が上がらないことから、より高い賃金の仕事を見つけられずにいるのではという指摘もあります。求人件数は過去最大であることも合わせて考えると、それなりのスキルを持った労働者は仕事が選び放題な反面、低スキルの労働者は低賃金労働からなかなか抜け出せないという状況がありそうです。

それから、最低賃金が2~3年で急速に引き上げられたため、人件費削減のためのロボット化、オートメーション化を推し進めているという話はよく聞きます。あのウォルマートも人員削減を行なったと報じられたばかりですからね。

というわけで、今回の雇用統計はもちろんのこと、今後の賃金動向についても、あまり楽観的な見方を持ちすぎず、冷静に見極めていただければと思います。

ISM製造業の下振れが賃金に影響する可能性も

先行指標や事前予想値については、以下のようになっています。

先行指標の結果(数値はいずれも速報値)

まず、良い面から見ていくと、新規失業保険申請件数が一段と減少したことでしょう。30万件未満だと労働市場が力強いとされており、現在は152週連続で30万件を下回っています。これは1970年以来の記録ということで、労働市場の引き締まりは明らかと言えるでしょう。

一方で、気がかりなのはISMの発表した製造業の景況感指数で、雇用に関する部分が落ち込んで2017年5月以来の低水準となったことでしょう。50が境目の指数だけに、それほど問題のある数字ではありませんが、一般に製造業は賃金が高めですから、この下振れが賃金の伸びに影響してくる可能性に警戒したいところではあります。

今回、1月分の事前予想値は非農業部門雇用者数が+18.0万人など、しっかりした数字が期待されているものの、注目されている平均時給については、それほど強気になれないのかなといったところです。

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今夜は戻り売り!想定レートは1ドル=108.00~110.50円

結論のトレード戦略としては、ズバリ戻り売り・ショート狙いでしょう。賃金に関しては、最低賃金が18州で引き上げられたことを含め、伝えられている情報ほど強気になれる材料はありません。

繰り返しになりますが、ユーロが大きく崩れない限りはドルの上値は抑えられることになり、事前予想値を下回る数字となれば、結局はドル売りといった流れになるでしょう。

もちろん、平均時給が予想を大きく上回るような、前月比+0.5%以上といった数字が出てくれば一旦は様子を見たいところですが、これ未満であれば上がったところを戻り売りで試したいところでしょう。

ドル円の日足チャート

テクニカル的には、110.00円の大台ラインや、21日移動平均線のある110.526円辺りがポイントとなるでしょう。短期的には21日線ブレイクが損切り目処となります。下値に関しては、108円台前半がかなり堅いですから、そこまで下がったら一旦利食いをしておきましょう。

また、最近は全戻し傾向が強く、予想からの大きな乖離がない場合は発表前の水準に戻ってしまうことが多いため、その場合は30~40銭程度を目標に利食いしていただければと思います。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。今晩のお祭りも頑張りましょう!

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年2月2日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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