相続税対策はきちんと進めていますか?十分な余裕を持っておかないと、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。今回はその事例のひとつを紹介します。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
安易な節税によって人間関係が壊れる事例
不動産を活用すれば、相続税をかなり節税できる
不動産は相続税の節税に有効で、都内の投資用マンションの場合、相続税の評価額を1/3程度に減らすことができます。
例えばAさんが2億円の現金を保有して亡くなった場合、現金2億円はそのまま相続財産として評価されます。しかし、Aさんが生前に投資用マンションを買っておられたらどうでしょう。
この場合Aさんの相続財産の評価額を、6,700万円ほどに圧縮することができる計算です。
・2億円×1/3≒6,700万円
さらに相続税の計算にあたっては、以下のような基礎控除もあります。
3,000万円+(法廷相続人の数×600万円)
仮にAさんに奥様とお子さん3人、Bさん、Cさん、Dさんがいれば、基礎控除は5,400万円です。
3,000万円+(600万円×4)=5,400万円
ですから仮にAさんが、2億円すべてで投資用マンションを買っていたとすれば、基礎控除後の相続税評価額をわずか1,300万円まで減らすことができるわけです。
6,700万円-5,400万円=1,300万円
ただし不動産購入のタイミングには十分な注意が必要です。
よく問題になるのは被相続人がお亡くなりになる直前に、駆け込み的におこなう不動産の購入です。上記の事例にあてはめると、たとえばAさんがお亡くなりになる数日前に、不動産購入の契約を行うといったケースです。
もちろんお亡くなりになる前は一般に意思能力がなく、通常Aさん自らが不動産の購入契約を行うことはありません。
たいがいの場合Aさんの子であるBさんなどが主導して、この節税プランを実行に移すことになります。
このような相続直前の投資用不動産購入は、脱税を目的とした仮装隠ぺい行為とされ、不動産ではなく現金で2億円を相続したとみなされます。
Next: 脱税だと思われないためには、どのような準備が必要?
安易な節税対策は、兄弟が仲たがいをする元に
そしてもし税務当局から指摘を受けた場合、修正申告を行い重加算税とともに納税しなくてはなりません。
それだけではありません。上記修正申告の結果増えた税金は、本件を主導した長男のBさんだけが払えばすむというわけにはゆきません。
Bさんとともに相続したご兄弟CさんDさん、それに奥さんにも按分され、それぞれが重加算税とともに税金を支払わなければならないのです。
Bさんのご兄弟からすれば納得できないでしょう。
長男Bが連れてきた税理士の勧めで行った安易な節税のせいで、自分たちまで重加算税を支払うハメになるわけですから。
このようなもめごとをきっかけに、兄弟が仲たがいしてしまう事例を耳にすることがあります。
税理士さんも様々ですが、もし相続税対策と称し相続直前の不動産購入を勧めるようなら、注意して付き合ったほうがいいでしょう。
ちなみに直前がだめなら、「亡くなるどの程度前の購入なら問題ないのか」という質問を時々受けます。
この点に関し当局は明確に示しているわけではありませんが、亡くなる3年ほど前を一つの基準に置いているようです。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年11月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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