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ドトールの株主総会は終始なごやか、会社愛が溢れるファンクラブ的ムード

株主総会で見聞きしたことや、上場企業、株式会社などについて、公認会計士の平林亮子さんがつれづれなるままに綴る人気メルマガ『平林亮子の晴れ時々株主総会』。今回は投資先を決める時のポイントとともにドトールコーヒーでお馴染み、「ドトール・日レスホールディングス」の株主総会の様子をレポートしてくれています。

投資先を決める時のポイントとは

私は投資先企業を選ぶとき、「とりあえずこの先5年応援できそうかどうか」を考えます。

具体的には、まず、自分の好きな商品やサービスを提供している企業に注目。ビックカメラ、マツモトキヨシ、ファンケル、ブラザーなど、そもそも自分が良く利用するお店や商品を展開している企業は、わかりやすいし応援しやすいものです。
BtoBビジネス(企業に対して部品を売るメーカーなど)の場合には、世界的にシェアの高い企業などを探したりしています。
あとは、投資仲間などから得た情報で投資することもあります。あ、インサイダー情報ではないですよ。どんな企業の株を持っているかを聞いて、あとは自分で調べて選びます。

また、数値的には、

(1)割安であるかどうか
(2)収益性が高いかどうか
(3)安全性が高いかどうか

という一般的なことを調べます。割安であるかどうかは、PBRとPERから。
PBRは、企業の純資産と株価を比較した指標。
PERは、企業の利益と株価を比較した指標。
収益性については、ROA(総資産営業利益率もしくは総資産経常利益率を利用)を重視。ROAとは、企業の総資産に対する利益の割合で企業が持っている資産をどれだけ上手にビジネスに生かしているか、を示すものです。
安全性は自己資本比率で判断。自己資本比率が高ければ高いほど、借金が少なく、倒産の可能性が低い企業ということになります。

株式投資は自己責任。たとえ、プロからアドバイスをもらったとしても、すべてを鵜呑みにして任せるというのはあまりお勧めしません。
スポーツだって、プロの解説者、プロの選手でなくても、何度も試合を見て、ルールを勉強すれば、理解は深まるものですよね。自分なりの楽しみ方や、プロ顔負けの評論だってできるようになることもあります。株だって同じです。
株や企業について調べてみれば、それなりに理解が深まるものです。日経平均株価の上昇とともに、株や投資に関するいろいろな情報が飛び交いやすい時期。
判断はくれぐれも慎重に。

Next: ドトールの株主総会が荒れない理由



株主総会が荒れない理由

株価上昇による利益を追求しているわけではない私。
でも、このところの株価上昇に伴い、「売って利益を確定したい!」という悪魔のささやきが聞こえてくるときもあります。
実は今回取り上げる株式会社ドトール・日レスホールディングス(以下「ドトール」)の株も、利益確定をしたい銘柄の1つです(笑)

ドトールの2015年6月12日の終値は2158円。昨年の同時期は約1800円。
この1年の間に、1600円を切った時期もあれば、2400円を超えた時もありました。
つまり、約1.2倍~1.5倍になったということですね。私の購入価格は内緒ですが(笑)、株主総会でも株価については一切触れられることがなく、株価の伸びが良好であると多くの人が判断しているのではないかと感じました。

このメルマガのVol7でもドトールについても触れていますが、この株を持ったのはドトールが好きだったから、というのが一番の理由です。加えて、ドトールの株価はとても割安でした。

現在でも、決して割高ではありません。2015年2月期の1株当たり純資産は1916円、1株当たりの利益は108円。
それに対して、現在の株価は2158円ですから、
PBR=2158円÷1916円=1.12倍
PER=2158円÷108円=19.98倍
です。数値が低いほど割安であるということです。ただし低ければいいというものでもありませんが。

また、収益性も悪くはありません。
2015年2月期の総資産経常利益率は8.9%。売上高営業利益率も8.0%。スタバやサンマルクには及びませんが、店舗を構える飲食店としては悪くない水準だと思います。

そして、もともとは、鳥羽氏の立ち上げた純粋な日本企業。今でも、ドトールが大好きです。

……と言いながら、この原稿はタリーズで書いていますが……。

Next: 会場の様子は?詳細をレポート



会場の様子は?詳細をレポート

そんなドトールの株主総会は、昨年同様、株主総会と言う名のファンクラブとも表現できるような雰囲気に包まれていました。

10時の総会開始と同時に「議長解任」などと、なにやら騒いだ株主が4名くらいの係員に連れられて退場した後は、終始なごやか。
総勢54000名ほどの株主のうち、2000名を超える株主が参加しているにも関わらず、荒れる場面はありません。会場はメイン会場を含め、第4会場まで用意されていたようなので、実際にどれくらいの株主が来ていたかは定かではありませんが……。

30分ほど、パワーポイント画面を使って社長が経営の報告等をすると、質疑応答の時間になりました。飛び出す質問は、ドトールファンならではのものばかり。

まず、事前に書面で受けていた質問について「店員がドリンクのサイズを間違えた。それについてお客様から指摘されると、カップからカップに移し替えることで対応した。これはしかるべき対応なのか、という質問をいただきました」と社長から説明があり、続けて「この場合、再度、きちんとコーヒーを淹れ直すことになっている。申し訳ありませんでした」と回答が。
客商売だけあって、こうした質問への対応にも誠実さを感じます。

さて、ここからは、会場にいた株主との質疑応答へ。

株主「先ほど話にあった、マレーシアへの進出は?」
社長「60%出資で現地法人を立ち上げた。年内開店目標。ハラル認証は検討中。なお、マレーシアは60%はマレー人であるが、経済の70%は中国系が握っています」

株主「店舗でのフリーWifiの導入は?」
社長「現在611店舗で導入済み。さらに進めています」

株主「コーヒー豆の価格の高騰は大丈夫か?」
社長「豆の先物を1年先まで手当済み。値上げはなるべくしないつもりです」

株主「ラテがメニューに載っている写真と違う」
社長「本日中に確認します」

こんなやりとりが続きます。
ラテの件は面白い質問だと思いました。飲食店で良くありますよね。
メニューの写真より野菜がすくないとか、お肉が小さいとか。
ラテは、素敵なラテアートが描かれた写真が利用されることも多いですから、ギャップを感じることがあるかもしれません。

そんな質疑の中で、私が一番興味を持ったのは、星乃珈琲店のこと。
現在、少し郊外のロードサイドを中心に展開中の星乃珈琲店。たまにしか行きませんが、落ち着いた店内で過ごしやすい。
私は、特にモーニングで利用することが多いのですが、どうやら、この珈琲店のファンが増えているようなのです。

株主「星乃珈琲のコーヒーはドトールよりおいしい。ケーキも。ドトールでこの味を出せないのか」
社長「ドトールはスッキリしたブレンド、星乃珈琲は深入り。お客様のお好みで使い分けていただきたいのですが、どちらもおいしいと思ってもらえるように努力します」とのことでした。

ドトールグループが仕掛ける新業態。
ファンが増えているとしたら、株主としてもとてもうれしいこと。

なお、丸ビルにも新しいカフェを開いたとのことでしたので、今度行ってみようと思います。

先月のメルマガで触れた、ガンホーとは違う、なごやかな株主総会。
荒れない理由の1つは株価が伸びていることだと思いますが、もう1つは、ドトールを実際に利用しているお客が個人株主となっているためだと感じます。

「私は鳥羽社長のころから株主で株主総会にも参加している。実績も申し分ない!役員はちゃんと店舗を見て回っていますか?人材育成はちゃんとしていますか?」と言う発言をする株主もいるくらいです。

余談ですが、実は、今回の株主総会で、星野社長が議長として壇上に立った瞬間、「存在感が増したなあ!」と感じました。
スッと背筋を伸ばしまっすぐに株主の方を向いて立つ姿と、自然な笑顔に強いパワーを感じました。きちんと経営に取り組んでいるということの現れだと思いました。
『平林亮子の晴れ時々株主総会』vol.22(2015年6月15日号)より一部抜粋

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ベンチャー企業のコンサルティングを行うかたわら、講演活動やマスコミなどでも活躍。毎月どこかの上場企業の株主総会に個人株主として参加中。

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