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日本が外交でファインプレー。米国抜き「新TPP」に11カ国が署名へ

米国を除くTPP参加11カ国は3月8日、南米チリで署名式を開いて新協定「TPP11」に署名した。この早期署名の実現は、日本の外交政策が狙い通りに進んだ結果である。(『元証券マンが「あれっ」と思ったこと』)

米国の保護主義に対抗。2019年早期の発効を目指してTPP始動へ

米国抜きのTPP、11カ国が署名へ

日経電子版(3月9日付け)に『TPP署名式、チリに譲った日本の狙い「名捨てて実」』との記事が掲載されていた。

米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国は8日午後(日本時間9日未明)、チリで署名式を開く。トランプ米大統領がTPP離脱を宣言したあと、日本が交渉を引っ張って復活にこぎ着けた。最大の晴れ舞台となる署名式をあえてチリに譲ったのは、11カ国の早期署名に向けて「名を捨てて実を取る」戦略があった。

出典:TPP署名式、チリに譲った日本の狙い「名捨てて実」 – 日経電子版(2018年3月8日)

今回はこの記事の内容を、「日本の狙い」「障害になっていたこと」「チリの事情」「メキシコへの働き掛け」の4点に分けて整理してみたい。

署名式をチリに譲った「日本の狙い」

日本の狙いは、大きく2つあった。

1つ目は「3月上旬までに署名したい」という点だ。これは、TPP11の承認案を通常国会で提出するギリギリのタイミングである。

通常国会で可決・成立すれば、日本の動きを見守る各国の承認手続きが進み、2019年までの発効にメドが立つ。

2つ目は、「チリで署名式を開催する代わりに、カナダに対して早期署名を働きかける説得役になって欲しい」というもの。

茂木経済財政・再生相は1月上旬、チリのムニョス外相に「署名式はチリで開く。その代わり早期署名をカナダに働きかけてほしい」と電話で伝え、ムニョス氏は同意。カナダ政府高官に電話で署名を呼びかけたという。

障害になっていた「カナダの遅延戦略」

カナダは昨年来、署名を先延ばしにしようと各国に働きかけていた。

同国にとってTPPはハーパー前政権の功績であり、現在のトルドー政権は慎重な姿勢を見せていた。

Next: チリの事情を汲み取った日本。どうやって早期署名にこぎつけたのか?



「現政権での功績を残したい」チリの事情は

チリでは、現バチェレ政権の任期が3月11日に迫っていた。日本には、チリ開催なら「先送り論を封じ込められる」(政府関係者)との算段があったという。

現政権での功績を残したいチリのムニョス外相は2月23日、「署名式には世界中のメディアが来る。日本に感謝する」と、茂木大臣室を訪れて満面の笑みで礼を伝えたという。茂木氏は「チリのコミットに感謝する」と応じたとのことだ。

そして、ムニョス氏は、米大陸では一目置かれるベテラン外交官(国連安保理議長の経験も)である。チリとカナダはリベラル政権で、ムニョス氏はフリーランド・カナダ外相とも気脈を通じる

日本には、ムニョス氏にカナダの説得役を任せることで、カナダが早期に署名する可能性が高まるという考えがあった。

11カ国署名の決定打「メキシコへの働き掛け」

茂木氏は1月上旬にメキシコ・グアハルド経済相に対し「このままではカナダが遅延戦略をとるだけだ。TPPでは日本と共同歩調を取ってほしい」と求めたという。

メキシコとカナダは、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で対米共闘する同志である。

日本は、この関係を「分断」する作戦に出たということ。TPP交渉を進めた日本に恩義があるグアハルド氏は、日本との連携を約束した。

そして、1月22日から都内で最後の首席交渉官会合が開かれた。署名を渋るカナダに対し、日本の交渉官は「明日は10カ国で署名日を合意したい」とカナダ外しを提案。メキシコも即座に「10カ国もやむを得ない」と応じたという。

結果、孤立したカナダはようやく署名する意思を示した。

日本の外交が奏功した事例

本件は、TPPの署名に関して、外交を通じて日本の狙い通りになった事例である。

国会における野党の役割とは何か。私は、森友問題よりも重要な、米国の保護主義(鉄鋼・アルミの輸入制限等)や北朝鮮の拉致問題への対応に関する議論の活発化を望む。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと』(2018年3月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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