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死ぬまで働け?政府案「70歳雇用の努力義務化」で年金不足を企業に丸投げへ

政府は5月15日、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための「高年齢者雇用安定法改正案」の骨格を発表。企業に求める具体的な7つの方針を示しました。(『らぽーる・マガジン』)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2019年5月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

これが一億総活躍社会?企業に国民の「老後」を押し付ける政府

死ぬまで働く「人生100年時代」

70歳まで働くのは当たり前の社会。「人生100年時代」とは、元気なうちはいつまでも働きなさいということなのでしょう。

いったい何のために、誰のために、働くのでしょうか。

自分自身のためとするならば、それは老後の生活費のため…。
国のためとするならば、それは国家財政を健全化するため…。

年金は頼りにならない。これからは自分で生き抜くしかない

かつては60歳までしっかりと働けば、後は年金でゆっくりと暮らせるはずでした。

しかし、日本は少子高齢化が加速するということを理解していながらも、
選挙のために社会保障制度を厚くすれども削減等の見直しをしてこなかった
財政再建を先送りして公共事業を拡大してきた(すべてが悪いわけではないですが)
という現状があります。

それによって今日のような、もうどうしようもない日本国家の構造になってしまっています。
そして、その「つけ」を私たち国民が払わされているとしたら…。

納得はいかないですが、責任論ばかりを追及していても何も解決せず、国が面倒を見てくれなくなったら自分達でなんとかしなければならないわけで、もう自助努力で自分達のことは自分達で何とかしなければならない状況に追い込まれていることは間違いないでしょう。

まぁ、国会議員は定員削減はできず、事実参議院定数は増え、自分達の歳費削減すらできないわけで、財政再建のための負担は企業や国民に強いられるのは、納得いかなくても仕方が無いことなのでしょうね。

「人生100年時代」という言葉には、健康寿命が延びたことの「陽」の部分だけでない政府側の思惑を感じます。つまり、今後の日本社会のあり方、ありていに言えば「年金を当てにしないで」という、さらには「働いて医療費を負担して」というメッセージが込められているような気がしてならないのですが、どうでしょう。

「70歳雇用」企業に努力義務

企業側からすれば、70歳雇用を「努力義務」と政府に言われることは、「雇用者の面倒は企業側がみてあげて…」と国が言っているようにも聞こえるのではないでしょうか。

政府は5月15日、希望する高齢者が70歳まで働けるようにするための高年齢者雇用安定法改正案の骨格を発表しました。企業の選択肢として、次の7項目を挙げています。

(1)定年延長
(2)定年廃止
(3)契約社員などでの再雇用

ここまでは現行法で、企業に希望者全員の65歳までの雇用を義務付けるものとなっています。これが70歳を前提にされるようになります。

そして今回、新たな努力義務が追加されています。

Next: 企業に国民の「老後」を押し付ける政府、これが一億総活躍社会なのか?



新たに追加される「70歳雇用」の努力義務は?

以下、現行法にある(1)〜(3)の項目は70歳までを前提にされるようになり、新たに(4)〜(7)の項目の追加が法改正で実現の方向となります。

(1)定年延長
(2)定年廃止
(3)契約社員などでの再雇用
(4)他企業への再就職支援
(5)フリーランスで働くための資金提供
(6)起業支援
(7)NPO活動などへの資金提供

(1)~(3)は同じ企業で働く場合で、(4)~(7)は社外に出ることを想定しています。

「他企業への再就職支援」はともかく、「起業支援」というのはどういうものなのでしょうね。「フリーランスになるための資金提供」というのもあまりイメージがわかないですね。

「70歳雇用」に経済効果を期待?

高年齢者雇用安定法により、60~64歳までの就業率は2018年に68.8%で、2013年と比べて9.9ポイント上昇したとあります。法改正で65歳以上の方の就業率も上がることになるのでしょうか。

内閣府の試算によると、65~69歳の就業率が60~64歳と同水準になれば、就業者数は217万人増えることになるようですよ。勤労所得は8.2兆円増加し、消費支出は4.1兆円のプラスとの見解が紹介されています。

70歳雇用がなんらかの経済効果をもたらすのかどうかは、よくわかりませんね。

一億総活躍社会とは?

以前、「一億総活躍社会」について、当メルマガでも検証したことがありますが、そのとき、以下のような指摘を書きました。

この「一億総活躍社会」とは、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、誰もが活躍できる社会と表現していますが、ようは、日本人全員で働いてGDPを押し上げようということなのです。

現在のGDPは名目で約490兆円、安倍総理の目標額600兆円にするには、あと110兆円増やさなければなりません

人口減少の今の日本において、どうしても労働者の数を増やさないといけないということなのです。そのためには女性にも高齢者にも、障害者の人にも働いてもらおうというのが、一億総活躍の意味なのですね。

そういわれると「一億総活躍」というネーミングが理解できます…。

Next: 法改正の目的は「全員で死ぬまで働く」を実現すること



法改正の目的は「全員で死ぬまで働く」を実現すること

今回の改正案に関しても、2018年の15~64歳の「生産年齢人口」は前年比51万2,000人減の7,545万1,000人だそうで、総人口に占める割合は59.7%と、1950年以来最低となったということが、法改正の背景にはあるのかもしれません。

30年後の2049年には約5,300万人と足元から3割減る計算になり、今回の改革は、生産年齢人口の減少を踏まえ、経済や社会保障の担い手を増やすのが狙いだとの指摘もあるようです。

報道では、この「70歳雇用」を報じる記事を、
・政府は雇用制度と併せて年金制度も見直す
・公的年金の受給開始年齢を70歳以降でも可能にする
・その分、受給額を増やす仕組みだ
・高齢者の就労を促す効果を見込む
と締めくくっています。

政府の心の声を想像すると、
・もう老後のことは国に頼らないで…
・雇用者のことは企業に何とかしてもらおう…
・自分の将来は自分達でなんとかして。そのかわり、働けるうちは働けるようにするから…
・元気なうちは生涯現役でいこうよ…
・そのうちに副業もできるようにするから…
・みんなで国を支えてね…
と言われているような気がするのですがね。

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らぽーる・マガジン』(2019年5月20日号)より一部抜粋
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