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米ドル不要の世界はすぐそこ。米国自身が「通貨覇権」を捨て去ろうとしている=矢口新

ドル覇権を脅かすのは「米国自身」である可能性が高い。実際、トランプ大統領の米国第一主義は、前世紀に米国が積み上げてきた覇権の枠組みを壊しつつある。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』2018年8月14日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

経済は人間が回す。人口を武器に中国とインドがドルを捨てたら…

揺らぐ「ドル基軸通貨制」

ロシアのラブロフ外相は14日、訪問先のトルコで、ドルの基軸通貨としての役割は薄れつつあり、ロシアはトルコを含む貿易相手国との決済にそれぞれの国の通貨を利用することを模索していると明らかにした。

一方、トルコは、ロシアの最新鋭地対空ミサイルS400の購入を計画しているとした。

先日、米国はトルコへの戦闘機の売却を一時停止すると発表した。しかし停止するまでもなく、トルコ政府は米国製戦闘機だけでなく、国民にはiPhoneや米国製品購入のボイコットを呼びかけている。

これも政府が呼びかけるまでもなく、リラ安で米国製品は年初来1.5倍近くにも値上がりしている。

またリラ安は、トルコ製品の値下がりだけでなく、東地中海を含むトルコ観光を割安にしている

【関連】トルコは序章に過ぎないのか? 強いドルが巻き起こす新興国「通貨危機」=児島康孝

トルコとロシアが急接近

私は、世界の一強となった米国の覇権を脅かすのは、歴史上の多くの一強がそうであったように、自分自身である可能性が高いと述べてきた。

実際、トランプ大統領の米国第一主義は、前世紀に米国が積み上げてきた覇権の枠組みを壊しつつある

トルコが最良の実例だ。

トルコは世界で最も親日国の1つだと言われているが、その大きな理由は、日露戦争だ(私の田舎の近くで、トルコの難破船エルトゥールル号を救助したことも親日に貢献したとされる)。

トルコの、南下政策を採るロシアへの警戒感は強く、NATOへの加盟もそれが理由だった。

そのトルコが、クルド問題以降、ロシアとの関係を深めている

Next: 勝者「米国」が書き換えてきた歴史。それをトランプが放棄して孤立する?



米国の覇権を脅かすのは「米国自身」

米国の覇権に限らず、帝国主義や植民地支配は、主に諜報と凋落によって築き上げられてきたと言っていい。幕末の日本でも同じ試みがなされたが、西郷隆盛と勝海舟による無血開城により、日本は付け込むすきを与えなかった。

米国のNATOの東への拡大も、東に拡大しないと確約してソ連の解体を促し、その後は、凋落やクーデターによって、内部から東側を切り崩していった。そのために、軍事援助を含む、莫大な支援を行ってきた。そして、軍事的な侵攻を行う時は、必ず同盟国を募り、正義のための戦いだとしてきた。

勝てば官軍は、米国にも当てはまる。第二次大戦以降、米国が行ったすべての戦争は、唯一の例外を除き、民主主義の擁護、世界の警察としての戦いだった。

ベトナム戦争が唯一の例外となったのは、米国が負けたからだ。これだけが侵略戦争だとされた。歴史は勝者が書き換えるものなのだ。

国際機関も米国の世界覇権の隠れた道具だった。これは経済政策も同じで、プラザ合意BIS規制も、自国を有利にするために使ってきた。

これらのすべてを、トランプ大統領は放棄し、孤立しようとしている

「ドル覇権」を終わらせるのも米国

ドルの覇権も同様だ。

ドルは世界一の経済国、市場、政治力、軍事力の通貨として、絶対的な流動性を誇ってきた。流動性は、安定、安全、便利という、通貨としての本質的な価値を持つので、常に新たな流動性を引き込む力がある。

一旦、覇権を確立すると、他の通貨がどんなに攻めても、その優位性は揺るがない

ここでも、ドルの覇権を揺るがせるのは、米国自身だけなのだ。

貿易戦争や、様々な経済制裁を通じて、少しずつ、ドルは使いづらい通貨になっている

Next: 人口こそ武器。中国・インドがドルを捨てたら米国は…



中国・インドを敵に回して、米国は生きていけるのか?

市場を形成する根っこの根っこは、ヒトだということを鑑みれば、人口の重みを軽く見るべきではない

以下の人口上位20カ国の何億人、何兆人を米国は敵に回して、覇権が維持できると見ているのだろうか?

<人口上位20カ国>

1位:中国 13億9008万人
2位:インド 13億1690万人
3位:アメリカ 3億2589万人
4位:インドネシア 2億6199万人
5位:ブラジル 2億0768万人
6位:パキスタン 1億9726万人
7位:ナイジェリア 1億8869万人
8位:バングラデシュ 1億6319万人
9位:ロシア 1億4399万人
10位:日本 1億2675万人
11位:メキシコ 1億2352万人
12位:フィリピン 1億0531万人
13位:エジプト 9480万人
14位:ベトナム 9364万人
15位:エチオピア 9266万人
16位:コンゴ(旧ザイール) 8665万人
17位:ドイツ 8271万人
18位:イラン 8142万人
19位:トルコ 8081万人
20位:タイ 6910万人

仮に中国とインドがドルを使わずに、お互いの通貨だけを使い始めたなら、ドルの覇権はいつまでも続かないのではないか?

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・Q&A:スリッページ・リスク(8/16)
・失われつつある米国の信用と「覇権」(8/15)
・利上げで、リラ安が止まるか?(8/14)
・米国の矛先が、今度はトルコに(8/13)
・ドイツはユーロで得しただけではない(8/13)
・仮想通貨のカストディ?(8/9)
・イーロン・マスク、証券取引法違反か?(8/8)
・真似のできない、負けない方法(8/7)
・環境規制のコスト、気候変動のコスト(8/6)
・好景気の陰で、痛む米国の大衆(8/2)
・Q&A:出来高を見ず、チャートで判断しています(8/1)
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相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』(2018年8月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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