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消費税引き上げはこのまま行われるのか?この先の日経平均株価を占う3つのストーリー=伊藤智洋

昨年10月に着けた日経平均の2万4,448円という高値は、2008年からの大相場が継続している可能性を示しています。今後、株価はどのような展開を見せるのか検証します。(『少額投資家のための売買戦略』伊藤智洋)

※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2019年3月10日号を一部抜粋・再構成したものです。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。今月配信済みバックナンバーや本記事で割愛した全文(日経平均・NYダウの今後のシナリオ、予測の仕方)もすぐ読めます。

プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。

どの時点で日経平均1万6,000円になるかがカギを握る

NYダウが大幅に下げても日経はそれほど下げない可能性

昨年10月、日経平均株価は1月の高値2万4,129円を超えて、2万4,448円をつけました。この高値更新は、翌年を見据えた強さを考えておくべきものであり、2008年10月からの大勢の上昇局面が継続している可能性を示していると見ることもできる動きです。

2008年10月からの大勢の上昇局面が継続していると考えた場合、現時点で想定できる展開は、昨年10月以降の下げが15年6月24日の高値2万952円から16年6月24日の安値1万4,864円までの下げ場面と同程度(または若干超える程度)の調整幅(6,088円幅)で終わり、再上昇を開始する動きです。今後の下値の目安は、1万8,360円を大きく下回らない程度が挙げられます。

本年の下げが1万8,360円を大きく下回らない程度で止まり、新たな上昇を開始する場合、日経平均株価は来年以降、3万1,000円を大きく上回る程度まで上げ余地が出てくることになります。

以前より書いている通り、NYダウは今年年末、または来年の早い時期に1万9,222ドル以下を目指す可能性があります。

その見方が正しければ、2月25日の高値が本年の最高値となって、今後の価格が下降の流れを作ると考えられます(目先、一気に昨年末の安値を目指すと言っているわけではありません。時間をかけて下値を掘り下げて、8月以降に下げ幅を拡大してゆく展開を想定しています)。

NYダウの下げ余地を考慮すると、今後の日経平均株価が1万8,360円を割れた地点で押し目底をつけて、上昇を開始する展開など想像できません。

わずかながらの可能性が残されているとするなら、それは、10月の消費税引き上げの延期(または廃止)を決断することであらわれる可能性があります。消費税引き上げは現状継続の判断に過ぎませんが、日経平均株価は、安心感がひろがることで、NYダウの上値重い状況の中で、上げ幅の大きな動きを経過する可能性があります。

そうなると今年後半、NYダウが大幅に下げる場面があっても、日経平均は上げ分を若干だけ超える下げを経過する程度で止まり、再上昇の準備へ入る動きになる可能性を残すことになります。

Next: 消費税引き上げの延期は、日経平均がいくらで行われるのか



1万6,000円を割れると大規模な経済対策を実施

最近のネットメディアで、元大蔵省官僚の高橋洋一氏は、「5月20日に発表される2019年1-3月期のGDP速報値が極端に悪い数値になっている場合、それを理由に消費税引き上げを延期する可能性がある」と述べていました。衆参同日選挙を想定し、日程的にまだ間に合うと考えているからこその意見です。

5月20日のGDPが悪い数字となっても、(安倍政権が株価を景気判断の目安の1つとしているので)株価にそれほど影響のない状況なら、財務省の強い反対を押し切り、あえて次の総理に判断をまかせる決断に至らないのではないかと考えられます。少なくとも、多くの市場参加者が「当面、日本株はダメだ」と思う程度まで、日経平均株価の下げ幅が拡大している必要があります。

だとすれば、日経平均株価は、5月20日のGDP速報値をきっかけに、またはその前に、昨年12月の安値1万8,948円を大きく下回る動き(1万8,360円割れを達成する動き)があらわれると考えられます。

日経平均株価は、4月が上げやすい時期になります。年間が弱気に推移する年であっても、4月に積極的に下値を掘り下げる展開になりにくく、価格が上値を試す流れを作るか、下値堅く推移する傾向があります。

5月20日に一気に1万8,948円を大きく下回る動き(1万8,360円割れを達成する動き)があらわれるとするなら、それまでの期間で1万8,948円に下値堅さがないだろうと推測できる値動きになっている必要があります。下げられる期間は、3月中か、4月後半以降になります。

来年以降、日経平均株価が3万1,000円以上を目指す大幅高を期待できる展開があるとするなら、5月20日前後に1万8,948円を割れて、1万8,360円以下を達成する展開になり、それをきっかけに消費税引き上げを延期するというシナリオだけだと考えられます。しかし、これは、最も期待値の低い展開です。

消費税引き上げを延期できる程度のインパクトのある下落があるとするなら、最も有力なものは、1万6,000円以下の値位置まで下げる展開です。90年以降、日経平均株価が1万6,000円以下の値位置へ入ると、大規模な経済対策や、金融緩和など、価格を押し上げる政策が実施されています。

5月から6月にかけて、株価が1万6,000円以下へ下げる展開になっているなら、過去の経験則からも、消費税を延期する可能性が大きいのではないかと推測できます。

Next: 消費税引き上げが実施された場合の日経平均は?



日経平均1万6,000円以下が大相場の終焉のサインに

日経平均株価が5月、6月に2万円以上で推移しているなら、消費税引き上げが実施されて、日経平均株価は、NYダウと共に、今年後半、または来年前半へ向けて1万6,000円以下を目指すという見方が有力になります。

日経平均株価が1万6,000円以下まで下げる場合、2008年10月以降の大勢の上昇局面の終焉を示すことになるので、その後の価格は、当面(何年かは現時点で想定できません)、昨年10月の高値を超えられない状況へ入ると考えられます。

なお、6月に1万6,000円まで下げて、消費税引き上げも延期しない(恐ろしい)展開は、(あるかもしれませんが、まだ)考えたくありません。

下図の日経平均株価日足には、前述した3通りのシナリオを引いています。どの展開になるかはわかりませんが、3月の下げ幅が大きくなるほど、底値をつける時期が早くなる期待値が上がります。3月のあと3週間、どの程度の下げ場面になるのかに注目したいところです。

図表1 日経平均株価の2019年のシナリオ


※本記事は有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』2019年3月10日号を一部抜粋・再構成したものです。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。今月配信済みバックナンバーや本記事で割愛した全文(NY金の展望、日経平均の今後のシナリオ)もすぐ読めます。

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『少額投資家のための売買戦略』』(2019年3月10日号)より一部抜粋・再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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