米国企業の創業者らが巨額寄付を行うケースが相次いでいますが、これには表裏があります。日産のゴーン前会長も、この方法を取れば様相が変わっていたでしょう。(『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』児島康孝)
本記事は有料メルマガ『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』2019年1月20日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
お金をどう使おうが監視されない?寄付金は、巡り巡って親族へ…
「アメリカは寄付文化」の表裏
米国企業の創業者らが巨額の寄付を行うケースが相次いでいますね。
日本人とは違う、高尚な姿勢と言えるのでしょうか?これには、表裏があるのです。
つまり、慈善財団を設立し、自ら寄付することで、その慈善財団を自由にコントロールできる。そういう側面があるのです。
投資会社と似た活動をしている
実は、慈善団体といっても、すべてボランティア活動ばかりしているのか?というと、これは違うのです。
事実上、いわゆるファミリーオフィスと同じなのです。資産の運用や、ビジネスも行っています。
もちろん、一部で、慈善活動も行います。そして、慈善団体の幹部は、多くの場合、寄付額に応じてポストが配分されます。
つまり、自分の息子や娘、妻などを、慈善団体の重要な役職に配置するのです。
ですから、慈善団体に寄付しても、そのお金は自分のコントロール下にあり、ほとんどが非課税。幹部は、身内。
これが事実上、相続のパターンにも使われています。
ですから、巨額の寄付をしても、それが自分とは全く無関係のところにお金がいく、というわけではないのです。
裏側を知らない人は多い
私は一度、アメリカでまとまった金額の寄付をしたことがあります。しかし、かくいう私も、最初はこの構図をよく知りませんでした。
アメリカで寄付するということは、奥さんや子供に、直接・間接の方法を交えて、事実上、お金が渡っている。そういうことなのです。
ですから、日本の慈善団体への寄付と、アメリカの慈善団体への寄付は、日本人が思っている以上に中身が異なる、ということです。
アメリカの慈善団体が高尚であるのも、1つの真理です。しかし同時に、事実上、財団の近親者へマネーの配布が行われているのも、また1つの真理なのです。
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お金をどう使おうが監視されない
ですから、大きく資産を築いだ企業の創業者らは、慈善団体を設立して巨額の寄付を行うのです。
その慈善団体は、どのような支出を行い、資金の運用委託を行っても、上場企業のようには監視されません。
また、実際の慈善活動も行っているので、社会からは好意的にみられます。
ところで、こうした慈善団体への寄付は、企業にカネを払った客の側に対して行われることもしばしばです。
アメリカの航空会社によっては、キャビンアテンダントが笑顔で寄付を募る光景もみられます。
本来、お客は航空会社にお金を支払ったわけですから、航空会社が寄付をすればよいわけです。しかし、客から代金を受け取って、さらに寄付を求めるということが普通に行われています。
航空会社の場合、寄付先はそれほど私的な慈善団体ではないでしょうが、はたして、その団体の幹部はどうなっているのか…?
「日本人は寄付をしない」と卑下する必要なし
ですから、日本人は寄付をあまりしないと、卑下する必要はありません。
おそらくアメリカでも、全く関係のない慈善団体への寄付は、表向きに比べて、かなり少ないはずです。
ですから、アメリカでは、自分が慈善活動をしてカネを集める側になるのが、事実上「有利」というわけです。
募金箱を持ってお金を集めてまわる側になるのが、ちゃっかりしているということです。
もちろん、高尚な活動は一部であれ行われていますから、全社会でのそのボリュームは大きくなります。それは、それで、良いのでしょう。
しかし、「日本人は寄付しない」という話を真に受けると、ビジネスでお金を支払い、寄付でもお金を支払うという「二重取り」に遭うことになります。
ですから、対応としては、これは奥さんや子供にカネが渡る仕組みだな、とわかったうえで、少額のお付き合いというのが正しいでしょう。
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ゴーン前会長は知らなかった?それともケチった?
日産のゴーン前会長がもしこの方法を本格的に使っていたら、かなり様相が違っていたでしょう。
欧米でビジネスをしていれば知らなかったことはないと思いますが、枠組み作りまでもケチったのか?それとも、枠組みをつくっても、さらに別の利益を求めていたのか?
詳細はよくわかりませんが、私的な「ゴーン財団」などを作って近親者を幹部にすれば…という話ですね。
そして、日産と取引のある企業に、私的な「ゴーン財団」への寄付を求めたらどうでしょうか?
少なからぬ企業が「慈善活動」に協力したでしょう。ビジネスで日産との取引もあるし、ということですね。それで、その私的な財団が、近親者に仕事を発注したら…ということです。
慈善団体ですから、世界各地に「事務所」を持っても、ほぼ問題ありません。
また、日産の車を買った客に「慈善活動」の案内状を送ったらどうなるのか、ということも考えられるでしょう。これも消費者にさらに寄付を求める、いわゆる「二重取り」ですが、知らない日本人の多くは、「二重取り」にも気付かないでしょう。「寄付して、良いことをした」と思って終わりでしょうか?
ですから、欧米の寄付の話は、表裏の両方を知っておく必要があるということです。
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『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』(2019年1月20日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による
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日本に影響を与えてきた欧米勢の勢力図が変化し、国際情勢も激変の時期を迎えています。トランプ政権の前の欧米勢力は、日本の1990年のバブル崩壊以降、日本の衰退を狙ってきました。超長期の経済サイクルである、コンドラチェフ・サイクルが、戦後最悪の大底でもあったことから、日本経済はデフレに陥り、低迷したままであったのです。ところが、トランプ政権の誕生以降、欧米勢の勢力は変化し、日本の今後も、大きく変わろうとしています。このメルマガでは、有料読者に限定して、ちょっと書きにくい話にも踏み込んで、欧米勢の動きをお伝えします。