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アボカドとバナナが消えると脅されても、英国が期日通りに「合意なきEU離脱」をすべき理由=矢口新

英国のEU離脱期限は3月末に迫っている。「EUと生きるか、さもないと死」という論調が多いなか、私は期日通りに「合意なき離脱」をした方がいいと考えている。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

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プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

期日は3月末、国民投票当時の3つの望みは離脱で叶うのか?

ブレグジットまで秒読み段階に

英国がEUから離脱するブレグジットの期日が、3週間を切った。ブレグジットはロンドン時間2019年3月29日23時、ブリュッセル時間3月30日0時に行われる。

EU離脱を巡る国民投票が行われたのは2016年6月23日なので、かれこれ2年9カ月にならんとしている。その間、英政府はEU政府と離脱後の両者の関係についての会合を続けてきたが、今になっても、合意なき離脱か、会合を続けるか、あるいは、ブレグジットをキャンセルするための再投票かなどと言われている。

すんなりとは抜けさせては貰えないのだ。

英国の食卓がガラリと変わる?

メディアの論調では、「EUと生きるか、さもないと死(To be or not to be)」といった問題のようで、EUを離れた後の英国は、まるで生きる望みを断たれるかのようなのだ。

ドイツ連邦金融サービス監督庁の高官は3月7日、ブレグジットを控え、ここ数カ月で金融機関48社が英国からドイツへの移転申請を行ったことを明らかにした。「ブレグジットに備えた対応を始めたばかりの企業もある」とし、移転申請が今後も続く可能性があるとの認識を示した。

またブルームバーグは、EUを離れた後の英国の食卓を以下のように描写した。

アボカドトーストやバナナのスムージーはもう食卓に上らない。新鮮なパルメザンチーズをすりおろしてパスタにかけるおいしさも忘れよう。代わりに、食事のたびに必ず出てくるのは牛乳とパン、ラムチョップとたくさんの豆だ。

英国が貿易合意なしに欧州連合(EU)を離れれば、英国の食卓は産業革命時代に近くなるだろう。英国は食料品を大きく輸入に頼っている。農産品や食品の貿易が滞ればどうなるのか、英国人は今では想像するのも難しいだろう。

合意なき離脱となったとしても食料輸入が完全に止まることはまずあり得ないが、食料品店や農家は最悪の事態に備えている。最悪の場合でも、少なくとも肉とジャガイモはたっぷりあるだろう。しかし「1日5種類」の果物と野菜は無理だ。そして、英国での端境期は、肉料理の付け合わせは乏しい状態が続くだろう。

「食料はあるだろうが、サプライチェーンと物流が大きな変化に対応する必要があるだろう」と王立芸術協会の食料・農業・田園委員会のディレクター、スー・プリチャード氏は話す。「多分、英国の伝統的な肉と3種類の野菜という食事に回帰するしかないだろう」と言う。

英国の食料自給率は約60%。人々が好む食品の多くが入手不可能になることも想定される。貿易のない世界で、スーパーマーケットの棚はどうなるだろうか。

牛乳は、風呂に入れるほどある。英国では毎週、国民1人当たり約1ガロン(約4.546リットル)の牛乳が生産されている。卵も主に国内で供給できる。

しかし、アイルランドのバターやチェダーチーズは消えるかもしれない。チーズ好きはフランスのブリーとイタリアのパルメザンをあきらめなければならないだろう。

青物が少なくなり、英国で収穫できるものも特定の季節だけになりそうだ。英国で収穫できるイチゴは国民1人当たり1年に約4ポンド(約1.8キログラム)、ラズベリーは半ポンド、バナナは皆無だ。アボカドトーストもメニューから消える。

エンドウ豆はたっぷりあり、ニンジンとビーツもほぼ1年中あるが、ブロッコリーは半年間しか食べられない。トマトは特別な日だけの食材だ。

ラムは英国の畜産品の中で最大の輸出品なので、ラムチョップはいつでも食べられる。しかしフィッシュアンドチップスになるタラはノルウェーかアイスランドからの輸入が多い。2015年には90%が輸入だった。ちなみに、英国人が好む紅茶も輸入品だ。

出典:アボカドとバナナにさようなら~合意なき離脱で英の食卓はこう変わる – Bloomberg(2019年3月5日配信)

本当にこの記事のようになるのだとすれば、ブレグジットにより英国はEUとの貿易が滞るだけでなく、EUは世界の国々に英国に対する経済制裁を強制するつもりかのようだ。

ここまで脅されて再投票を行ったなら、ブレグジットはキャンセルされるかも知れない。

Next: 本当にアボカドとバナナは消えるのか?合意なき離脱の代償とは

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