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はじめての「タイ不動産投資」で損をしないための考え方~物件購入から賃貸、売却まで

皆様はじめまして!今回からマネーボイスで『アジア不動産投資はじめの一歩』を連載することになりました、ASEAN不動産研究所の田中圭介と申します。

簡単に自己紹介をさせていただきます。私は兵庫県生まれの36歳、大手不動産ポータル『HOME’S』で営業責任者を5年ほど務めた後、2011年タイに渡り、現地法人や現地不動産ポータルサイトなどの立ち上げを行った経験があります。現在は、株式会社エイリック代表取締役兼ASEAN不動産投資研究所所長としてアセアン各国を飛び回り、「足で稼いだ」最新の現地不動産情報を投資家の皆様にご提供しています。何卒よろしくお願いいたします!

さて初回は「タイ特集」ということで、タイの不動産を理解するために重要となる4つのポイントをお届けいたします。

「借りるとかどうでもいいから、投資のほうを書いてくれ」というお声もあるのですが、賃貸も絶対理解しておいたほうがいいです。これは日本の不動産投資でも同じです。利回りはあくまで結果論。入居者をきちんと見つけるまでの過程を見ておかないといけません。

まずは基本となる「タイの不動産賃貸」事情

いろいろあります!日本との違い

まずは「タイの不動産賃貸」についてです。

タイという国は親日国であり、仏教に根ざした倫理観を持っているため、日本とのつながりは非常に深いです。事実、60年以上前からTOYOTAがタイに工場を作り、今や自動車産業の一大集積地になっています。

2015年末にASEAN経済共同体(AEC)統合という大きな出来事があるわけですが、やはりタイはメコン流域国の中でダントツの存在感を見せることでしょう。より多くの日本人が仕事でタイに来られると想定されます。

さて、そんなタイですが、家を借りる時は日本と違い、いろいろと苦労させられるかもしれません。

簡単に日本とタイの違いをまとめると……

(1)日本では不動産を扱う場合(賃貸も売買も)宅建免許を持つ企業が対応、重要事項説明は必ず取引主任者が対応しなければいけないが、タイでは免許がなく契約書がすべて

(2)礼金という考え方はなく、デポジットという、いわゆる敷金のみ前払いする(前家賃1ヶ月分を先に支払うこともあるが、ルールではないので交渉)。デポジットは引越し時にはクリーニング代等を引かれて返却される。

(3)契約期間は1年が普通(日本は2年)。ただし、退去時は契約に従って支払うが、だいたい1年未満での解約は残りの契約期間分の家賃を支払う必要がある。

(4)基本的に家具はすべて揃っている。ベッドカバーや枕などは自分で購入する必要があるが、日本からの引っ越しでテレビや冷蔵庫といった大きなものは基本的に不要。

(5)よくある話だが、良い物件は1年ごとに家賃が簡単に上がる(ひどい話だと1.5倍に上がる所も)。逆にボロボロの物件の場合、交渉次第では家賃が下がることもある(それくらい物件の質が違う)。

上記以外にも細かいところで違いはあるのですが、基本「交渉」です。なんでもかんでも交渉です(これはASEAN全体に言えることです)。

このあたりの交渉は日系の不動産会社が対応してくれます。ただし、注意して欲しいのは、日系の不動産会社でも最低家賃というものがあります。例えば、日本円で3万円程度の家賃に住みたいとなれば、日系の不動産会社は基本的に対応してくれません。

理由は簡単で儲からないからです。もちろん対応してくれる企業もあると思いますが、かなり希少です。私もタイで不動産仲介の仕事を経験しましたが、動けば動くほど赤字です。正直やれません。

そういう人はどうするか?もう現地タイ人の友人に頼む、物件に直接行って交渉、というのがほとんどです(かくいう私も最初は自らの足でアパートに行き、英語が通じない中、筆談で交渉して、家賃1.5万円/月の所に半年住んでいました)。

言葉が話せないというのはなかなかつらいですね。

タイで家を借りて住む、というのはお金があれば最高なんですが、お金がない、となれば、割と苦労を強いられます(慣れれば天国なんですけどねw)。

さて、以上のタイ不動産賃貸の基本を踏まえ、次ページではタイの不動産売買(新築・プレビルド)についてお話ししましょう。

Next: 果たして儲かるのか?タイの不動産売買(新築・プレビルド編)


田中 圭介(たなか けいすけ)

株式会社エイリック代表取締役兼ASEAN不動産投資研究所所長。1979年兵庫県生まれ。関西学院大学経済学部卒業。新卒で外資系製薬メーカーに入社後、大手不動産ポータル『HOME’S』に転じ営業責任者を5年以上経験。2011年にはタイに渡り現地法人、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた。現在は在タイ時からの豊富な人脈と持ち前のフットワークを生かしてアセアン各国を飛び回り、「足で稼いだ」最新の現地不動産情報を投資家に提供している。

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タイの不動産売買(新築・プレビルド編)

果たしてプレビルド投資は儲かるのか?

さて、賃貸の重要性も理解していただいたうえで、早速、タイの新築物件の状況をお届けします。

まずはタイの新築事情です。詳しい数字は公表できませんが、タイにおける居住用のコンドミニアム・新築戸建てのプロジェクト数はだいたい年間2,000~2,500プロジェクトを推移しています。

ユニット数(戸数)でいうと45~50万戸という状況です。

ちなみに日本の住宅着工戸数は約100万戸です(5年前に100万戸を切りましたが、全体感としては回復傾向にあります)。タイは人口が日本の半分、一人当たりGDPは5分の1~6分の1ですが、日本は世界でも稀に見る「新築大好き国家」ですから、単純に比較するのは危険です。

さて、この年間50万戸という数字、実はエリアによってかなりばらつきがあります。

例えば、バンコク中心部となると土地が少なくなってきているせいか新しい物件が少ないです。なので、すぐに完売、もしくは90%以上が即完という世界です。こればっかりは、現地でその販売状況を見ていないと実感しにくいかもしれません。

この記事は物件販売を目的としておらず、あくまで情報提供に徹しておりますので、詳細はなかなかお伝えしづらいですが、バンコクの新築コンドミニアムの販売状況は非常にアグレッシブであるということだけお伝えしたいと思います。

例を挙げると、2年ほど前の話ですが、ある物件では予約券がネットオークションで3倍の値がついたことがあります。

タイで新築物件を購入する時は以下のような支払い方が多いので、頭の片隅にでも入れておいてください。

  1. 手付けを入れる(だいたい10~30万円)
  2. 契約書+頭金振り込み(だいたい全体の30%)
  3. 物件完成までダウンペイメントで支払い(平均2~3年)

この(1)の部分、いわゆる手付金=予約という形ですね(ちなみに手付けを入れて、購入キャンセルになった場合はお金は返ってきません)。この手付けの領収書がネットオークションで売り出され、3倍の値段がついたわけです。

なぜそんなことが起きたか?

理由は単純で、物件価格が値上がりするからです(当然100%ではありません)。

バンコクの新築コンドミニアムは、プレビルド段階の価格から竣工時の価格までで平均して120~150%値上がりする物件が多いです(何度も書きますが、100%値上がりするわけではありません)。

プレビルド発売時は80%までを第1期として販売して、残りの20%をゆっくり値上げしていって売るというスタイルが多いです。日本では考えられませんね。しかし現地では当たり前の光景です。

デベロッパー側が意図的に価格を吊り上げているのです。そのため、バンコクの不動産価格が上がっているのです。

ではバブルではないか?とお思いかもしれませんが、税金や管理費などが安いタイでは、いわゆる富裕層がキャッシュで、しかもバルクで購入していきます。ローンでレバレッジを効かせて、という手法ではないことと、実体経済の伸びに対しても価格はまだ手頃というのが現地デベロッパーの見立てになっています。

では、果たしてプレビルド投資は儲かるのか?

答えは出口戦略の持って行き方次第というのが答えです。

私もプレビルド物件を購入されて、売却された方のお手伝いを何件かしたことがありますが、結果としては、15~20%の値上がり、というのは事実ですが、そこまでに使った経費(仲介手数料や各種税金、渡航費等)をあわせてトントン、もしくは経費を差し引くと少し儲かった(だいたい3~5%)というのが正直なところです。

あと、10年くらい寝かせてもいいよ、という方は大幅に利益が出ています。損をしました、というのはだいたい地方・郊外の物件です。

そういう意味では、ある程度「固い」投資案件なのかもしれません(実際、私も購入手前まで行っていたのですが突然の帰国命令で断念しました……)。

が、油断は禁物です。必ず信頼できる不動産会社、ならびに情報網を持つことが重要です。ご不安であれば、相談してください。

さて次ページは「タイの不動産売買(中古編)」です。リノベーションで利回りを向上させるような手法はタイでも通用するのでしょうか?

Next: リノベーション物件はどうなっている?タイの不動産売買(中古編)


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タイの不動産売買(中古編)

リノベーション物件はどうなっている?

前ページで解説したプレビルド物件は、正直、良い物件がなかなか出ないというのが本音です。私も探しているのですが、いかんせん価格が高い……。

さて、そこで私も気になっているタイの中古物件のお話です。私は日本で中古物件を持っていまして、賃貸に回しています。リノベーション物件ですね。相場もわかっていますし、あとはやり方だけ、ということで、ありがたい話で借主の方は長年変わらず借りてくれています。

そんな手法がタイでも通用するのか?という思いでいろいろと調べました。その結果は――正直、タイの場合は外国人が中古物件に手を出すほど市場が整備されていない&質が悪い……これが現状です。

しかし、例外もあります。いわゆるリセール物件(新古物件)という形や高級ホテルなどで、これは当然のことながら手を出してOKだと思います。ただし、このような物件はだいたいが割高です(前述の通り、プレビルドから徐々に値を吊り上げていたり、高級ホテルの場合は対象物件の正味価値が判別できるため高めに設定されている)。

とは言っても、安く仕入れてリフォーム&リノベーションして利回りをよくするという日本で通用する手法をあくまでも貫き通したい!という強者がいることも事実です。

ただ必ず下記の前提を確認しておいてください。これが正直なところの実態です。

  1. 物件の質は日本と比較すると悪い
  2. 現地の工事会社も日本と比較するとレベルは低い
  3. 管理・運用も日本と比較すると整備されていない

もちろん高級仕様で作られて、いわゆるビンテージマンションと言われるくらいの物件もあります(総じて割高)。

非居住者が手を出す物件は正直ないですね、私が見てきた中では。何よりも物件の手入れとかではなく、(3)の運用部分が一番怖いです。特に中古物件となると、管理できるイメージが正直ないです。

以前にあった例ですが、中古リノベーション物件を在タイの日本人が購入されて、管理など面倒くさかったので知り合いの会社に任せたそうなのですが、客付けもしてくれないわ、勝手に人を泊まらせるわ、で不動産投資というよりタイ人のマネジメントの方が難しいと愚痴を言われていました。

新築物件であれば売却も視野に入れて、というのがあるのでしょうけど、中古物件の場合はどうしても値段を叩かれてしまいます。

個人的には、タイ非居住者がタイの中古物件を購入するには、

という人くらいしかできないのではないかな、と思っています。それくらい中古の場合トラブルが多いです。もちろん成功している例もありますが、かなり稀と思ってください。あと、セカンドハウスとして購入する場合は上記の限りではありません

万が一、中古物件で良いものがあって、購入を悩んでらっしゃるのであれば、一度ご相談ください。信頼できる現地企業をご紹介できると思います。

と、少しネガティブに書いてしまいましたが、タイの中古物件に手を出すというのは、それくらいの気構えの方が良いかなと思います。

さて次ページはいよいよ「タイの不動産売買(売却編)」です。不動産投資でも株でも何でも「売却」して初めて利益や損失が確定します。タイの不動産における「出口戦略」の考え方とは?

Next: 出口戦略なくして投資の成功なし!タイの不動産売買(売却編)


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タイの不動産売買(売却編)

出口戦略なくして投資の成功なし!

さて、いよいよ「タイの不動産売買(売却編)」です。

賃貸、売買(新築、中古)と書いてきましたが、最後は「売却」です。不動産投資でも株でも何でも「売却」して初めて利益や損失が確定します。

その売却までの戦略をいわゆる「出口戦略」と言うわけですが、タイに限らずどこの国でも非常に重要なことです。

ここでタイでの売却の流れに関して簡単に説明しましょう。

まずは不動産会社に売却の相談をします(タイの場合は不動産取引において免許等が必要ではないので、個人の方が掲示板やポータルサイトに直接掲載するケースもあります)。

物件を受け取った不動産会社は、買い手を探す作業に入ります。掲示板やポータルサイトに掲載、自社が保有している顧客に紹介したり他社に依頼したりと売却活動を開始します。

めでたく買い手が見つかり売却が成立したら、不動産会社に手数料として平均して2~3%を支払います。

そして、日本と決定的に違うのは上述した通り、不動産取引において免許が存在しないので、レインズのような共通のデータベースがなく、また担当者によって「やる気」がかなり違う事です。

不動産会社も人の子ですから、売れそうな物件はやる気が出ます。また広告費やお小遣いをくれるような売り手であればやる気を出します。

このあたりは日本での不動産取引を経験した方からすると不思議で仕方ないと思いますが、基本的に免許がない、ということは誰でも不動産取引ができるということですので、一般的にはタイでは「個人間売買」が主流です。

つまり、不動産売買において「わざわざ不動産会社を通して売却する、購入する」ということをしないお国柄なのです。

ちなみに、日本だと3%+6万円(片手の場合)という上限手数料が法律で定められていますが、タイの商習慣では基本的に買主の手数料は無料です(たまにコンサル料、代理手数料みたいな形で1~2%取る業者もあり)。

だとすると、どこで儲けるんですか?という話なんですが、基本的にタイの不動産仲介会社(特に売買)は、富裕層しか相手にしていない場合がほとんどです。じゃないと、明らかに赤字なわけです。片手商売で、しかも2%前後となれば、1,000万円の物件を決めても売上は20万円だけです。

いくら人件費が安いと言っても、なかなか厳しいわけです。そんな事情があるわけですから、中古物件はかなり厳しいと言わざるを得ないわけです。つまり出口戦略が取りにくいんです。

理論上、土地の価格が上がっていますし、物価も上がっていますので、儲かる要素は非常に多いのですが、実務の部分でつまずく方が非常に多いのがタイの不動産投資です。

このあたりは絶対的に手数料が高くても、信頼できる会社を選んでください。手数料が5%でも値上がりと手間を考えたら十分にペイすると思います。

私が過去見てきた案件では、信頼できる企業を見つけた人が出口に成功しています。手数料が高い、という理由で色々な会社にお願いしている人は、だいたい売却が長引きます。不動産会社からの信頼も得られにくいのでしょう。

ぜひ様々な情報を集めて、購入→運用→売却の流れをスムーズに行けるような、信頼できる企業を見つけてください。

タイについては、またあらためて書くことがあると思いますが、いかんせん、ASEANはタイだけではありませんので、その他の記事も書いていきます。

もっと詳しい話を聞きたい、深掘りしてほしいという方は、ぜひ個別にお会いしてお話しさせていただければと思います。

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田中 圭介(たなか けいすけ)

株式会社エイリック代表取締役兼ASEAN不動産投資研究所所長。1979年兵庫県生まれ。関西学院大学経済学部卒業。新卒で外資系製薬メーカーに入社後、大手不動産ポータル『HOME’S』に転じ営業責任者を5年以上経験。2011年にはタイに渡り現地法人、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた。現在は在タイ時からの豊富な人脈と持ち前のフットワークを生かしてアセアン各国を飛び回り、「足で稼いだ」最新の現地不動産情報を投資家に提供している。

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