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私の独善的「新聞の読み方」/東京五輪、2020年と1964年の違い=山崎和邦

「独善的かもしれないが、私は新聞やテレビのニュースに接するときこのことを念頭に置くことにしている」――今回は特別編として、山崎和邦流「新聞・テレビの読み方、見方」をご紹介。また、東京オリンピックの2020年と1964年における「経済効果」の違いについても解説します。

山崎和邦 週報『投機の流儀』vol.179 2015/11/08号より、マネーボイス編集部にて再構成

私の独善的「新聞・テレビの読み方、見方」

独善的かもしれないが、私は新聞やテレビのニュースに接するとき、下記のことを念頭に置くことにしている。

1:「わかった記事」は重視しない

「何々ということがわかった」という書き方の記事は必ずしも重視しない。誰がわかったのか。記者自身か新聞社か?どこから分かったのか、どう調べて分かったのか?明らかでないからだ。

2:「なり注記事」も重視しない

(株価などの)なりゆきを注意深く見まもりたい、“なり”ゆきを“注”視すべきだ、といった結びの記事。これも重視しない。注視してどうしようと言うのか。これなどは「お前に言われなくも俺の方で注視してるよ」と言いたくなる。

3:「記名入り記事」は「無記名記事」に勝る

記名入り記事こそジャーナリストの文章である。無記名記事の価値は低い。

4:「社説」は当該新聞社の会社としての意見だから無記名でよい

経団連新聞等と揶揄されることもある日経新聞だが、ときに共産党員が書いたかとさえ思える社説がある。そこが日経新聞の善さでもある。

5:「ジャーナリスト」とは

ジャーナリストとは自分で取材したものを語ったり書いたりする人を言う。そこが評論家との違いである。

6:「評論家」とは

自分では取材せず、人様が取材したものを寄せ集め継ぎはぎして書いたり語ったりする人を「評論家」と言い、筆者の心中ではジャーナリストより地位は低い。

7:「キャスター」とは

ベテランのジャーナリストのうち、記事の価値の軽重を決めたり取捨選択したりする権能を持つものを「キャスター」と言う。したがって、例えば『報道ステーション』の古館氏はジャーナリストではないし、ましてやキャスターでもなく強いて言えば単なる「司会者」である。

8:「司会者」とは

結婚披露宴の司会者が喋りすぎると「この場の主役は新郎新婦だからお前は少々静かにしていろ」と言いたくなって不愉快になる。『報道ステーション』は当日の最後のニュース番組だから録画しておいて飛ばしながら早見することにしているが、司会者の古館氏がなんとなく騒々しくて不快なのはその例であろう。

彼はジャーナリストではないし、故にキャスターでもないはずなのだが、司会者としての役割を越えて喋りすぎる。しかも浅はかなことを喋りすぎるから不快なのであろう。新聞・雑誌は嫌なら読まねばいいから問題ないが、テレビは時間を浪費されるから不快である。一方、NHK日曜討論の司会者に全く嫌味がないのは古館氏と違って司会者の役に徹しているからであろう。

9:「新聞社の中立」というものはない

左から右に、敢えて序列するとこうなろう。朝日・毎日・東京・読売・産経。

日経は「経団連新聞」だから中立ではないし左でもないし右でもない。

新聞社の中立というものはないにも関わらず、「中立性」を装っている新聞は見苦しい。その点ではむしろ、日本共産党機関紙の「赤旗」や創価学会機関紙の「聖教新聞」のほうが旗幟鮮明だから爽やかで清々しい。

Next: 東京五輪、2020年と1964年における「経済効果」の違いとは?


山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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東京五輪、2020年と1964年における「経済効果」の違い

1964(昭和39)年の東京五輪では、株価はその3年前の1961(昭和36)年7月に大天井を付け、再びその大天井を抜くのに7年を要した。

当時、五輪景気というものはなかった。所得倍増計画による高度成長を先取りして大天井を付けた東証ダウ平均(現在の日経平均)は、その後「昭和40年不況」と呼ばれた大型企業の連続倒産と株価暴落へ向かう。1,829円の大天井から1965(昭和40)年の安値1,020円に至るプロセスの最中だった。

当時、財政出動の効果はGDPの規模から見て3倍くらいになって効いたであろう。筆者が学生時代(1960年頃)、マクロ経済学の時間に算出した数字で財政出動のGDPに及ぼす効果(これがケインズの「乗数効果」)は5倍くらいだったから、64年五輪の頃は3~4倍ではなかったろうか。

ご存知の通りこの乗数効果の乗数は「1÷(1-限界消費性向)」だから、経済規模が大きくなるにつれて限界消費性向は小さくなっていき、乗数の値そのものは小さくなっていくという筋合いのものだ。今では1.2倍くらいと想定される。

今の中国人による「爆買い」は大いに消費に効いているはずだが、GDPの6割を占める消費には乗数が掛らない。2020年に向けた五輪景気も消費には効くだろうが大きな経済効果はない

東京五輪が決まった直後に東京都が五輪効果を試算したら、あまりの小ささに皆が拍子抜けした、それ以降は五輪の経済効果は話題にされなくなった。経済全体を浮揚させる効果よりも五輪の後の施設維持費、メンテナンス費用の負担が掛かる危険性が高い。

古代ローマが衰亡したのはゲルマン民族の侵入によるよりも、至る所に建造した国立闘技場、国立大浴場、国立水道橋等のメンテナンス費用に農業経済国では耐えきれなかったことによるという。グレン・ハバード著『なぜ大国は衰亡するのか』における、経済が疲弊し文化も衰弱、士気も衰弱、結果的に軍事力も衰弱して衰亡に至る、このような経済力の衰亡が大国を衰亡させるのだという説は卓見だと思う。

これを考えもせず、単純に建築デザインから始めるという幼稚な計画は最初から間違っていた。文科相たるものがこの程度の基礎的見識すらなかったのだから辞任して当然だったが、森元首相ごとき不見識な人に大役を割り当てたことも大いに間違っていよう。

翻って64年の頃は、筆者の記憶違いでなければ与謝野鉄幹・晶子の子息である秀才が五輪大会のリーダーシップを執った(編注:与謝野馨元財務相の父で外交官の与謝野秀氏は1964年東京オリンピック大会組織委員会事務総長を務めた)。

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