私が持っている家電量販店の株は、ビックカメラ<3048>のみ。家電量販店のランキングを見ていたら、他の量販店の株主総会にも行ってみたくなりましたが、今回は、ビックカメラの株主総会のお話です。(『平林亮子の晴れ時々株主総会』)
ビックカメラ株主総会レポート
家電量販店と言えば?
街はすっかりクリスマス一色になってきましたね。百貨店や家電量販店も、クリスマス商戦で盛り上がっていました。百貨店では、おせち料理などのお正月商戦でも盛り上がっているようでしたが。
先日も、有楽町のビックカメラに立ち寄ったのですが、おもちゃからお酒まで、もはや「家電」量販店の域を超え、あらゆるものが手に入るお店となっています。私自身、有楽町のビックカメラでコンタクトレンズも薬も購入していますが、本当に便利で助かっています。
ところで、「家電量販店」といえば、私は断然、ビックカメラなのですが、全国的には、そうではないらしいですね。
Jタウンネットが2015年7月24日から9月28日までの67日間、「家電量販店といえばどこ?」というテーマでアンケートを実施したところ、全国の587人の読者の投票結果は、以下のようになったそうです。
1位: ヨドバシカメラ
2位: ヤマダ電機
3位: ケーズデンキ
4位: ビックカメラ(コジマを含む)
5位: 上新電機
みなさんにとって、家電量販店といえばどこですか?住んでいる地域によっても、変わるのでしょうね。
ちなみに、上記5店(5社)のうち、ヨドバシカメラ以外は上場企業です。ヨドバシカメラといえば、テレビCMも有名な企業ですし、知名度は抜群なので上場企業でないことに驚いてしまいます。
なお、上記5社で売上が一番多いのはヤマダ電機で圧勝です。
売上高ランキング(決算短信より。ヨドバシカメラはウェブサイト掲載情報)
1位: ヤマダ電機 1兆6,643億円(2015年3月期)
2位: ビックカメラ 7,953億円(2015年8月期)
3位: ヨドバシカメラ 6,908億円(2014年3月期)
4位: ケーズデンキ 6,371億円(2015年3月期)
5位: 上新電機 3,723億円(2015年3月期)
ヨドバシカメラは、2014年3月の金額なので、最新データでは順位が入れ替わる可能性があるものの、上記の順位が大きく変動することはないでしょう。いずれにしても、ヤマダ電機のすごさは一目瞭然です。ただし、これが経常利益となると、少し順位が入れ替わってきます。
経常利益ランキング(決算短信より。ヨドバシカメラはウェブサイト掲載情報)
1位: ヨドバシカメラ 531億円(2014年3月期)
2位: ヤマダ電機 355億円(2015年3月期)
3位: ケーズデンキ 258億円(2015年3月期)
4位: ビックカメラ 204億円(2015年8月期)
5位: 上新電機 66億円(2015年3月期)
こうして見ると、ヨドバシカメラの利益率の良さが浮き彫りになりますよね。もしかすると、上場していないために、売上高を大きくすることへのプレッシャーが少ないことと、管理コストが少なくて済むことが、利益率を大きくしているのかもしれません。
ヨドバシカメラが上場するという噂もあるようですが、家電量販店の中でのこの利益率の高さを維持できるのであれば、面白い銘柄となるのではないでしょうか。
また、株主として応援するなら、どこの量販店か、という視点で店舗を見比べてみるのも面白いかもしれませんね。
ビックカメライズム
私が持っている家電量販店の株は、ビックカメラのみ。家電量販店のランキングを見ていたら、他の量販店の株主総会にも行ってみたくなりましたが、今回は、ビックカメラの株主総会のお話。
ビックカメラの株主総会がとてもユニークであることは、以前もふれました。今年は、実は、前回ほどの感動はなかったのですが、相変わらず体育会系の雰囲気が漂う株主総会でした。
会場は、階段状にイスが設置されたホール。前回と場所は異なりましたが、前回も同様のホールでした。会場に着くまでの案内の方々のあいさつも、前回同様ハキハキしていて元気!
定刻になると、舞台上に、役員などの登壇者が2名ずつ、礼をして入ってきます。もちろん、席に座る前にも一礼。動作がきびきびしています。
Next: 「自分が答えます!」体育会系のハキハキ進行/注目の女性監査役
そして、株主からの質問に答える姿勢も、前回同様、本当にしっかりしていました。株主からの質問を受けた社長が、誰に答えてもらうのが適切かな、という顔で壇上を見回すと、壇上にいる役員や部長が、何人も「自分が答えます!」という意思表示として手を挙げる。そして、社長がその中から指名して答えるという光景を今年も見ることができました。
ただ、前回ほどの勢いはないな、というのが正直な感想でした。その中で、執行役員営業部長の石川氏が、「はい!」という元気な声とともに手を挙げて、とても歯切れよく、株主からの質問に答えていたのは印象に残っています。
業績はナレーション付きの映像による報告でした。ビックカメラは減収ながらも増益で、コジマはいまいち振るわなかったそうですが、プライベートブランドの開発に力を入れている点や、物流拠点の統合を進めているという話は興味深かったです。
また、インバウンド需要はまだまだ伸びているようで、観光客増加が見込まれることから、今後も力を入れていくことになるものと思います。今、走っている事業年度の9月、10月のインバウンド売上は、前年同月比の200%だそうで、好調のようです。
この点、店舗によって、英語や中国語はもちろん、タイ語、フランス語、韓国語のできるスタッフを配置しているのだとか。タイ語やフランス語まで対応できるというのは、すごいです。それだけ色々な国からお客様が来るということです。
女性と監査役
ビックカメラの現在の常勤監査役は女性です。
上場企業では、取締役にも監査役にも女性は少ないですから、ついつい「女性の監査役」という言葉を使ってしまう自分がいます。
監査役というポジションは、女性に向いているかもしれません。社内での管理職や取締役になろうと思うと、その会社での一定の経験が重要になります。取締役であれば、会社の方向性を決めることになるため、意思決定の場数を踏んでいることなどが重要になってきますし、その会社での業務経験や長年にわたるビジネスの経験が必要であることも多いのが現実です。
一方、監査役は、取締役の職務や企業の業務内容をチェックする仕事ですから、重要なのは法律知識やコミュニケーション能力、そして真面目さや正義感。会社からも社長からも少し距離を置いた立場で仕事ができますし、仕事の方法を工夫すれば、スケジュールなども、自由に組み立てられる可能性があります。
こうしたポジションから、女性の登用について考えてみるのは、良い方法ではないかと感じます。企業にとっても、女性を活用しているというアピールになりますよね。アピールのために女性を登用するというのでは、本質的な女性の活用とは言えないかもしれませんが、スタートは、そういう目的でも良いのだと思います。
そうこうしているうちに、女性も経験を積むことができますし、男性も女性と仕事をするということに慣れてきて、互いに力を生かし合う方法が見えてくるのではないでしょうか。
実際、株主からも、女性の監査役に話を聞いてみたい、という質問が飛び出しました。どんな内部監査をしているのか、といった質問でしたが、女性監査役も「店舗に出向いて、女性の社員に声をかけている」といった言葉を交えて回答していました。
ちなみに、ビックカメラでは、子供が3歳になるまで育児休暇を取ることができるそうです。さすがに、そこまで仕事を離れると復帰するのは難しいのではないかと感じますがまずは制度を作ってみるというのは1つのやり方です。
そんなやり取りや、ビックカメラの育児休暇の話を聞いていて、「女性が活躍するというのは具体的にどういうことなのかなあ」ということを考えさせられました。
Next: 大株主は信託銀行…でも、やっぱり普通じゃない!?
大株主に注目!
ビックカメラの大株主は、ほとんどが信託銀行(の信託財産)で、昨年と変わらず。信託銀行は、個人や企業などのお金を預かり、管理、運用する銀行。通常は、一般の人々から集められたお金や年金資金などが運用されているものと考えられます。
ところが、なんと、株主となっている信託銀行のほとんどは、創業者の新井隆二氏が委託した財産を管理しているものとのこと。つまり、株主の名前は信託銀行になっていますが、実質的には新井氏の株であるということです。
第2位の株式会社ラ・ホールディングスも、新井氏の資産運用会社のようですから、50%超を新井氏が保有している計算になります。それ以外の大株主は、信託の一部と、株式会社TBSテレビ。いくつもの信託銀行に分けて信託し、それが大株主となって名を連ねる。新井氏は役員にはなっておられませんので、オーナーとして、最終的な実権を握り続けていらっしゃるということでしょう。
創業者が大株主として存在している中で雇われている社長は、非常に窮屈な思いをするという話を聞いたことがあります。現在の社長である宮嶋氏は、創業者の新井氏から指名されて二代目社長となったようですが、今のお立場をどのように感じているのでしょうか。
なお、TBSとビックカメラには、業務提携があったようですね。現在は良くわかりませんが、TBSが、話題の商品が発売イベントなどで、ビックカメラを撮影現場に選んでいた時期があったそうです。
余談ですが、ビックカメラは、BS11(BS11チャンネル)の親会社です。BS11で『家電’s Walker』という番組が放送されるのも当然ですね。
ビックカメラの業績メモ(百万円未満切捨)
ビックカメラの2015年8月期の業績は以下の通り。
売上高795,368百万円(7,953億6,800万円、前期4.5%減)
営業利益18,800百万円(188億円、前期6.1%減)
経常利益20,401百万円(204億100万円、前期15.2%減)
当期純利益6,804百万円(68億400万円、前期30.9%減)総資産329,580百万円(3,295億8,000万円)
純資産120,846百万円(1,208億4,600万円)
自己資本比率約30.5%執筆時点での時価総額 約1,822億円
営業活動によるキャッシュフロー 6,128百万円
投資活動によるキャッシュフロー △8,001百万円
財務活動によるキャッシュフロー △1,765百万円
キャッシュフローから妄想できることは、
- 営業活動によるキャッシュフローがプラスであることから、本業ビジネスでお金を稼いでいる
- 投資活動によるキャッシュフローがマイナス(△)であることから、投資をしたと推測できる
- 財務活動によるキャッシュフローがマイナス(△)であることから、返済などよる支出があったと推測できる
といったところでしょうか。
今回のお土産
今回は株主総会招集通知にはお土産なしと記載されておりましが、ビックカメラでの割引チケットが配布されました。また、希望者にはビックカメラのカレンダーも配布していました。さて、次回はどこの株主総会に行くことになるのやら。乞うご期待!
『平林亮子の晴れ時々株主総会』vol.32(2015年12月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
平林亮子の晴れ時々株主総会
[月額324円(税込) 毎月 第1月曜日・第3月曜日]
ベンチャー企業のコンサルティングを行うかたわら、講演活動やマスコミなどでも活躍。毎月どこかの上場企業の株主総会に個人株主として参加中。