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新たに「株主優待」を導入すると株価はどうなる? 4月に導入した企業で分析=炎

新たに株主優待を導入した企業を市場はどう評価するのでしょうか。投資家が得るメリットと合わせて、4月から導入したクロスフォー<7810>の場合で考えます。(『億の近道』炎のファンドマネージャー)

プロフィール:炎のファンドマネージャー(炎)
小学生から証券会社に出入りし、株式投資に目覚める。大学入学資金を株式の利益で確保し、大学も証券論のゼミに入る。証券会社に入社後は一貫した調査畑で、アナリストとして活動。独立系の投資運用会社でのファンドマネージャーの経験も合わせ持つ。2002年同志社大学・証券アナリスト講座講師を務めたほか、株式漫画の監修や、ドラマ『風のガーデン』(脚本:倉本聰)の株式取引場面の監修を行う。

個人投資家が再注目。導入したクロスフォー<7810>の変化は

市場はどう評価する?

IPO後の長期調整局面を抜け出る手法として多くの企業で導入が図られる「株主優待制度」。それはクオカードのような準現金配当のようなものや自社製品の割引といったものまで様々です。

市場では株主優待制度を活用している個人投資家の話が頻繁に出て参りますので、多くの投資家の楽しみの1つとなっているものと思われます。

株式投資のリターンは単純に配当金(インカムゲイン)値上がり益(キャピタルゲイン)の2通りがありますが、これに株主優待制度が加わり、投資家は新たな評価をしていくことになります。

少なくともないよりあった方が良いぐらいの株主優待制度なのかも知れませんが、株価の位置でその評価は違ってきます

4月に株主優待制度を導入したクロスフォーの場合

4月に株主優待制度の導入を発表したクロスフォー<7810>の場合はどうでしょうか。

同社の株価は公開価格730円で、初値が1051円、高値が1810円でした。1月に2分割を実施しましたので、それぞれ公開価格365円、初値は525.5円、高値は905円となります。

時価は406円で、直近安値は325円でした。つまり406円だと100株の投資で7月末まで保有すると4万600円の投資で1株7.2円配当(720円、20%控除後576円)が得られることになります。

これに今回の株主優待品として同社の4500円相当の製品が100株以上の株主に贈呈されるという点をどう評価するのかになります。

これによる株価への効果は絶大で公開価格割れで低迷していた株価は一気に400円台まで上昇してきました。100株投資では4万円が必要になりますが、それに対して576円+4500円だと単純合計で5076円となります。

クロスフォー<7810> 日足(SBI証券提供)

単純には12%の利回りとなりますが、問題は100株だけの所有株主だけがメリットを受ける点です。

これについては株価が400円台に戻った点でのメリットを享受できた点でカバーされます。ですから、たくさん保有されている投資家は株価が発表後の419円からその日の高値429円で売却行動に出た方もお見えかも知れません。

Next: 新規に個人投資家が投資するメリットはあるのか?



新規に個人投資家が投資するメリットはあるのか

問題は新規に個人投資家が投資するメリットが中長期的に享受できるのかという点にあります。

これについては、公開初値水準にまで株価が戻る可能性があるのかどうかがポイントになります。

同社は26日に機関投資家やアナリスト向けに決算説明会を開催し中間期の業績停滞と通期業績の下方修正の理由、来期以降の業績展望などを投資家に説明を行います(※編注:原稿執筆時点4月24日)。今期業績の下方修正に至った原因の1つである中国での模倣品対策もその際に社長から述べられるものと思います。

仮に同社の業績が上場時の水準である経常利益8億円台を回復し、さらにそれを上回る収益が確保できるまでになれば、評価は大きく変わります。時価総額が100億円台になると上場直後から投資されていた株主にはさらにメリットがもたらされることになります。

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個人投資家の関心が再び集まる

そもそも同社の製品に関心のなかった投資家にとっては、今回の株主優待制度は改めて関心を呼び戻すことになるのではと期待されます。

既に株主優待制度の発表後の3日間で出来高が400万株近くに達しており、投資家の入れ替わりが起きていると推察されます。中長期でじっくり同社株を持とうという投資家に入れ替わったのであれば、今後の株価推移も安定したものとなるかと期待されます。

配当金や優待制度を利用して株式投資を楽しもうという個人投資家の皆さんが主役となると、同社にとっても株主=消費者となって好循環が生まれるものと期待されます。

現在、同社の株主は3000名程度だと推察されます。新たに100株×3000名(30万株分)の株主が加わっただけでも6000名が株主となる計算です。優待制度で贈られたダンシングストーンを身につけた株主が年末はあちこちで見られるようになるのかも知れません。

消費不況下にある宝飾品業界の中で特許化されたダンシングストーンで世界の市場に参入していこうとする同社は、宝飾品業界からファッション雑貨、メガネなど他の業界へと市場拡大を図ろうと準備中です。そうした事業活動の一端が社長の口から情熱的に伝えられた時に、評価はまた一段と高まるものと考えられます。

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億の近道』(2018年4月24日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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