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贈与税がかからないケースがあった?年間110万円を超えても大丈夫な条件とは=小櫃麻衣

年間110万円以下の贈与については、非課税となることはご存知でしょう。今回は、年間110万円以上の贈与でも贈与税が発生しないというケースについて解説します。(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)

祖父母が孫の教育費を支払うケースも、両親の場合と同様?

教育費に充てる目的の贈与は非課税で済む

“年間110万円以下の贈与であれば、贈与税は発生しない”というのは、広く知られていることだと思います。

しかし、年間110万円を超える贈与であっても非課税で済むケースがあるというのをご存知でしたでしょうか。

“新たに贈与制度が新設された?”と思うかもしれませんが、そうではありません。

つまりこのケースに該当すれば、贈与の度に税務署に対して必要書類を提出しなければならないといった手間もなく、贈与金額に関係なく無税で済むのです。

どういうことなのか、詳しく説明していきましょう。

例えば、子供に対して大学の入学費用や授業料、その他必要となる教科書代、下宿費用など、1年間で110万円を超える金額を贈与したとしても、贈与税が課税されるでしょうか。

また、離れて暮らす年金暮らしの両親に対して、毎月10万円ずつ、年間120万円を贈与したとしても、贈与税が課税されるでしょうか。

国税局のホームページを見ると、“夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの”については贈与税が発生しないと定義されています。

つまり、生活費や教育費に充てる目的の贈与であれば、年間110万円を超える贈与であっても、非課税で済むというわけです。

この決まりは、最近になって定められたものではなく、昔からこのように取り扱われています。

ここまで聞くと勘の鋭い方は、“教育費を贈与しても無税なのであれば、なぜ教育資金の一括贈与が新設されたの?”と思うことでしょう。

ここで最も重要なポイントになるのは、“一括贈与”というワード。

必要になったその都度に贈与すれば金額の制限はない

年間110万円以上の贈与であっても非課税で済むのは、“生活費や教育費として“必要な都度”直接これらに充てるためのものに限られる”と定義されているのです。

つまり、小学校・中学校・高校・大学入学の“都度”、入学金などの必要資金を贈与する、もしくは塾へ通うことになったため授業料を贈与するといった贈与の仕方であれば、年間110万円の縛りを気にする必要はないのです。

ということは、小学校受験をし、そのままエスカレーターで大学まで進学出来るから、一度にまとめて500万円を贈与しておこうというのは、“その都度”に該当しませんよね。

従って、500万円から年間の非課税枠110万円を引いた390万円に対して贈与税が課税されることになってしまうのです。

簡単にまとめると、教育資金が必要になったその都度、贈与を行い、年間の合計金額が110万円を超えてしまったとしても、それについては贈与税が課税されることはないものの、あらかじめ大学卒業までに必要となる教育資金を贈与しておこうとすると、贈与税が課税されるということ。

ということは、“教育資金の一括贈与”が活躍するのは、後者の“将来かかると思われる教育資金をまとめて贈与するケース”に限られるということなのです。

それでは、孫のために教育資金を贈与したいといったケースでは、どうなるのでしょうか。

“夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの”との定義が存在するため、これに従うと祖父母は扶養義務者に該当せず、年間110万円以上の教育資金の贈与を行ってしまうと贈与税が課税されてしまうのでしょうか。

Next: 孫のために教育資金を贈与する場合、110万円を超えると贈与税がかかる?



扶養義務者の定義には、祖父母も含まれる

通常、祖父母が孫の授業料を負担することになると、孫の口座ではなく、両親の口座に振込み、そこから両親が授業料を支払うことになると思います。

これでは実質、祖父母から両親に対する贈与なのでは?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

ここで整理しておくと、年間110万円以上の贈与であっても非課税となるには、“夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者からの贈与”と定義されています。

扶養義務者の範囲を説明しておくと、民法第877条には、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務があるとあります。

直系血族とは、世代が上下に直線的に連なる血縁者のことを指しますので、当然ながら祖父母も含まれます。

つまり、祖父母による教育資金の贈与であっても、年間110万円の縛りを気にすることなく、贈与が出来るというわけです。

しかし、祖父母が両親の口座に授業料50万円を振り込んだとすると、両親が貯蓄していたお金にプラスされることになるため、その50万円が本当に孫の授業料に使われているのか、分別がつかなくなってしまいますよね。

場合によっては、祖父母の相続時における税務調査で追及されてしまうかもしれません。

税務署はお金の動きに敏感に反応しますので、このように疑われないようにするためにも、祖父母が直接、授業料などの教育資金を支払い、しっかりと“孫の教育資金に使った証拠”を残しておくと良いでしょう。

一括贈与の場合は1,500万円までしか非課税に認められない

さて今回は、年間110万円以上の贈与であっても非課税で済む仕組みについて解説しましたが、このようにその都度行う贈与ではなく、一括でまとめて贈与をしたい場合には、教育資金の一括贈与を活用するなど、ご自身にあった選択を考える必要があります。

教育資金の一括贈与では1,500万円までは非課税となりますが、専用の口座を開設し、いちいち領収証を提出しなければならないといった手間もあります。

また、教育資金の一括贈与で最も気を付けなければならないことは、子供や孫は、1,500万円までしか贈与を受けられないということ。

つまり、母方の祖父母から孫に対して1,500万円の贈与を行ない、さらに父方の祖父母から1,500万円の贈与を行うことは出来ず、双方を合計して1,500万円までしか非課税として認められないのです。

孫に対して教育資金の一括贈与を行おうと思ったら、相手方がすでにこの制度を使っていたというケースも数多く見受けられますので、その点は注意しましょう。

政府は高齢者に対してお金を使ってもらおうと、様々な特例を新設していますが、表面的な情報のみしか把握していないと、後に思わぬ盲点に悩まされることになります。

後に後悔しないためにも、相続制度に詳しい専門家へ相談し、メリットとデメリットの双方を把握した上で、対策を講じるようにしましょう。

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FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2019年1月11日・14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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