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金融危機が訪れる前に株を売っておきたい!そんなときに本当に必要な備えとは=田中徹郎

世界経済の先行きが危ぶまれる昨今、「株を売っておきたい」という相談が増えています。世界的金融危機に向けて、どのような準備をしておくべきなのでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

自らの暴落予想に振り回される個人投資家たち

株価が暴落しそうなので、持ち株を全部売っておきたい!

最近のように世界経済の先行きに黄色信号が点りますと、必ず受ける質問があります。

近々大規模な金融危機が発生して株価が暴落しそうなので、いったん持ち株を全部売っておきたいのですが、田中さんはどうお考えになりますか?』

お気持ちはよくわかります。

来年の世界経済はどう考えても明るくはありません

年明けて3月には米中間の「90日協議」の期限が参ります、万一交渉決裂となれば株価に与える影響は計り知れません。

さらに同月末にはイギリスのEU離脱が予定させており、このまま行けばハードブレグジットとなり、世界経済はイギリス発の大混乱となりかねません。

来年後半はトランプ減税の効果が薄れ、長らく続いたアメリカの景気拡大に終止符が打たれる可能性があります。

中国経済の成長は既に鈍化しましたが、さらに循環的な景気の下降局面に入りつつある様子がうかがえ、どう考えても来年の中国経済は明るいようには見えません。

世界経済を危ぶまれる出来事はこれまでにいくつもあった

先行きがこのような状況ですので、冒頭の方のようにリーマン・ショックの再来を予想し、持ち株を全部売ってしまいたいというお気持ちは、僕にもよくわかるのです。

ただし、このように厳しい環境は今に限ったことではありません。

リーマン・ショック以降だけを振り返っても、例えば

・ギリシャ危機
・欧州債務危機
・中国による人民元切り下げショック
・アルゼンチンやベネズエラ、トルコなど新興国不安
・北朝鮮による核実験等による軍事的緊張

など、世界経済を危うくしかねない出来事は何度も起きています。もちろん向こう数カ月のうちに大きな経済ショックが起きないとは言い切れませんが、それをあらかじめ予想するのは至難の業です。

第一あらかじめ予想できるようなら、それを金融危機と呼べるでしょうか。

その場合、危機の芽は徐々に経済に織り込まれ、経済はソフトランディングすることになるはずです。

つまり突然襲ってくるのが金融危機であり、事前に予想して備えることは不可能だと僕は思うわけです。

でも金融危機は何年かに一度必ずやってきますので、私たちは無防備でいるわけにはゆきません。

Next: 何年かに一度訪れる金融危機に、どのような備えをするべき?



突然襲ってくる金融ショックに、日ごろからの備えを

では私たちは突然襲ってくる金融ショックに、どのように備えればよいのでしょうか。金融ショックを予知できないとすれば、日ごろから備えておくしか手はありません。つまり資産の質的かつ地理的な分散です。

ただし、むやみに分散しておけばいいというわけではありません。

たとえばリーマン・ショック時を振り返ってみるとどうでしょう。もちろん株は先進国、新興国問わず下げましたが、下げたのは株だけではありませんでした。

危機の震源地が債券だっただけに、特に格付けの低い高利回り債は軒並み売られました、なかには値がつかず売るに売れない債券もありました。低格付け債を組み込んだ投信も大きな被害を受けましたし、ヘッジファンドの中にも大きく下げたものや、解約停止に追い込まれる銘柄もありました。

株や債券ばかりではありません。原油をはじめエネルギー関連のコモディティも大きく売られましたし、質への逃避から新興国や資源国の通貨も大きく売られてしまいました。

このように大半の証券化商品(言い換えれば「ペーパーアセット」)は暴落しましたので、その中での分散はほとんど意味を持たなかったといえるでしょう。

ただし世界中のあらゆる資産が値を下げたかいえば、決してそうではありませんでした。

金融ショックには、現物資産が体制がある

例えば金です。ショック直後の2008年10月こそ少し売られましたが、はやくも翌月から反転して上げ始めました。

一般にはあまり知られてはいませんが、当メルマガで時々お話しするアンティーク・コインやカラーストーンなどは、2008年も値を上げたほどです。

日本の不動産は2007年~2008年にかけて売られましたが、株や高利回り債などに比べると影響は軽微でした。

つまりおしなべて現物資産は、リーマン・ショックへの強い耐性を持っていたといえるでしょう。

このことから現物資産は、金融ショックに耐性があるといってさしつかえないと僕は思います。

繰り返しになりますが私たちに予知能力がないとすれば、日ごろから手持ちの資産を分散しておくしか手はありません。

私たちは前回のショック時に得た経験を、生かすべきではないでしょうか。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年12月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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