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黒田総裁の胸中は?「2期連続マイナスGDP」と「日銀現状維持」の分析

内閣府が11月16日に発表した実質GDP(速報値)は2四半期連続のマイナス。その後、日銀は18~19日の日銀金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。GDPはマイナスにならないと言っていた黒田総裁はいまの状況をどう考えているのでしょうか?投資信託に精通しSEの経歴を活かしたツール提供を行うのりたま氏が分析します。(『毎月分配投信の本当のこと のりたマガジン』)

2期連続マイナス成長直後の黒田総裁記者会見を読み解く

実質GDP速報値は2四半期連続のマイナス、市場予想も下回る

まずは各指標をチェックします。

■日本経済指標【四半期実質国内総生産(GDP、速報値)】 2015/11/16(月)08:50
*四半期実質国内総生産(GDP、速報値)(7-9月期)8:50
結果 -0.2% 予想 -0.1% 前回 -0.3%(前期比)
結果 -0.8% 予想 -0.2% 前回 -1.2%(年率換算)

待ちに待ったGDPですが、思った通りのマイナス!2期連続でのマイナスは一時的なものとして無視するわけにはいかないと思いますので、厳しいなと思います。しかも市場予想よりも悪かったのは気になるところ。

一応、中身を確認しておきます。

<実質GDPの寄与度>
民間最終消費支出:+0.3(前回-0.3)
民間住宅:+0.1(前回+0.1)
民間企業設備:-0.2(前回-0.2)
民間在庫品増加:-0.5(前回+0.3)
政府最終消費支出:+0.1(前回+0.1)
公的固定資本形成:+-0(前回+0.1)
公的在庫品増加:+0.1(前回0)
財貨・サービス純輸出(輸出+0.5、輸入-0.4):+0.1(前回-0.2)

意外にも消費は持ち直しているみたいです。計画のわりに設備投資が進まないという現状も表れています。

大きくマイナスに影響したのは在庫のようです。需要が増えたのなら良いことと言えますが、設備投資の消極的な姿勢をみても、供給を抑えているという見方はできると思います。

あらためて中国の景気減速が、日本企業のマインドを低下させているのだなと再確認できるものです。

今回の結果は去年と同じ

今回の結果を見て改めて思ったのは、去年と全く同じだということです。日銀短観で良さげな内容が出たと言っておきながら、GDPはマイナス。やっぱりね。と思いました。

市場予想の時点でマイナスだったことは、アナリストもある程度、学習しているなとは思いますけど。(^_^)

以前も話しましたが、結局、1000万円未満の企業が大きく影響したということでしょうか(※市場が織り込んでいない「実態との乖離」とは?日銀短観まとめ)。

個人企業経済調査は悪化

11/20に総務省統計局より「個人企業経済調査」の最新情報が公開されましたので、チェックしてみます。

平成27年7~9月期結果(確報)の要約[PDF]
平成27年7~9月期結果(確報)の概要[PDF]
(参考)平成26年7~9月期結果(確報)の要約[PDF]
(参考)平成26年7~9月期結果(確報)の概要[PDF]

4-6月期よりも悪化しており、状況は良くない事がわかります。全般的に前年同期比で売上が落ちているのがわかりますが、特に、「卸売業、小売業」の減少は大きいです。設備投資が増えていることだけは救いかもしれません。

日銀金融政策決定会合、追加緩和なしはコンセンサスだが

それでは次に日銀会合を確認します。

当面の金融政策運営について – 日本銀行(2015/11/19)[PDF]

GDPが2期連続のマイナスということで、追加緩和期待なども出ていたように思いますが、思った通り追加緩和はなしでした。

個人的には追加緩和の一要因としても考えていたGDPでしたが、今回、追加緩和を見送ったことで、今後しばらく追加緩和という話は出ないだろうなと思えた瞬間です。物価目標の達成時期を2016年の後半に先延ばししましたので、ここから1年ぐらい何も政策変更しないということもあり得るのではないでしょうか。

まぁ、米国の利上げや中国の景気減速など、試練はこれからたくさん待っているとは思いますので、今後の状況次第なのは当然です。

Next: 黒田総裁記者会見の内容は?|白井審議委員の気になる発言


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黒田総裁記者会見

それでは次に黒田さんの会見内容を確認しますが、GDPはマイナスにならないと言っていた黒田さんがどう話すのかに注目して見ていきます。
黒田総裁記者会見要旨(2015/11/19)

マイナス成長の大きな原因は在庫投資のかなり大きなマイナスですので、在庫調整が進んでいることを示していると思われますし、在庫投資を除く内需と輸出を加えた最終需要は、全体としてかなり増加していると思います。

需要の増加が確認できるものなので、前向きにとらえることは理解できますが、GDPマイナスで問題ないわけないでしょうに。

9月の短観でも、多くの業種、企業規模で設備投資計画がむしろ上方修正されてかなり強いものになっています。それに比べると7~9月期のGDPの1次速報における設備投資が小幅のマイナスになったのは、やや意外とまでは言えないかもしれませんが、強めの計画に比べると設備投資の出方がやや遅れているとの印象を持っています。

素直に短観とのギャップを認めています。

短観その他のアンケートでの設備投資計画は、年度の初めは非常に高くて、後半にかけて少し下方修正されて着地する傾向があるのですが、そういった傾向を踏まえても、設備投資は年度全体ではかなり大きな伸びになる可能性があると思っていますが

ちょっと良く理解できないのですが、後半に下方修正されて着地するなら伸びは抑えられるのでは?計画は下方修正されるけど、それは限定的でしかなく、最終的には計画通りに実施されるから問題ないということ?言葉が難しくてちょっとわかりません。(^_^;

引当金の件については、基本的に「量的・質的金融緩和」を行っている間は、当然ですが、長期国債の買入れ等が大きく増えますので、利息収入が増加することで収益が大幅に増加するわけです。他方で、将来金利が上昇する局面になると、具体的な政策手段は色々あると思いますが、付利金利の引上げとか、資金吸収オペとかその他それぞれの対応によって、今度は収益が下振れる可能性があります。従って、収益の振れを均すという意味で、引当金制度を整備することが考えられるということです。

日銀が出口戦略で利上げをすると現状の運用では収益がマイナスになり、損の垂れ流しになるから利上げできないので、「ブレーキのないバスに乗り込んでいる」という、トンデモ発言をするエコノミストの話を見かけたのですが、その解決策を用意していることが確認できて良かったです。

「50ドル程度から緩やかに上がっていくと想定していたのが、足許40ドル程度まで落ちているではないか」ということですが、想定はあくまでも一定の期間をとってみた場合であり、ドバイもWTIも、それからブレントも、日々あるいは週毎にもかなり振れていますので、もう少し長い目でみてどうなるかをその時点で考えればいいと思います。

私が気になっていた日銀の原油想定について初めて突っ込んでくれた気がします。もう少し長い目で見ればって、今までそれで下方修正をし続けていることに疑問を持たないのでしょうか。

原油価格の下落は無限に続いていくわけではなく、あくまでも一時的なものですので、それが剥落すれば当然、それによって物価が上がるといったことも十分考えておられるとは思います。

原油の下落が無限に続かないなんて極端な言い回しで、なんだか騙されている気がします。そりゃ、いつかは反転するでしょうが、2020年に向けた成長目標がある以上、時間も有限です。

そのうち反発上昇するから心配するなと言われても、期間内に目標が達成できるのか、ものすごく心配です。

白井審議委員の気になる講演

日銀会合メンバーの白井さんによる講演があったようなので、参考に掲載しておきます。
【発言要旨】白井審議委員「多様化するグローバル経済における金融政策」(サンフランシスコ、2015/11/20)

まださらっと部分的にしか見ていませんが、気になった部分がこちら。

上方バイアスが存在する下では、日本銀行が掲げる物価安定目標2%に向けた物価上昇は、家計には2%を上回る物価上昇と実感され、受け入れがたいと感じられる可能性があります。

各国の物価目標2%に合わせて日銀はターゲットにしているけど、問題があるということかな?これ意外と問題発言かも?

【関連】2期連続マイナス成長が意味するもの~現政権の景気判断は“政治色”強く=山崎和邦

【関連】異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治

毎月分配投信の本当のこと のりたマガジン』(2015年11月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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