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遺言書の作成にはどれくらいの時間が必要?後悔しないために考えておくべきこと=山田和美

年の瀬も近づき、年内に遺言書の作成を済ませたいという相談が増えています。しかし、大切な遺言書を急いで作るのはむずかしいもの。その理由を解説します。(『こころをつなぐ、相続のハナシ』山田和美)

プロフィール:山田和美(やまだかずみ)
1986年愛知県稲沢市生まれ。行政書士、なごみ行政書士事務所所長。大学では心理学を学び、在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナー、個人情報保護士等の資格を取得。名古屋市内のコンサルファームに入社し、相続手続の綜合コンサルに従事。その後事業承継コンサルタント・経営計画策定サポートの部署を経て、2014年愛知県一宮市にてなごみ行政書士事務所を開業。

遺言書作成までにかかる期間は、最短で7日、最長は10か月と様々

作成にかかる期間は平均で1~2か月程度

年末も近づき、今年中に何とか遺言書を作っておきたい、というご相談も増えてきました。

そこで今回は、遺言書作成のご相談から実際に公正証書遺言完成までのスケジュールについて、お伝えしようと思います。

さて、遺言書作成のご依頼から、完成するまでは、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。

このような質問は結構頂くのですが、正直なところ、この回答は「ケースバイケース」です。まず、弊所にご依頼頂いた場合の平均的な作成までの期間は、概ね1か月から2か月程度です。

ご依頼後、作成までにお会いする回数に現在は特に制限は設けていませんが、だいたい、3~4回面談をするケースが多いように思います。とは言え、これはあくまでも平均的な話。

実際に私がサポートをしたケースで言えば、最短記録は7日。最長記録は、10か月ほどです。

かなり違いがありますね。

これは決して、例えば資産の多寡で優先順位に差をつけたとか、私の業務が忙しくて放置をしたとか、そういうことではありません。

かかる期間は、ご本人がどれだけ内容に悩んだかに左右

実は、「7日」のお客様は医師から余命宣告をされており、一刻を争う状態でした。

そのため、公正証書遺言を作成するのに必須である公証人にも無理を言い、必要書類も最低限にとどめ、実現できたものです。

さらに、内容はご相談時に既にご本人の中で明確に決まっており、そこに特段法的な問題も見られなかったため、特急での作成に至りました。

一方、約10か月かかった方は、かなり内容について悩まれていた方でした。

相続や遺言の話は、ある一つを触ると、別の箇所に問題が生じることがあります。

この方は、できるだけ兄弟平等にしたいという想いが強く、さらにできるだけ税金も下げたいとの想いもあり、さらにその他諸々のお考えもあったことから、

その一つ一つをご本人の中で納得され、そのうえで別のケースも検討したい、とお考えでした。

そのため、かなり多くの回数をお会いして、長くにわたり内容を吟味され、作成に至ったケースです。

7日のケースは少々例外的だとしても、遺言書作成までにかかる期間は、結局のところ、「ご本人様がどれだけ悩まれたいか」に最も左右されます。

つまり、「遺言書の内容として、どれだけ選択肢があるのか」によって、大きく異なるのです。

Next: 内容によっては遺言書作成に時間がかかってしまう、その理由とは…



焦って結論を出すのではなく、必要に応じた吟味を

当メールマガジンでも何度もお伝えしているように、問題のない遺言書を作成するのは、決して簡単なことではありません。

もちろん、ご本人の想いが最も重要なわけですが、想いのままに考えた内容では、その想いが実現できないケースは多々存在します。

その理由は、例えば遺留分であったり、例えば手続きの問題であったり、例えば税金の問題であったりと、内容や法定相続人の構成によって複合的に絡んできます。

問題のない遺言書を作成するためには、これらの問題を一つ一つ吟味する必要があるのです。

当然、情報がなければ判断しようがありませんから、様々な選択肢や、選択肢ごとのリスクも提示していきます。

ただし、そのメリットデメリットを踏まえて最終的に結論を出すのは、あくまでも遺言者様ご本人です。

ここを、どれだけ悩まれるかで、ゴールまでの期間が自ずと異なってくるわけです。

年内中に作成したいなど、区切りまでに作成したお気持ちも非常にわかります。

とは言え、遺言書は非常に「重い」書類ですから、焦って結論を出してしまうのではなく、必要に応じて吟味する期間も必要なのではないでしょうか。

遺言書作成までにかかる「期間」について、参考になれば幸いです。

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こころをつなぐ、相続のハナシ』(2018年12月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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