金融商品には、複雑な組み合わせで作られたものが多数あります。購入するにあたっては、その内容やメリットデメリットをしっかりと理解する必要があるのです。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
金融商品を買うときは、まず「源流」から考えてみる
投資信託や保険などの金融商品は何からできている?
金融商品には必ず源流があります。
たとえば株式投信の源流は株式ですし、債券型投信の源流は債券そのものです。源流に近いモノほどコストが安くて済み、逆に源流から遠ざかるほど、私たちが負担するコストは膨らみます。
たとえば「豪ドル建ての一時払い生命保険」について、少し考えてみましょう。この手の商品は豪ドルで最初にまとめて支払うと、例えば一定の据え置き期間のあと、毎年一定額の保険金が豪ドルでもらえるというタイプの保険です。
保険会社によってさまざまな工夫がされていますが、大筋では大差はありません。
この豪ドル建て保険の源流は、オーストラリア政府などが発行する超長期国債です。株や社債などを組み込めば、もっと高い収益率を加入者に約束できますが、逆に元本を割り込んだり、破綻するリスクが出てきます。ですから破綻する可能性が最も低い、国債が投資対象になるわけです。
ではこの保険のコスト構造は、どうなっているのでしょう。仮に組み入れたオーストラリア国債の利率が、年あたり4%だったとすればどうでしょう。もちろんこの生命保険の加入者は、まるまる4%の収益を得ることはできません。
たとえば、保険会社で働く従業員のお給料や社会保険料、保険会社が支払う水道光熱費や立派なオフィスの賃借料、宣伝広告費…これらを支払ったうえで、さらに保険会社の利益も確保しなければなりません。
保険などの種類によっては、源流の段階数も変化する
この保険が保有している国債の利息から、このような経費や利益など差し引いた残りが、保険契約者に支払われることになるわけです。それでもこのような外貨建て一時払い保険はまだマシなほうで、例えば変額年金保険の場合はもっと源流から離れています。
変額年金保険は投資信託の集合体で、保険加入者はその集合体に投資するという構図ですが、その投資信託ですら源流ではありません。投資信託は株や債券などを組み入れていますので、源流をたどれば「株や債券」に行き着きます。
つまり加入者から見ると、源流である「株や債券」たどり着くまでに、「加入者」⇒「変額年金保険」⇒「投資信託」⇒「株や債券」という具合に3階層もさかのぼらなくてはなりません。
これに対し先ほどの豪ドル保険の場合は「加入者」⇒「豪ドル保険」⇒「オーストラリア国債」でしたので、さらに階層が一つ増えた勘定です。
あたりまえのことではが、階層が一つ加わるごと、そこに携わる会社が一つ増えますので、私たちが負担するコストは増えます。
Next: 川下にある金融商品が必ずしも不利ではない理由
コストの支払いを避けるため、源流を求めるのは正解なのか
もし皆さんがこのようなコストの支払いを避けたいとお考えなら、源流に近い金融商品を買うしかありません。
つまり保険経由ではなく、直接株や国債を買うという方法です。そうすれば、皆さんと株や国債のあいだにはなにも挟まっておらず、そこから得られる収益はすべて皆さんのものです。たしかにこの方法はとても有利なようにも見えますが、それでもいくつか注意点があります。
たとえばオーストラリア国債やアメリカ国債を直接買う場合、そもそもどこで買えるのか調べなくてはなりません。
このような販売手数料が小さな金融商品を、勧めてくれる親切な金融機関はないからです。仮に皆さんが証券会社や銀行の窓口に行って、「アメリカ国債を買いたいのですが」と申し出ても、外貨建て保険や債券型投信を勧められるのがオチです。
仮に運よく買う方法を見つけたとしても、数ある銘柄のうちどれを買えばいいのか、ご自分で判断しなくてはなりません。
「源流の金融商品を買う」と言うのは簡単ですが、結構手間はかかります。
手間だけの問題ではありません。生命保険の場合、例えば加入者がお亡くなりになった際、あらかじめ指定しておいた受取人に対し、受け取人の申請だけで速やかに保険金は支払われます。これに対し国債の場合はどうでしょう。口座名義人の死亡によって口座は凍結されますし、相続人の口座に移管する際に、遺産分割協議はじめ、さまざまな相続手続きを経なければなりません。
ですから、外貨建て生保や変額年金保険など、川下にある金融商品を、あながち「高コストで不利な商品」と頭から否定してしまうべきではありません。要は上記のような生命保険の高いコストを理解したうえ、それでも購入すべきか否か…そこを冷静に考える姿勢が必要ではないかと思います。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年10月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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