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日本を襲う政権危機と米朝問題。どちらかが火を吹けば日経平均は1万8,000円へ=山崎和邦

昨年9月の19,200円台から安倍政権「選挙圧勝」を見て海外勢が買いまくり、今年1月には5,000円高を演じた。安倍内閣の支持率が急減すれば、それは逆方向へ向かう。(山崎和邦)

※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2018年3月26日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。

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内にも外にもある波乱要因。急落を見据えて買いの好機を狙いたい

激減した安倍内閣の支持率

先週週初の発表によれば、支持率は朝日新聞31%、毎日新聞33%、共同通信38%となった。

昨年は都議選で30%台近くまで落ちた危機ラインを、「小池派の自滅的衰弱」「内閣改造」「外交」などによって回復した。今度の森友問題から発生する問題は、安倍首相を支え続けてきた麻生副総理が率いる財務省が震源地であるから、昨年の支持率激減のときよりも何倍も事態は深刻である。これを回復する手段は今のところ思い当たらない。

小泉内閣時代には、大衆に人気のあった田中真紀子外務大臣をクビにしたことによって支持率が激減した。この時に北朝鮮へ飛んで行って拉致問題が突発的に出てきた。そこで国内の凝集力が高まり支持率が高まったということがあった。

昨年の支持率低下は都議選の惨敗が契機だったから、いわば、表の試合で敗れただけだった。しかし、今回は裏面のオドロオドロしい話から沸き上がった。しかも安倍首相の盟友で内閣を支えてきた麻生副総理が率いる財務省の中心部分から来た。

佐川氏は今は罪人扱いだが、本来は筆者が記憶にあるだけでも2人の総理大臣を輩出した花形エリートコースだったはずだ。うさん臭かった理財局長をそのポストに持ってくるという人事も軽率だった。中学生程度の漢字は読めなかったが、市場やカネのセンスには長けていたはずの麻生副総理としては、驕りが出たのか、気を抜いたのか、似つかわしくない失態続きだ。

また何か出る恐れはある。ツキというものは、一旦離れると離れ続けるものだ。

安倍首相には「運」があるが…

安倍首相は選挙中から運がついていた。何度も何度も「運としか言いようのないツキ」が回ってきたし、突発的な神風的なツキも吹いた。今度もそれがあるであろうか。

極論すれば、それがあるとすれば、米・朝・中の火器を用いた戦争であろう。そうなると政権交代の余裕がないから、安倍三選で任期9年の長期政権が成立する可能性があるという皮肉な長期政権が実現する。が、これの確率は極めて少ない。

党内の動きは、「1:石原派+谷垣派」「2:額賀派+岸田派」「3:岸田派+麻生派」のグループが、7日から12日の間に会合を持って会食しているという。

一方、「安倍首相+橋下徹+松井一郎大阪府知事」という動きもあった。昨年12月に大阪府連会長の中山泰秀(安倍首相に近かった)が岸田派の議員に交替したことが、安倍首相に危機感を抱かせたようだ。

海外勢は「安倍政権の危機」を織り込み済みか

加計問題・森友問題の発生に財務省が関係してくることを知った途端に、政局に敏感な海外筋は10週間前から売り続けたのかもしれない。

震源地がほかならぬ財務省で、そのトップは副総理で安倍首相を支えてきた中心人物だ。したがって、甘く考えれば、安倍政権の危機の相当部分を市場は織り込んだかもしれない。

9月から1月までに日経平均で約5,000円上がった。そして3,500円下がった。これは安倍政権危機を先取りした海外筋の売りであるなら、かなりの分を織り込んだという見方もできる。

Next: 日経平均の安値目処は1万8,000円。買いの好機を見極めたい



日経平均の安値目処は1万8,000円か

ところで、私は先週19日午前に収録した「動画」においては、「安倍政権の危機」「米朝問題」の2つのうちのどちらかがあれば、あるいは同時に起きれば安値の目途はどこかということを「敢えて言えば」ということで、次のような一見極論を述べた。

リーマンショックのときにはPBRは1倍だったし、民主党時代の政治不作為時代の安値もPBRは1倍だったし、一昨年6月のBREXITの時(壮年期大天井からの半値押し6,000円下げのとき)も1倍だった。そうすると長期的な動向から見てPBRの1倍というのは一応の最下限の目途である。

ということは225銘柄全部が平均して解散価値に等しくなってしまったということであり、事業活動を一切やめて会社を解散して借入金を返済して残った純資産を株主に分配するとして、その数値に等しいということであるから、PBRが1倍ということ自体が事業体としては、本来異常なのである。ゆえに、この「異常値」のPBR1倍を最下限の1つの目途にする。そうすると今の数値で言うと1万8,000円のレベルになる。また、PER10倍とすれば約1万7,000円となる。

それ以下の数値は先進国としては「異常中の異常」であってまずあり得ないと見れば、最悪の場合でもその辺が下値の限界ではなかろうか、という意味のことを述べた。

【図1】PBRの1倍水準は、リーマンショック時でも下値の支えとなった、絶好の買いの好機に

【図2】PERは相場状況により異なり、信頼性に欠ける。ただ2012年の最悪期でも10倍が下限に

同志社大学院教授浜矩子氏が言ったような「日経平均1万円」とか、若林栄四氏がもっぱら黄金分割のペンタゴン理論で説くNYダウ6,000円説とか、江守哲氏(住友商事出身)が説く『1ドル65円、日経平均9,000円時代の到来』(ビジネス社、2016年刊)などというような極論はいくらでもあるし、それらを一応読んでみるともっともだと思える点もないことはない。

しかし、筆者は市場にどんなパニックが起こっても、底流には必ず「採算点」「論理的思考」というものが厳存するものだと思っている。

【図3】「市場は常に変化する」との投資姿勢で、17000~19500円の価格帯で、常に変化する市場の動向を見極めながら、買いの好機を狙いたい

【図4】3月23日現在のPBR1倍は17928円

セリング・クライマックスの台風一過、ヒトは必ず「採算点」「論理的思考」に目覚める。市場は時には上にも下にも狂奔するが、根はバカではない。

Next: 安倍政権あってこそのアベノミクス相場。今回は高転びもある…



目前に迫る「安倍政権の危機」

安倍政権あってこそのアベノミクス相場であった。しかも佐藤政権、中曽根政権、小泉政権等の長期政権を見れば、国のために一仕事やって具体的な成果を上げたのは、全部長期政権のことであった。したがって、筆者も安倍長期政権を望む者ではあるが、次のような懸念を抱いている。

最高権力者には「高転び」ということが起こる。自分では十分に配慮しているつもりでも周囲の者の蹉跌〈昭恵夫人〉によって起こる場合もあるし、外交面では同盟者の失敗から起こる場合もある。

前者の場合、今回は安倍昭恵氏である。昭恵さんが国会証人喚問を受けたら安倍政権がそれだけで危うくなる。高転びの機会を与えられるかもしれない。今の安倍政権が安泰だったわけは反対勢力が団結してないからだ。

「一強」と言われてきた。旧民進党左派(枝野派)と共産党と自由党と民社党を大同団結させる坂本龍馬が現れなければ、この一強はいつまでも続く。

しかしそのための驕りからの自信過剰なのか、あるいは安心から来る緩みなのか、国会においても外交政策においてもキワドイところへ来た。

「一強」という驕りが内部崩壊を生む

労務省・財務省に内部告発者が出てきたらしいということは、その緩みに乗じた動きであると思う。勢いのある者の足は引っ張らないものだ。

マキャベリが「君主論」で説くように、最高権力者は常に一面では怖い存在でなければならない。それが驕りや自信過剰から一瞬でも緩むと内部崩壊を生む。まずは最近増えている財務省・労務省の内部告発者である。書き換えた契約書があるなどは、内部告発者がなければ出ない問題だ。

500年前にマキャベリが説いたように(「君主論」が発刊禁止を解除されてから今年505年目になる)最高権力者は自信過剰から高転びの危機が突如として来る。例えば昭恵夫人が国会喚問を受けたら、これでオシマイになるというようなものだ。

佐川氏が喚問される前に「安全圏内」に封じ込めているつもりの籠池氏にも、当然に野党側は接見に行くはずだと思っていたら、先週週末に行ったという。何を引き出したか定かでないが、計45分間接見したという。

この接見での会話は法的には証拠力にはならないが、野党が発表するから国民や議員の心象形成には大いに響く。ロッキード事件の際は米国での副社長の証言が日本国の司法では証拠にならなかったが、検事や判事の心象形成には大きく響いたであろう。

Next: 揺らぐ日米同盟~安倍政権の危機は「外交面」にもある



取り残される日本の外交

危機はまた、外交政策からも来る。対北朝鮮についての強硬派(マクマスター大統領補佐官)と交渉優先派(ティラーソン国務長官とマティス国防長官)との対立は、CIA長官の仲裁を得て交渉優先派が優勢となったが、その後のトランプの言動は常軌を逸した。

金英哲副委員長は米朝対話の用意があると語った。29日に南北閣僚級の会談を開こうと言っているし、これがうまくいけば調子に乗って、米・南北3者会談もやろうなどと言い出した。日本の頭越しにである。これが実現すれば日本の外交は取り残される

おりしもオバマ前大統領が来日する。安倍首相は会わないわけにはいくまい(編注:3月25日、オバマ前大統領と安倍総理は都内のすし店で昼食を取りながら約1時間半にわたって会談した)。

「坊主と袈裟の関数」で、トランプが喜ぶはずはない。何しろトランプのアンチ・オバマは徹底しているから「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」の経路を経てアンチ・安倍にならねば良いが、ツキというものは一旦離れるとトコトン離れるものだから、安倍首相はここで脇を絞めてファイティングポーズをとらねばなるまい。

こうなると下手をすると日本はハシゴを外される形となる。日米同盟の一本で来た安倍政権は、米中が同盟して北朝鮮に当たるとなれば、ハシゴをはずされることになる恐れがある。

もしも米が「敵の敵は味方だ」と毛沢東が言ったように、対中国戦略のカードとして北朝鮮融和となれば、日本はハシゴを外された形となる。

外交で梯子を外された首相は弱い。野党側に大同団結の準備ができていなくても、坂本龍馬が現れなくても、突如として安倍政権が瓦解することは絶対にないとは言えない。

海外勢は政局に敏感だ。彼らが売り続けてきたのは、これを先読みしたからかもしれない。正月から「イヌ笑う年」などと言ってきた日本の市場観測者の大甘を見つめ直す時かもしれない。

2018年は好機もリスクも満載の年

昨年末から今年はじめにかけて当メルマガでは、「2018年ほど好環境に恵まれ、これほど多くのリスク・不確実性に囲まれた年はない」と何度も述べてきた。超低金利・日銀の超金融緩和・好業績・低インフレ・世界好景気等々の組み合わせによる「適温相場」の時期は終わり、具体的にリスクを意識しなくてはならなくなってきた。

まずは安倍内閣の支持率低下の具体化と、米朝会談の決裂の恐れである。当面、目に見えているのはこの2つであろう。

昨年9月の19,200円台から選挙の圧勝を見て海外投資家が猛烈に買いまくって約5,000円高を演じ、1月23日の24,000円台を示現した。

ということは、安倍内閣の支持率が急減すれば、海外勢の買いによる5,000円高は逆に下方に向かう力となる。株は自分の重みでまた下がる。

Next: 存続が怪しい安倍政権。株価急落の場面で海外勢が買う可能性も?



改憲どころではなくなった安倍政権

麻生副総理の尊大な態度が自民党のイメージを大きく損ねたという政治評論家が多い。佐川元局長を呼び捨てにし、組織上は自分の配下にあったはずの佐川局長を政局から一役人に切り離す、あの態度である。

佐川氏を国会に呼べば「昭恵夫人も」ということになる。改ざん問題が麻生副総理と直結したとなれば、どういうことになるのだろうか。

麻生さんはいずれにしても辞めざるを得ない方向に行くであろう。そうでなければ自民党は来年の参院選を戦うことはできないであろう。

安倍首相が執念を燃やす憲法改正の実現も焦ってきた。9条をそのまま残して「自衛隊を保持する」と付け加えて自衛隊を合憲にする、ということで最低限度の目的は達したとするつもりだろう。

今や改憲(「壊憲」ともいう)どころではなく、安倍政権の存立そのものも危うくなる寸前まで来ている。

安倍首相や麻生副総理が国民の信頼を取り戻すことができるのか、これは簡単なことではない。

急落する場面があれば、海外勢は買ってくるかも

昨年10月の選挙の圧勝を見て、海外勢が猛烈に買って約5,000円を上げた。15年に一旦終わっていたはずの壮年期の大天井を3,000円もオーバーした。

この勢いが支持率が急低下した時に下方へ向かう勢いとなる。

しかし、政局に敏感な海外勢のことだから、それを先読みして今まで何週間も売り続けたのかもしれない(それを個人投資家が肩代わりした格好になった)。

そうなれば、いざ安倍政権崩壊の危機で急落する場面があれば、キャッシュポジションを高くしているはずの海外勢は買ってくるかもしれない。

当面の市況~トランプの存在そのものがリスク要因

米中戦争前夜

2018年はこれほど好環境に恵まれた年もないが、これほどリスクに囲まれた年もない

トランプの保護主義政策が正体を現した~これが本来の米国の正体だ

パウエル体制の試金石~FOMC振り返り

為替動向は中期的な流れを変えた

リフレ派が占拠している日銀は出口戦略の準備は進まない、そこに問題がある

日銀法改正20周年の意味するところ


※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報 「投機の流儀 (罫線・資料付)」*相場を読み解く』2018年3月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2018年3月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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