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プロでも知らない、孫への贈与に相続税の3年ルールが適用される2つのケース=小櫃麻衣

孫への贈与は“相続開始3年以内の贈与は相続財産に含めなければならない”というルールに当てはまりませんが、場合によっては適用されるため注意が必要です。(『FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』小櫃麻衣)

孫に贈与をするときに注意しておきたいこと

法定相続分に応じて、必ずしも遺産相続しなくてもよい

相続が発生すると、死亡した方が所有する不動産や預貯金などの資産の総額から、相続税の基礎控除額を差し引いた金額を、一旦相続人が法定相続分に応じて遺産を取得したと仮定し、その金額を相続税の速算表に当てはめて、今回の相続で発生する相続税の総額を求めることになります。

例えば、遺産総額から相続税の基礎控除額を引いた金額が2,000万円だとしましょう。

相続人が配偶者と二人の子供だとすると、2,000万円に配偶者の法定相続分である1/2を掛けた1,000万円に相続税率を掛けて100万円、そして2,000万円に子供一人あたりの法定相続分である1/4を掛けた500万円に相続税率を掛けて50万円。

つまり、今回の相続で発生する相続税の総額は100万円+50万円×二人分=200万円となるわけです。

ただし、必ずしも法定相続分に応じて遺産相続する必要はありませんので、例えば、配偶者が遺産の60%を、子供Aが30%を、子供Bが10%の割合で相続するのであれば、相続税の総額である200万円をそれぞれの相続割合で分けた金額を相続税として納税することになります。

このケースであれば、配偶者が200万円×60%=120万円、子供Aが200万円×30%=60万円、子供Bが200万円×10%=20万円を相続税として納税することになります。

遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額を相続税の速算表に当てはめて相続税を算出するわけではありませんので、その点は覚えておきましょう。

さて話が少し脱線してしまいましたが、相続税を計算するにあたって気を付けなければならないのは、相続時精算課税制度によって取得した財産や相続開始3年以内に行われた贈与もプラスの財産として含めなければならないということ。

相続人は贈与分も相続税に課税される可能性がある

相続時精算課税制度とは、父母や祖父母などの直系尊属から子供や孫などの直系卑属に対する贈与であれば、2,500万円までは贈与税がかからないという制度ですが、その贈与財産は相続時に相続財産に含めなければならなりません。

つまり、贈与税は支払わずに済むかもしれませんが、相続税の課税される可能性が非常に高いのです。

そして相続時精算課税制度によって取得した財産に加えて、相続開始3年以内に行われた贈与に関しても同様に、相続財産に計上しなければなりません。

これは、死期が近付いてから急いで贈与を行うことによって、相続財産を過剰に減らし、相続税の課税範囲を極端に減らそうとするのを防ぐためです。

しかし、ここでいう相続開始3年以内の贈与というのは、相続人へ向けた贈与に限られているというのをご存知でしたでしょうか。

つまり、相続人以外へ向けた贈与であれば、3年ルールが適用されないのです。

従って、相続人ではない孫への贈与に関しては3年ルールが適用されないため、相続人となる子供ではなく、一代飛ばして孫へ贈与した方が相続税対策になると思いたいところですが、いくつか気を付けなければならない点があります。

ちなみに、代襲相続によって孫が相続人となる場合には、“相続人へ向けた贈与”に該当しますので、3年ルールが適用されます。

可愛くて仕方がない孫へ贈与しても、3年ルールが適用されないのなら、出来る限り贈与してあげようとなる気持ちも分からなくはありません。

しかし場合によっては、相続人でない孫に対する贈与であっても3年ルールが適用される可能性があるうえ、その他の負担もかなり大きくなる可能性があるのです。

Next: 孫への贈与に3年ルールが適用される、具体的な事例とは?



孫の相続で3年ルールが適用される2つのケース

孫への贈与であっても3年ルールが適用されるケースを紹介しましょう。

1つ目は、遺言書を残しておいたケース

例えば“孫Aに株式を相続させる”といった遺言書を残している場合には、孫Aに3年ルールが適用されます。

国税庁のホームページを見てみると、相続または遺贈により財産を取得した相続人などが、相続開始前3年以内に被相続人からの贈与により取得した財産は、相続財産に計上すると書かれています。

つまり、遺言書によって相続人ではない孫へ遺産を取得させるのは遺贈に該当しますので、“遺贈により財産を取得した相続人など”に当てはまりますよね。

つまり、孫Aが死亡した方の相続開始3年以内に贈与を受けていれば、その贈与財産は相続財産に含めなければならないのです。

孫へ向けた遺言書を残しておけば確実に孫へ財産を渡せる!と考えてしまう方も多いのですが、遺言書を残しておくと3年ルールの対象になりますので気を付けましょう。

2つ目は、孫を受取人とする生命保険に加入していたケース

孫を受取人とする保険に加入している方は非常に多いのですが、個人的にはオススメしません。

契約者・被保険者を被相続人、受取人を孫にしていると、孫が受け取る保険金は、相続税の課税対象となります。

ここで思い出してほしいのは、死亡保険金などのみなし相続財産の非課税枠

みなし相続財産の非課税枠は、“500万円×法定相続人の数”。ここまで話すと、ピンと来る方も多いのではないでしょうか。代襲相続でない孫は、法定相続人ではありませんよね。

つまり、非課税枠が適用されることなく、全額が相続税の課税対象となってしまうのです。

この点については、保険会社の営業マンや銀行員でも知らない方が多いので、孫を受取人にしているのであれば、すぐさま子供へ変更した方がいいでしょう。

3年ルールよりも、さらに負担が大きい2割加算に注意

さて、孫に対する遺言書を残していたり、孫を受取人とする保険に加入していたりすると、3年ルールが適用されるのですが、それ以上に負担になることがあります。

それは、2割加算。

代襲相続ではない孫が、死亡した方の資産や保険金を受け取る際には、本来納めるべき相続税に2割加算した相続税が課税されます。

これは孫に限ったことではなく、配偶者・子供・両親・代襲相続の孫以外が財産を取得する場合も同様です。

相続税の負担が子供達だけに集中しないように、相続人以外の孫や兄弟姉妹・甥姪にも財産を渡してあげようとなる気持ちも分からなくはありません。

しかし、2割加算のことを考えると、子供達の税負担は軽くなるかもしれませんが、総額で考えると損する可能性の方が高いのです。

2割加算を適用させたとしても、祖父母の代・父母の代の二代に渡る相続を鑑みれば、税負担を軽減できるとの統計もありますが、それは遺産総額が十数億円にもなるケースのみ

“孫への贈与は相続税対策になる!”と豪語している方が多いのも現実なのですが、“遺言書の有無”や“孫への保険金”や“2割加算”など、気を付けなければならないポイントも非常に多いです。

先ほども申し上げたように、こういったデメリットについてはプロでも知らないことが多いので、良かれと思って講じた対策が裏目に出ることがないよう、しっかり覚えておきましょう。

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FPが教える!相続知識配信メルマガ☆彡.。』(2019年2月8日・13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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