昨年の仮想通貨バブルで「億り人」になった人は、今年しっかりと納税する必要があります。税金が払えずに破産する具体例を紹介しながら、3つの注意点を解説します。(『週刊「年金ウォッチ」-自分年金作りのためのメルマガ』持田太市)
プロフィール:持田太市 (もちだたいち)
SBIハイネットワース株式会社 代表取締役。2007年にSBIホールディングス入社。住信SBIネット銀行開業を経験後、ウェブマーケティング部署を経て、海外でのオンライン金融事業の進出プロジェクトに従事。2013年よりロシアのモスクワに駐在し、インターネット銀行サービスを導入。2015年に帰国後、ウェブを活用した国際資産運用の情報プラットフォームプロジェクトを立ち上げ、現在オンライン金融サロン「ヘッジオンライン」を運営中。
自己破産しても税金は帳消しにならない。正確でミスのない納税を
仮想通貨は世の中に浸透していく
仮想通貨市場は、コインチェック・ショックや、テザー・ショックという大きなネガティブ事象があって、昨年12月の急上昇から一気に急降下しました。これは各報道の通りです。ビットコインは一時65万円ほどまで下落しましたが、ここで切り返して現在は110万円まで戻っています(※編注:原稿執筆時点2018年2月20日)。
わたしは、仮想通貨経済圏が今後世の中で浸透していくと見ていますので、今回の暴落は特に心配していません。むしろ、これを機に各国の規制がなされ、正常なマーケットが作られていく流れができたとも思っています。
例えばICO(イニシャル・コイン・オファリング)というコインによる資金調達案件の話も、ここのところパタッと止まってしまった印象があります。勧誘に関する規制対応に時間を要しているのでしょう。
コインチェック・ショックについても、多くの報道がなされ、さまざまな憶測や見解がネットであります。これまでも当メールマガジンで何度もお伝えしているのですが、資産形成という観点でいえば、仮想通貨もごく一部を保有しておくのはベターだと今でも思っていますし、そしてその対象は「ビットコインキャッシュ」「イーサリアム」「リップル」という大手コインで分散保有をおすすめします。
ビットコインについては過去にもコメントしておりますが、現在のハブコインとしてさすがに無くなりはしないでしょうが、値上がり期待が持てなくなったというのが正直な感想です。より使い勝手の良い、ビットコインキャッシュにいずれとって代わられる可能性も考慮して、あえてビットコインキャッシュを書いています。
注意すべき「仮想通貨の税金」
そして本日のメールマガジンで最も指摘しておきたかったのは、税金のお話です。税金の話かぁ、難しそうだな、とお思いになったかもしれませんが、ぜひここは踏ん張って読み進めてみてください(笑)。
確定申告の時期になり、実際にわたしも仮想通貨の税金計算をやってみましたので、その経験も踏まえて情報をシェアしたいと思います(※筆者注:わたしは税理士ではなく、アドバイスできる立場でもありませんし、提供情報が誤っている可能性もあります。あくまでいち参考情報としてみてください)。
サラリーマンの方であれば、住宅ローン申し込み(住宅ローン控除を得る)や、ふるさと納税(寄付金控除を得る)などをしていない限りは、確定申告をすることはほぼ無いと思います。
それが今回は、仮想通貨で得た利益は「雑所得」として申告する必要がありますので、20万円以上の利益が出ている場合は、注意して確認していかなければなりません。
Next: うっかりすると無申告に! 注意すべき3つのポイント
注意すべき3つのポイント
仮想通貨をやっている方はご存じだと思いますが、昨年12月1日に国税庁が「仮想通貨に関する所得の計算方法」について情報をまとめています。詳しくは上記のリンクをみれば良いですし、これを解説しているWebサイトはたくさんあると思いますので、ここをきちっと押さえたいという方は、検索してチェックをしてみてください。
実体験から言えるところで、仮想通貨をやっている人が注意すべきは、主に以下の3点だとわたしは思います。
- 仮想通貨同士の両替をするとき(主にビットコインと他コインの売買)
- ICO案件に投資をするとき(ビットコインやイーサリアムから、ICO案件に投資をする)
- ICO案件が上場して、それをビットコインや円に両替したとき
端的に言えば、その通貨を何かに替えていなければ利益が実現しません。たとえば昨年にリップルを購入して、爆上げを経験したとしても、そのまま保有し続けて何もしていないという人は関係がありません。
<1. 仮想通貨同士の両替をしたケース>
これはわかりやすいと思います。円でビットコインを買って、そのビットコインから他のコインに替えた時、そのビットコインに利益が出ていたならば、その利益は計算対象となります。
仮想通貨間の取引が対象になる場合、これがやっかいなのは、海外の仮想通貨取引所を活用しているケースです(海外取引所でも、税金計算から逃れられませんのでご注意!)。
海外取引所は、いわゆるマイナーコインがたくさんありますが、多くはビットコインから買い付けにいきます。ですので、ビットコインとマイナーコインの交換、ここの取引を多くしている場合は、計算が非常に面倒になります。
<2. ICO案件に投資をしたケース>
新規のトークンセール、ICO案件というものが昨年はたくさんありました。ほとんどはビットコインまたはイーサリアムでの投資(入金)となります。
ICO案件に投資をするということは、その案件の「トークン」を買うことと同じとみなせますので、買った時にビットコインやイーサリアムは利益確定をしたという考えになろうかと思います。
もし、過去に購入していたビットコインに大きな利益が出ていた場合は、ICO投資時に利益確定がされますので、ここもしっかり計算に入れる必要があります。
<3. ICO案件が上場して、それをビットコインや円に両替したケース>
ここが無申告の人が多くなりそうな予感がします。
「億り人」という言葉が一時流行りましたが、多くのケースではICOで投資したコインが新規上場した時に一気に資産が極大化して、それによって億の資産を持ったと思います。たとえば100万円投資をしていて、それが300倍になれば3億円相当です。その一部でも、ビットコイン(そして、その後に円)に両替をすれば、その時点で利益確定になります。
所得税等の最高税率は55%ですので、例えば3億円相当のうち、1億円分を利益確定してしまえば、単純計算で税金は5,500万円になります。
この計算からおわかりの通り、3億円相当の資産は、実は税金(将来の支払い債務のようなもの)を除くと、1.35億円相当しか手取りではないのです。
税務当局からすれば、仮想通貨で儲かった人たちの55%が徴収できるということになりますから、株やFXで儲けてもらう(税率20%)よりもずっと、仮想通貨で儲けてもらった方がお得なのです。
Next: きちんと納税しないと痛い目を見る。税金破産に陥るケースとは?
税金破産に陥るケース
ここからは仮定の話です(シンプルな計算をしてみます)。
100万円を投資をしたコインが300倍になり、3億円相当の資産となりました。1億円を2017年12月末までに両替して何かにぜんぶ使ったとしても、利益確定された1億円に対して税金は発生します。つまり、今年の3月15日までに5,500万円を納税しなければなりません。
今年、その納税義務に気づいたとします。納税したくても、1億円の現金はすべて使って手元にありません。なのでやむなく、残りの2億円相当分のコインから、納税資金を捻出しようとします。
しかし、この1月・2月に仮想通貨市場は大幅に下落してしまいました。おそらく、持っていたコインは半値からよくて70%くらいになっているかと思います。ここでは仮に、60%くらいになったとします(暴落によって40%減となったとします)。その場合、コインの価値は残り2億円相当ではなく、1.2億円相当(60%)になっていることになります。
そこから5,500万円を捻出しようと、そのコインをビットコイン、およびその後に円に両替します。1.2億円相当分のコインが、残りは6500万円相当に減ってしまいました。しかしこれで今年は納税資金を確保できました、めでたしめでたし…では実はないんですね。
今回納税した資金分5,500万円相当に対して、利益確定したことになりますので、税金がかかってしまうのです。
計算を簡単にするため税率が55%であるとすれば、翌年の納税予定額は3,025万円です。納税資金を捻出するたびに利益確定が発生する…。もうおわかりの通り、これはある意味でコインが無くなるまで終わらない話です。
きちんと納税しないと必ず痛い目を見る
どうしておけばよかったのかと言うと、当初利益確定した時に、55%は納税資金として残しておかなければならず、1億円の利益をそのまま全部使ってしまったことがダメな行動であったということです。
ちまたでは、節税スキームなどが紹介されていますが、あまり奇をてらったことはせずに、きちんと納税しないと必ず痛い目を見ると思います。税務当局も、取れるところから取るのは当たり前でしょう。
Next: 税金は自己破産しても帳消しにできない…
税金は自己破産しても帳消しにできない…
無申告で追徴課税がされてしまえば、延滞税もかかってきますので、さらに重たい納税負担になり、さらに悪質な場合は捕まる可能性だってあるわけです。
「億り人」が牢屋に「送り人」になる可能性だって否定できません。
そして極めつけは、納税義務は(免責はないので)消えることがありません。
ゆえに、自己破産とは無関係になります。高利貸しから借りたお金は自己破産で無かったことにできますが、税金はできません。
まるで小説のような話ですが、ICO投資で成功し、豪遊して、マーケットが暴落したことも含めて納税できず、それで一生困る、なんてことも現実的に起こり得る話になりました。
『週刊「年金ウォッチ」-自分年金作りのためのメルマガ』(2018年2月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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これまで年金は国や企業が用意してくれました。しかし昨今の日本経済は、それが困難になっているのも事実です。だとしたら、自分で作っていくしかありません。しかし、自分で作りなさいと言われても、どうしていいかわからないし、むずしいことや面倒なことは、したくありません。それが人として、普通です。このメルマガを読めば、自分の年金作りに対する考え方やアクションが理解でき、新たな一歩が踏み出せる。さらに、他の情報源はいいから、このメルマガだけ読んでいれば年金作りはOK、と言っていただけるようにするつもりです。どうぞよろしくお願い申し上げます。