マネーボイス メニュー

また始まった北朝鮮と米国の揺さぶり合戦、日本はカネだけ用意して黙ってろ=矢口新

米朝間で「非核化」をめぐる交渉が白熱している。双方ともが自国を有利にしようと様々な主張をしているが、日本は完全に「トランプ社」の下請け状態である。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年5月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

交渉の場に立てない日本。非核化資金「2兆円」だけ払わされる?

北朝鮮が巧みに操る「正論」と「詭弁」

北朝鮮は5月16日に開催予定だった南北閣僚級会談を土壇場でキャンセルした。その理由として、11日から始まっている米韓軍事演習が、4月27日の南北首脳会談で署名した「板門店宣言」に抵触すると指摘した。

米トランプ政権はこれまで、無条件で即時の核放棄である「リビア方式」での北朝鮮非核化を実現させようとしてきた(※編注:トランプ大統領は17日、米朝首脳会談の中止もちらつかせる北朝鮮に対し、金正恩体制を保証すること、リビア方式を適用しないことを明言しました)。

とはいえ、リビアのカダフィ政権が、米国の支援する反カダフィ派に潰され、処刑された歴史がある。そのことから北朝鮮金正恩政権は、いくら現体制を保証すると約束されても、言葉通りに受け取ることはできない

平和的であるべき米朝首脳会談を直前に控えて、北朝鮮を仮想敵国とする軍事演習に異を唱えるのは「正論」だ。

米韓としては、軍事演習の仮想敵国は中国だと言う訳にもいかず、北朝鮮に一本取られた形となった。

正論といえば、一部の国だけに核保有を認めた「核拡散防止条約は不平等条約」だというのも正論だ。

一方で、金正恩政権は「拉致問題は解決済み」とするなど、正論と詭弁とを相手によって使い分け、常に交渉を有利に導こうとしている。

出合い頭に大きく吹っかける「トランプ外交」

一方、米国と中国は、双方に打撃となる貿易戦争を回避する意思を示唆した。

トランプ大統領は米政府の制裁で苦境に立った中国の通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)を巡り救済策を模索する意向を明らかにし、中国側は劉鶴副首相の訪米を決めた。
※参考:貿易戦争回避か、米中雪解けの兆し-ZTEとクアルコムで歩み寄り – Bloomberg(2018年5月14日配信)

私の印象を述べさせて頂くと、トランプ政権の外交戦略は、出合い頭に大きく吹っ掛けておいて、相手の反応を見ながら譲歩、落としどころを探っていくというものだ。

その意味では、中国との貿易戦争は、落としどころを探る段階に入ったと思われる。

例えば、北朝鮮とのやり取りでも、核全廃の保証として、核開発に携わった数千人規模の研究者・技術者の海外移住を要求している。

一方で全廃された暁には、政府援助こそ示していないが、経済制裁の解除、米企業の投資拡大を約束している。

ここで、数千人規模の研究者・技術者の海外移住要求は、吹っ掛けだ。

Next: 大きめに要求しておくいつものやり口。振り回されるのは日本…



中間点よりも少しだけ米国を有利にする

旧ソ連や戦時下の日本政府のように、「労働者の強制移住」などということが国際的にも認められる可能性は極めて低い。

それでも要求しておくのは、要求引き下げの代償に、北朝鮮に何らかの譲歩を期待しているからだ。

私の見る限りのトランプ政権は、少なからずの米企業にありがちな、まずは最大規模の要求を突き付けておいて、後に現実的な所で決着する。

つまり、極端な形でアメとムチを提示し、中間点のより自分の有利な位置で決着をつけようとするように思える。

米国に代わって、日本が「2兆円」を負担させられる

もしかすると米政府援助に代わり、日本に何かを提供させるつもりかも知れない。実際に、金正恩政権は日本からは「2兆円欲しい」と嘯いている。

これは、安倍政権になってから政府の対外援助などを意味する「第二次所得収支」の赤字が急拡大、2017年の赤字幅が2兆1157億円だったことを踏まえたものだと思われる。

「2兆円」とは言わずとも、(何人かの拉致被害者の返還と引き換えに)日本から多額の資金を引き出せれば、トランプ政権は交渉を有利に進められる。

ちなみに、消費税率8%から10%への引き上げで期待される税収増は、2兆数千億円となっている。なので、安倍政権が「第二次所得収支」を黒字化すれば、引き上げ分の財源は確保できるはずだ。

トランプの要求は「半島すべての非核化」

また5月10日、北朝鮮から取り戻した韓国系米国人を出迎えたトランプ大統領は、政府専用機横で会見し、「北朝鮮を非核化する」ではなく「半島全てを非核化する」と語った。

このことは、米韓同盟を廃棄し、在韓米軍の引き上げを示唆する。これは、在日米軍を強化すれば実現できることだ。

横須賀は首都がある東京湾の出口に位置するため、戦前は日本海軍の拠点だったが、今は米軍が駐在している。首都にある横田基地には、オスプレイが配備された。

南北が統一されるなら、在韓米軍を日本に移動させても軍事的に問題があるどころか、守備面も考慮すればむしろ強化できる。

Next: 日本は米国の下請け状態。話し合いに加わるのは負担分の相談のときだけ



すべては「日本抜き」で決められる

こうしたことの全てが、トランプと習近平、金正恩の話し合いだけで、決められようとしているように見える。

日本は、トランプ社の下請け企業のような存在なので、肝心な話し合いには加われない。加わる時は、日本の負担分の話だ。

日本政府は、大企業の下請けから脱し、独自の力で世界中を顧客とした中小企業の生き方を学ぶ必要がありそうだ。

続きはご購読ください。初月無料です<残約2,100文字>

image by:Wikimedia Commons | lev radin, Frederic Legrand / Shutterstock.com

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年5月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。

【関連】日銀がついに「敗北宣言」。物価目標2%を諦めるほど、日本は貧乏になっている=斎藤満

<初月無料購読ですぐ読める! 5月配信済みバックナンバー>

※いま初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

・マインドコントロールを行う4つの方法(5/21)
・欧州企業が、米の対イラン経済制裁に同調(5/17)
・トランプ社と、下請け企業(5/16)
・勝てる時に大きく勝つ「プロギャンブラー・のぶき」の生き方(5/15)
・Q&A:矢口式スウィングトレードについて(5/14)
・Q&A:株式のスウィングトレードは3カ月単位で?(5/10)
・指導者が伝えることを諦めたら(5/9)
・ストレスを軽減する方法(5/8)
・60歳半ばで離婚した知人との会話(5/7)
・ゴールドマン株式デスクに生身のトレーダー3人-昔は500人(5/2)
・知らないことを、していることにするまでの「5つの壁」(5/1)

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

5月分すべて無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

4月配信分
・世界にはこんな楽しいものがあるぞ~「飛べないMRJ」続報(4/26)
・IPO人気はバブルの兆候?(4/25)
・このままでは「観光大国」は遠い夢…(4/24)
・やめるな前を向け~「飛べないMRJ」続報(4/23)
・日銀金融リポートが、事実上、促しているもの(4/23)
・スルガ銀行:チャート分析と、事前のリスク回避(4/19)
・大谷翔平選手~夢、現実、使命感(4/17)
・米英仏のシリア攻撃への見解(4/16)
・「飛べないMRJ」から考える日本の航空産業史(4/12)
・Q&A:日米の経済や歴史を知るうえで役立つ書籍は?(4/11)
・EUとポピュリズム(4/10)
・収斂と拡散(4/9)
・人生の大底でなされる損切り(4/9)
・Q&A:エッジを抜ければ、転換した?(4/5)
・Q&A:保合いより、トレンドを狙う方が、勝率が高まるのでは?(4/4)
・マネジメントと相場(4/3)
・物理学者のニールス・ボーア氏の「専門家」の定義(4/2)
・世界で4000億ドルの株式配当金が流入(4/2)

3月配信分
・法人税率を下げても税収は増える逆相関(3/29)
・余裕を失った「狂った職場」(3/28)
・どうして財務省はプライドをなくしたか?(3/27)
・Q&A:5X13プログラムは、何かが足りない気がします(3/26)
・日本株下落について/日本外交の失策(3/26)
・「心の病」にかかる人の年齢層が下がっている(3/22)
・Q&A:トレード記録は必要か?(3/20)
・外資への転職/騙されているのは、誰か?(3/19)
・アベノミクスの功罪。日本経済が得たものと、失くしたもの(3/15)
・信用をなくしたら、もう終わり(3/13)
・フェイクニュースに騙されないために/消費税で利益を得る人々(3/12)
・ブロックチェーンを支える人々(3/8)
・Q&A:GMMAを見てもいいか?(3/7)
・Q&A:1000通貨単位での売買とは?(3/7)
・正味エネルギー供給量が示唆する、原油の将来(3/5)
・相場の先行き、分かることと、分からないこと(3/5)
・水争い(3/1)

2月配信分
・相場の先行き、分かることと、分からないこと(2/28)
・Q&A:ニューヨーク時間のほうが、とりやすい?(2/27)
・カネで得られるもの(2/26)
・3年6カ月ぶり伸びの「家計の体感物価」って何?(2/26)
・米株が急落したもう1つの要因(2/22)
・Q&A:ストップがないと不安(2/21)
・Q&A:上位足と下位足(2/20)
・Q&A:ウェッジラインの引き方(2/19)
・中国、強権政治のツケ(2/19)
・債務なしの代替奨学金(2/15)
・博打的資金の誘導(2/14)
・仮想通貨はネズミ講?(2/13)
・どうしてローンの帳消しが、経済成長につながるのか?(2/12)
・スウィングトレード、銘柄入替えによる分散投資の要点(2/8)
・ボラティリティを味方につけろ!(2/7)
・株価、一時的な調整か?(補足)(2/6)
・株価、一時的な調整か?(2/5)
・Q&A:トレードに最適の通貨ペアや銘柄は?(2/5)
・Q&A:エントリーを避けるとき(2/1)

1月配信分
・Q&A:1分足に見られる特徴(1/31)
・仮想通貨、誰の、何を信じるか?(1/30)
・Q&A:方向の判断(1/29)
・「働き方改革」:私見(1/29)
・Q&A:エグジット、利益確定(1/25)
・税収60兆円、歳出100兆円で、どうして黒字化できる?(1/24)
・Q&A:学んだことを、一部変更して使っていいか?(1/23)
・米政府機関の一部閉鎖(1/22)
・退く? 朝鮮半島の有事(1/18)
・Q&A:トレンドラインの引き方(1/17)
・Q&A:型通りか?、裁量か?(1/16)
・Q&A:テクニカル指標を使いこなす(1/15)
・2018年の金融市場:カネ余り相場の終わりの始まり(1/4)

12月配信分
・SNSはプロパガンダの道具(12/26)
・Q&A:手仕舞いの目安は?(12/26)
・Q&A:ダブルトップのエントリー/13SMAの波動を取りに行く(12/25)
・プロパガンダ(12/21)
・トランプ大統領、米国によるロシア包囲網をぶち壊す?(12/19)
・為替ヘッジ付き投信(12/18)
・取り残される日本(12/14)
・日本でICOは普及しない(12/13)
・保合い相場をどう見分ける?(12/12)
・中国金融システム、3つのリスク:IMF(12/11)
・通貨、ブロックチェーン、ビッドコイン(12/11)
・中東情勢(12/7)
・超割高となった債券市場(12/6)
・どうして、何もかもが値上がりする?(12/5)
・Q&A:エントリーとエグジット/長過ぎる波動(12/4)

【関連】フィリピン妻は結婚できない中年男を幸せにするか? 奇跡の婚活、夢の果てに=鈴木傾城

【関連】「キャッシュレス後進国」に落ちた日本。焦った政府が大胆な計画変更へ=岩田昭男

【関連】AIに仕事を奪われた元ゴールドマンの株トレーダー、いまは何をしている?=矢口新

【関連】「仕事がつまらない」と嘆くあなたへ。自分の適所を見つけてお金持ちになる方法=俣野成敏

相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2018年5月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―

[月額880円(税込) 毎週月曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
ご好評のメルマガ「相場はあなたの夢をかなえる」に、フォローアップで市場の動きを知る ―有料版― が登場。本文は毎週月曜日の寄り付き前。無料のフォローアップは週3,4回、ホットなトピックについて、より忌憚のない本音を語る。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。