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投資信託と賢くつき合う。簡単!「運用報告書」の読み方、使い方=カン・チュンド

投資信託をしっかり管理するには年間トータルコストの把握が不可欠。そこで去年12月の投信法改正によりさらにコストが把握しやすくなった「運用報告書」の読み方を、投資信託のスペシャリスト、カン・チュンドさんが実例を挙げて分かりやすく解説します。

運用報告書を読みこなし、年間トータルコストをしっかり把握する

投資信託は情報開示の「優等生」

私見ですが、投資信託というツールは、保険商品と比べて5倍くらいの情報開示をしてくれていると思います。特に、数字の部分について、きちんと明示してくれています。

例えばの話、あなたがプルデンシャル生命のドル建て個人年金保険を買った場合、ストライプスーツを着たライフプランナーにいったいどれくらいの「手数料」を払うことになるか、あなたには分かりますか?

いいえ、わかりません

一方、明日のお昼休みに、みずほ銀行に行って、今、いちばん売れ筋の『メディカル・サイエンス・ファンド』(愛称:医療の未来)を行員の人から勧められて買ったら、みずほ銀行さんにいったいどれくらいの手数料を払うことになるのか、あなたには分かりますか?(決してお勧めしているわけではありません。買ってはダメですよ)

はい、分かります!

ちなみに、『メディカル・サイエンス・ファンド』の購入時手数料は3.24%。運用管理費用は年1.944%です。ほら、ちゃんと明示してくれていますよ。(ただし、買ってはダメですが……)

この『メディカル・サイエンス・ファンド』もそうですが、投資信託のコスト体系は、ちゃんとインターネット上で、誰でも無料で見られます。

これって素晴らしいこと。逆の言い方をすると、保険商品の情報開示の姿勢が「いかに遅れているか」という証左です。まるで18世紀的!

昨年12月の投信法改正で、コストがさらに把握しやすく

あっ、すみません。わたくし先ほどの説明で、ちょっと手抜きをしていました……(-_-;)

実は、投資信託を買って、継続的にかかってくるコストは、運用管理費用(信託報酬)だけではありません。

実は、他にもいろいろと継続コストはかかってくるのです。そう、あなたがその投資信託を持ち続けて、1年間でどれくらいの「継続手数料」を払っているかを知るためには、「年間のトータルコスト」をパーセントで知る必要があるのです!

実は、「運用管理費用」+「プラスアルファの諸費用」=「年間トータルコスト」なのですね。

「カンさん、その年間トータルコストって、どこで見るの?」

はい、運用報告書です。運用報告書とは、決算ごとに出される投資信託の「全行動記録のレポート」のことです。

実は私たちにとって嬉しいニュースがありまして、投信法が改正され、去年の12月から運用報告書が2つに分けられたのです。

交付運用報告書」と「運用報告書(全体版)」です。

普通の人は「交付運用報告書」を見るだけで十分だと思いますが、必ず見てくださいよ!私たちが知っておかないといけない年間トータルコストも交付運用報告書にちゃんと載っており、なんとパーセントで確認できるようになりました!

「えー、カンさん。その交付運用報告書って、どこで見るの?」

はい、そのファンドを作っている運用会社さんのサイトです。

Next: 実例をあげて徹底解説!交付運用報告書の読み方、使い方


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実例をあげて徹底解説!交付運用報告書の読み方、使い方

具体例をあげてみましょう。

こちらは『フィデリティ・欧州中小型株・オープン Aコース(為替ヘッジ付き)/Bコース(為替ヘッジなし)』の交付運用報告書[PDF]です。

2ページ目を見ていただくと、「1万口当たりの費用明細」と載っていますね。ここでは、「Aコース(為替ヘッジ付き)」の方を例にあげましょう。

項目 金額 比率
(a)信託報酬 149円 0.748%

というように、ちゃんと金額ベースと比率・パーセントの両方が載っています!これは分かりやすい。

「えっ、でも、カンさん。信託報酬(運用管理費用)0.748%って、安くないですか?これって、アクティブファンドでしょ?」

あっ、失礼……。ココ、皆さん注意してください。当該ファンドは、「6ヶ月に1回、決算を行っている」ファンドです。

ちゃんと、「第38期(2014年12月2日~2015年6月1日)項目の概要」って書いてありますね。すなわち、この0.748%って、「6ヶ月間の数字」なのです。

なので、年率で信託報酬(運用管理費用)をイメージするためには、0.748% ×2=1.496%としないといけません。

実際は、決算日の1万口当たりの値段(基準価格)で信託報酬(運用管理費用)を出しているわけではなく、期中(この場合は6か月間)の、平均の基準価額に基づいて出しているのです。

信託報酬をどう分配したのかも一目でわかる

同資料でもう1つ注目してほしいのは、信託報酬(運用管理費用)の取り分です。

「えっ?信託報酬(運用管理費用)って、運用会社販売会社受託会社(信託銀行)の3社で分け合うのですよね?」

はい、その取り分も、ちゃんと開示してくれています!

項目 金額 比率
(投信会社) (71) (0.356)
(販売会社) (68) (0.343)
(受託会社) (10) (0.049)

いいですか、左側の数字が金額ベース、右が比率・パーセントを示しています。こうして見てみると、販売会社って、けっこう取り分が多いですね(投信会社とは運用会社のことです)。

その他の諸費用もしっかりと明示

さあ、これだけでは終わりませんよ。さらにご覧ください。

項目 金額 比率
(b)売買委託手数料 25 0.127
(株式) (21) (0.103)
(投資信託受益証券) (4) (0.020)
(投資証券) (1) (0.004)

ん?これは、いったい何でしょう?

そうです、投資信託が株式などを売り買いするとき、売買手数料を支払っていますが、あれって全部、私たちファンド保有者が負担しているのですよ!これも左側が金額ベース、右側が比率・パーセントです。

さらに同資料を見ると

項目 金額 比率
(c)有価証券取引税 58 0.289
(d)その他費用 11 0.054

これらも、継続コストとしてかかっています。当該ファンドは、ヨーロッパの株式を組み入れているので、「有価証券取引税」という税金がかかる国もあるのです。

(d)のその他費用には、有価証券の保管や、資金の移転などのための「保管費用」、監査法人に支払う「監査費用」、法定書類の作成・提出等にかかる費用、法律顧問、税務顧問に対する報酬などが含まれています(けっこう、いろいろかかるんだ)。

ファンド保有者が確認すべきはトータルコスト

とにもかくにも、同資料のAコース(為替ヘッジ付き)で確認すべきは以下のところです。

合計 243 1.217

そう、この合計こそが「トータルコスト」という意味。243円、1.217%ですね。1.217%×2=2.434%ですから、なんと、当該ファンドAコース(為替ヘッジ付き)は、年間で2.434%のトータルコストを負担しているイメージなのです。

「えっ、だれが負担するの?」

私たちファンド保有者ですよ……。

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カン・チュンドの 投資信託 テッテイ 攻略法』2015年9月24日号より一部抜粋、再構成
※太字、見出しはMONEY VOICE編集部による

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