マネーボイス メニュー

中国は知っている。今に「ハイテク産業」で米国を倒し覇権を握ることを

米中貿易戦争が激化しています。これは未来の新しい世界秩序の覇権を争う米中戦争であると認識したほうが良いでしょう。両国ともに妥協は容易ではありません。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2018年7月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

中国のインターネット人口は圧倒的。やがてノーベル賞も独占か

次の世界は、米中どちらが中心にいるのか

米中貿易戦争を語るうえで出てくるキーワードに、「中国製造2050」「ハイテク覇権争い」、そしてその背景にある「知的財産権問題」があります。

次の世界は、米中どちらがその中心にいるのか。その争いが今、繰り広げられているのかもしれません。

そして、人工知能(AI)やロボティクス、フィンテックなど世界的に注目を集める次世代産業において、中国の存在感が急激に増しています

その勢いは、すでに米国を抜き、世界的な主導権を握りつつあるとまで言われています。米国にとっては、面白くない以上に恐怖を覚えていることでしょう。

インターネット人口の差が勝敗を分ける

中国のパワーはなんと言ってもその人口の多さです。

中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)が公開している「中国におけるインターネット開発に関する統計報告書」によれば、2017年6月現在、中国のインターネットユーザーは世界のインターネットユーザーの5分の1を占める7億5000万人に達しています。インターネットの普及率は54.3%、世界平均を4.6ポイント上回っている数字です。

同じ時点での中国のモバイルインターネットユーザーは7億5361万人で、2016年末から2830万人増加しました。インターネットを利用しているモバイルインターネットユーザーの割合は、2016年末の95.1%から96.3%に増加し、モバイルインターネットユーザーの割合は増加を続けています

ただ都市部と農村部で見ると、インターネットユーザー数は、都市部が全体の73.3%を占める5億5000万人で、農村部は26.7%になっています。インターネット普及率で見れば、都市部69.4%、農村部34.0%となっています。

これを対人口比インターネット普及率で見れば、アジア諸国で1位は日本で93.3%、2位が韓国で92.6%、大きな人口を抱える中国は54.6%とベトナムやフィリピンよりも低く、世界第2位の人口があるインドは34.1%にとどまっています(InternetWorldStats.comより2017年12月末時点)。

中国が世界ハイテク業界の覇者になる日は近い

これは逆の見方では、まだまだインターネットの市場は拡大する余地があるということになります。中国やインドはIT業界では未来の大きな市場と言えそうです。

普及率でなくインターネット人口で見れば、アジア全体の37.7%が中国、22.5%がインドが占めます。日本は5.8%、韓国2.3%で、これ以上シェアを広げられることはありません。

インターネット人口の2000年から2017年12月末までの増加倍率は、ベトナムが320.0倍で桁違い、インドが92.4倍、インドネシアが71.6倍、中国は34.3倍となっています。日本と韓国は同数で2.5倍です。ベトナムでは携帯電話の普及、そして国を挙げての情報通信技術への注力が功を奏する形となっています。

圧倒的な国内ネットユーザーを抱えていて、まだ増え続けている中国とインド。技術があり市場があり資本がある中国が、世界のIT業界の覇者になる可能性は高いといえます。

Next: 圧倒的な中国のモバイル決済普及率。やがてノーベル賞も独占か



あと数年で中国がノーベル賞を独占する?

少しデータはさかのぼりますが、世界経済フォーラムが発表する理系(科学、技術、工学、数学)の大学卒業者数の国際比較(2016年)よれば、中国は467万人と世界1位で、2位のインド(258万人)、3位の米国(57万人)を大きく引き離しており、世界でも群を抜いています。

この世界比較を踏まえて時代をいまに戻して見ますと、今年の中国での大卒者は800万人を超える820万人、そのうち半数以上は理系出身、上位の約30万人は米国留学をしています。

あと数年もすればノーベル賞は中国勢が独占するのではとも言われています。

急速にモバイル決済が普及している

中国ではこの5年ほどの間で、現金を使わない「モバイル決済」が主流となり、キャッシュレス化が急速に進みました。

モバイル決済は、スマートフォンなどを利用した電子決済サービスで、現金を持つことなく、国内の実店舗などでの支払いや交通機関の利用が可能となる、非常に便利な支払い方法です。

中国では、「モバイル決済」が今や日常生活を送るうえで欠かせない社会インフラになっています。日本以上のキャッシュレス社会には誰もが驚いていることでしょう。

日本では銀行が生活に根付いていて、決済や送金、預金に至るまで銀行への依存度が高いといえます。

一方中国では、銀行が提供するサービスは限られていて、小売店での銀行カード決済が広がりませんでした。偽札による現金決済リスクも販売側には残っていて、QRコードを利用したモバイル決済は、コスト面からも受け入れやすかったと思われます。

発展途上国などでは、銀行口座を普及させるよりもネット決済を普及させるほうが早いです。つまり今の日本社会の段階を一気に飛び越えていったわけです。

日本では銀行依存度が高いので、発展途上国に比べモバイル決済の普及が遅れているように見えるのだと思われます。

調査会社“iResearch”によれば、中国でのモバイル決済は、商品購入に加え、個人間の送金や投資商品、保険商品購入などの取引にも使われ、その取引総額は2017年1月~9月で81.4兆元(約1,382兆円)となりました。2016年の1年間を通してみれば58.8兆元(約998兆円)ですから、どれだけ市場規模が急拡大しているかがわかると思います。この81.4兆元のうち、商品購入のためのモバイル決済額は8.4兆元(約143兆円)となっています。

2017年の実店舗のモバイル決済利用人数は5.1億人と、2016年比+37%の増加となりました。これは中国の生産年齢人口(16才~59才)の約9億人の半分以上にあたります。

便利なネットサービスは当たり前にある

モバイル決済普及で中国で生まれた新しい商業サービスとして、出前サービス、ライドシェアリングやバイクシェアリングなどがあります。

まあ便利と言われる様々なネットやモバイル決済を使った大抵のサービスは、中国には当たり前にあるのでしょうね。

今後も中間所得層の増加やスマートフォンの普及に伴い、より良い暮らしや利便性へのニーズが高まり、様々なサービスが発展するとみられる中、中国のモバイル決済市場は拡大が続くとみられています。

中国情報通信研究院(CAICT)の発表によると、中国のデジタルエコノミーの規模は2016年に22兆6000億元(約385兆円)に達しており、これはGDPの30.3%に相当します。

Next: GoogleやAmazonも危機感? 中国ハイテク企業の勢いがすごい



世界注目する中国インターネット産業

中国のインターネット業界を代表する3企業と言えば、百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)です。3社の頭文字を取って「BAT」と称され、その急成長ぶりで世界から注目を集めています。

3社はそれぞれ検索エンジン(バイドゥ)、EC(アリババ)、SNS(テンセント)と異なるサービスを主力事業に成長し、いずれも中国では人々の生活に欠かせない存在となっています。

「BAT」と呼ばれるテック企業大手3社は、IoT、VR、フィンテック、人工知能(AI)、ロボット、ビッグデータ等の分野でデジタルエコノミーを拡大させています。

米国ではFAANGと呼ばれるITを代表する企業がありますね。フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグルです。

国を挙げてテクノロジー分野に注力

中国のベンチャーキャピタルもテクノロジー分野に投資を集中させています。中国政府も、企業の成長やイノベーションにインターネットの活用を奨励する「インターネットプラス政策(互聯網+)」を通じ、この分野を支援してきました。

2015年に李克強首相が提唱したインターネットプラスに加え、政府は、AI産業を1000億元(約1兆7000億円)に成長させる目標を掲げています。

2015年3月、中国の国会に相当する全国人民代表大会で、李克強首相が政府活動報告において、「インターネットプラス(互聯網+)行動計画」を提出しました。

インターネットプラス(互聯網+)はつまり、インターネット技術(「モバイルインターネット(移動互聯網)」、「クラウドコンピューティング(雲計算)」、「ビッグデータ(大数据)」、「IoTモノのインターネット(物聯網)」などの新しいインターネット技術全体とほかの産業が結びつくことです。

「インターネット+医療」、「インターネット+物流」、「インターネット+金融」などのように、あらゆる産業と連携し、従来の産業の新たな発展の推進を目指すものです。この「インターネットプラス」の推進が、オンライン決算サービスの急速な普及させたとも言えます。

そのおかげで、自転車シェアリング(共享単車)の爆発的なヒット、デリバリーサービスの充実など、人々の生活スタイルが大きく変化しています。

Next: トランプは中国の何に怒っている? 中国産業が抱える問題点



中国の知的財産権問題

米中貿易摩擦における関税強化合戦ですが、仕掛けたのは米国です。その大きな理由として、中国による知的財産権侵害があるとされています。

つまり米国の技術を盗んで、その技術で中国が安価で製造して商売をしているというのです。

具体的には電気自動車技術の流出で、年間500億ドルの損失があるとトランプ大統領は指摘しています。たとえば中国側は、電気自動車などの最先端の中核技術を、米中合弁会社を作ってそこに移さないと中国で事業ができないとしていることに、トランプ大統領は怒りをあらわにしています。

また、中国国内の自動車業界を外資に開放したのは、中国国有企業近代化のために米国から技術を移転させることが目的だと断じてます。安い中国の労働力を使いたければ、技術を中国に持ってきて開示しろと言うことで、米中合弁会社の契約が終了後も技術は中国側が使おうというのです。

知的財産権保護のための関税強化に関して米政府は、「中国は、米企業を含めた外国特許権者に対し、ライセンス契約の終了後に中国のエンティティーが技術を利用することを禁じる基本的な特許権を認めないことで、WTO規則に違反している」と主張しています。加えて米政府は、「さらに中国は、海外から輸入された技術を不公平に取り扱い、不利に働く有害な契約条件を強要することで、WTO規則に違反していることが判明した」と述べました。

貿易摩擦ではなく「世界覇権」を争う戦争だ

ハイテク覇権争い、自動運転者や5G(第5世代移動通信システム)における主導権争いで、中国側を牽制する意味でも、今回は知的財産権侵害を全面に押し出して、大統領権限で強力な貿易制限をかける「通商法301条」を発動しました。

中国企業の対米投資も一部制限しています。アルミニウムや鉄鋼への関税強化は、安全保障上の必要性からと捉えていて、これは通商拡大法232条によるものになります。

中国におけるインターネットの普及や今後の発展の大きな可能性、国家としてのインターネットプラス政策を踏まえて、日米欧がずっと目に余るとされてきた知的財産権問題をここに来て表に出して、ハイテク覇権をかけての米中経済戦争が勃発しました。

米中貿易摩擦と言うよりも、未来の新しい世界秩序の覇権を争う米中戦争であると認識したほうが良いでしょう。

中国製造2050(メイドインチャイナ計画)

そしてトランプ大統領は、中国側が「中国製造2050(メイドインチャイナ計画)」の旗を降ろさない限り関税強化を続けると明言しています。

ここでもう1つのキーワードである「中国製造2050」が登場してきます――

続きはご購読ください。初月無料です<残約7,000文字>

今週の重要指標&予定

マーケットを揺るがす米中貿易戦争

静かに語られる中国発金融不安

今週の相場シナリオ

よもやま話:GEがダウ工業株30種平均の構成銘柄から外れた

※これらの項目は有料メルマガ購読者限定コンテンツです →いますぐ初月無料購読!

<初月無料購読ですぐ読める! 7月配信済みバックナンバー>

※2018年7月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

・トランプ大統領は発言でドルが売られる/米ロ首脳会談(7/23)
・株価上昇、金利低下、ドルは買われる一週間/ハイテク覇権を争う米中戦争が勃発(7/16)
・米国が対中関税強化発動(7/9)
・米国が発する通商メッセージがマーケットを動かす(7/2)
いますぐ初月無料購読!

image by:Kaliva / Shutterstock.com

※本記事は、らぽーる・マガジン 2018年7月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】あまり報道されない「水道民営化」可決。外国では水道料金が突然5倍に

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込324円)。

6月配信分
・マーケット変動要因はトランプ大統領のTwitter(6/25)
・米中貿易戦争で振らされるマーケット(6/18)
・世界重要会議から中央銀行へ(6/11)
・欧州事情で動くマーケット(6/4)
2018年6月のバックナンバーを購入する

【関連】2019年から日本国は衰退へ。海外メディアも一斉に警告「少子高齢化という時限爆弾」

【関連】なぜ貯金ができない? バフェットの「貧乏時代」に隠された貯蓄のコツ(後編)=俣野成敏

【関連】銀座の美人ママが教える「なぜか人に好かれる」成功者が持つ2つの共通点

らぽーる・マガジン』(2018年7月16日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

らぽーる・マガジン

[月額330円(税込) 毎週月曜日]
絶対に知るべき重要な情報なのに、テレビなどが取り上げないことで広く知らされていないニュースを掘り起こし、また、報道されてはいるけどその本質がきちんと伝わっていない情報も検証していきます。情報誌は二部構成、一部はマーケット情報、マーケットの裏側で何が動いているのかを検証。二部では、政治や時事問題、いま足元で何が起こっているのかを掘り下げていきます。“脱”情報弱者を求める人、今よりさらに情報リテラシーを高めたい人はぜひお読みください。CFP®資格の投資ジャーナリストが、毎週月曜日にお届けします。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。