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日本の財政はほんとうに破綻するのか?正常かそうでないかは市場が決める=田中徹郎

日本の財政が破城するかどうか、さまざまな意見があります。それを決めるのは、いったい誰なのでしょう?経済学者なのか、それともエコノミストなのでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

日本のバランスシートはどこまで膨らみ続けることができるのか

極端なケースでどうなるのかを考えてみる

日本の財政については、さまざまな立場の人がさまざまな意見を述べています。ある人は来年にでも破綻するといいますし、またある人は破綻することはないといいます。果たしてどちらが正しいのでしょう。

この問題について考える場合、極端なケースを想定し、そのようなケースでどうなるのか、考えてみるのも一つの方法ではないでしょうか。

例えば現在の政府の年間収支を仮に
・税収を中心とした歳入⇒70兆円
・年金や医療保険費などを含む歳出の合計⇒100兆円
・現在の公的債務の合計⇒1,100兆円

と考えたうえ、今後は歳入はそのままで変化せず、一方で歳出のみが300兆円に増えてしまうというケースという、極端なケースを想定してみましょう。

あり得ない話ではありますが、このような極端なケースでいったいどうなるのか考えてみることも無駄ではないと思います。

税収は70兆円のままですから、足りない230兆円ぶんは毎年国債を発行しなければなりません。現在の国債発行額は、年あたり30兆円ほどですから、7倍以上も国債を発行する勘定です。もしこのような状態が5年も続けばどうでしょう。

この場合、債務残高は2,250兆円と今の2倍になりますし、10年続くなら3,400兆円で今の3倍ほどです。

・1,100兆円(現在の債務残高)+(5年×230兆円)=2,250兆円
・1,100兆円(現在の債務残高)+(10年×230兆円)=3,400兆円

このような巨額の日本国債をいったい誰が買うのでしょう、日銀以外に…。

今でも日銀による量的・質的緩和によって、年あたり30兆円ほどの国債を日銀は買っており、政府が発行した国債の半分ほどを日銀が買っている形です。

注)2014-2016年は年あたり80兆円ほどの国債を買っていましたが、それ以降は減らしています。

仮に上記のように毎年230兆円の国債を政府が発行するならば、日銀はほぼ同額の国債を買い続けなければならないでしょう。

日銀による国債の購入は、日銀が供給するマネタリーベースによって行われます。
マネタリーベースというのは日銀が印刷する紙幣と日銀当座預金の合計で、まあ大雑把に言えば「日銀が供給するおカネの総量」です。

その結果、日銀のバランスシートはドンドンと増えていってしまいます。

つまりこれは日本政府が国債を際限なく発行し続け、それをほぼ全量日銀が買う構図です。

Next: どのような経済規模であることが正常なのか?



経済規模が正常かどうかは、市場が決める

一方で、経済の規模はほとんど大きくはなりません。

世の中何が正常なのかわかりません。スイスやドイツのように公債の発行残高が、GDPの半分程度に収まっている国が正常なのか。それとも上記ケースのように、国債の発行残高が3,600兆円ある一方で、国全体が一年で稼ぐ価値、すなわちGDPが500~600兆円にとどまる国が正常なのか。

それを決めるのは、エコノミストでもなく学者でもなく、おそらく市場です。

通貨は紙(または電子データ)でできており、もちろんそれそのものに価値はありません。通貨が通貨であり続けられるのは、通貨に対する市場の信認が維持されているからです。

『通貨の信任は、中央銀行によって通貨供給量が適切に管理されていれば維持できる(注)』という考えには僕も賛同しますが、逆にもし通貨供給量が適切に管理できないほど大量の国債を、日銀が購入を余儀なくされたらどうなるでしょう。

注)野口旭著「アベノミクスが変えた日本経済」より一部抜粋、筆者加筆

さきほども申しましたが、何が適切で何が異常なのかを決めるのは、エコノミストや学者ではなく市場です。

上記のケースのようにGDPが600兆円の国が、3,600兆円の国債を発行しているとして、果たしてその国の通貨に対する信認が維持されるでしょうか。

「そんな極端な話しを持ち出して、大げさに煽るな」とお叱りを受けるかもしれせんが、果たしてそう言い切れるでしょうか。

まさか年あたりの歳出が300兆円に膨らむことは無いでしょうが、200兆円ならどうでしょう、200兆円が無いとしても、150兆円ならどうでしょう…。

現在の歳出規模が100兆円強ですから、150兆円ならむこう10年ほどの間にあり得ないとは言い切れません。

つまり極端なケースである歳出300兆円と、現在の100兆円の間のどこかに、日本の近未来の現実があることは間違いありません。

であれば「来年にも日本の財政が破綻する」という極端な説と同様に、「わが国財政の破綻はあり得ない」という説に対しても、私たちは少し疑ってかかる必要があるのではないでしょうか。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2019年1月25日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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