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中国は「日本の二の舞い」になるか? 米中貿易戦争は長期化の覚悟を=田中徹郎

米中の貿易戦争がエスカレートするのを見て、過去に日本と米国で起きた一連の貿易摩擦を思い出さずにはいられません。歴史を紐解いて今後の展開を考えます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

日本の一方的な「努力」で解決した日米貿易摩擦。中国はどう出る

いま思い出す「日米貿易摩擦」

先週アメリカのトランプ大統領は、中国からの輸入品に対して高い関税をかけると発表しました。そのむかし日本とアメリカで起きた、一連の日米貿易摩擦を思い出さずにはいられません。

新興の国が経済的に急発展する場合、既存の経済大国との間で起きるこのような経済摩擦は、きっと避けて通れないプロセスなのでしょう。

思い起こせば、日本とアメリカ間の貿易摩擦は長く続きました。

1950年代の繊維製品に始まって、その後カラーテレビ、半導体、牛肉とオレンジ、自動車へと対象は移っていきました。

特に記憶に残っているのは自動車で、アメリカは伝家の宝刀スーパー301条を発動して高級日本車への100%関税を発表し、これに対し日本はWTOに訴えて対抗しました。

日本の「努力」で解決してきた

それでも日本とアメリカの場合、この問題を協議で決着しようとする意識が強かったようで

など、政府間レベルでの協議や調整にとどまらず、民間企業レベルでも

など、日本側の経常黒字を減らす努力を積み重ねました。主に日本側の努力によって…。

その結果、幸か不幸か貿易不均衡は正常化に向かいましたが、それがわが国にとって果たして幸いだったのかどうか…。

振り返ってみれば、経済覇権国であるアメリカにいいようにされただけという見方もあります。現にその後、わが国は低成長に苦しんでいます。

その原因がすべて貿易摩擦での日本側の譲歩によるとは言いませんが、今にして思えば、少なくとも一因にはなっているように思います。

以上の経緯を踏まえ、いま起こりつつある米中貿易戦争について考えるとどうでしょう。

Next: 過去の日本とどう違う? 決着が難しい米中貿易戦争



中国はやられたらやり返す

構造的には、日米と同じく新興経済と既存の経済の対立です。しかし日米のケースと決定的に違うのは、どうやら中国は日本ほどお人好しではなく、しかも軍事的な覇権まで視野に入れている点ではないでしょうか。

つまり中国は、日本のようにアメリカに対して遠慮する必要が無く、必ず報復的な行動をとるということです。つまり、「やられたらやり返す」です。

ただし、だからといって中国が徹底抗戦するとも思えません。なぜなら経済的に見て米中は一蓮托生だということを中国はよく知っているはずですし、少なくとも現段階で、彼らは経済的にアメリカに勝てると思っていないのではないでしょうか。

少しでも優位に立ちたい米国

一方で、トランプさんの方はどうでしょう。

たしかに予測不能なところはありますが、予測不能に見えるのは、行動に信念の裏付けがなく、その時々の利で動くからだと思います。その観点から米中経済摩擦を見るとどうでしょう。

輸入関税の適用は、自国産業からの支持を得る一方で、中国側の報復によって農産業や航空機など中国への輸出で稼いできた産業は大きなダメージを受けます。

このような利害を天秤にかけながら中国と交渉し、いかに有利な条件を引き出すかがトランプさんの胸の内ではないでしょうか。

決着への道のりは長く険しい

つまりアメリカも中国も、お互いを徹底的にやっつけるということなどは考えておらず、落としどころを図りながら交渉を続けることになると僕は思います。

ただしその道のりが遠いのは、日本とアメリカの間で起きた貿易摩擦が半世紀近くも続いたという歴史を見れば明らかです。

先週以降また世界の株価は大荒れですが、いずれ株価はこの問題の超長期化を見越し、その変動幅を縮小していくことになるのではないでしょうか。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年3月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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