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メキシコ関税はトランプの「やり過ぎ」、株式市場のクライマックスが早まった=高梨彰

トランプ大統領がメキシコに関税をかけると言い出し、マーケットはズッコケています。この分だと早晩、株や米国債市場等にクライマックス的な動きが出るかもしれません。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)

※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2019年6月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:高梨彰(たかなし あきら)
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。

隣国の不況は伝播する? メキシコ関税が「諸刃の剣」となるワケ

リセッション入りは近い?

トランプ大統領がメキシコに関税をかけると言い出し、マーケットはズッコケています。身内のライトハイザー通商代表やムニューシン財務長官は反対していたとの報道もあります。

NYダウ平均 日足(SBI証券提供)

対中国への関税よりも、米国経済への影響は大きいようにもみえます。

この分だと、株や米国債市場などに早晩クライマックス的な動きが出て来るかもしれません。

メキシコ関税は米国にとっても大打撃

メキシコが不法移民への対策を怠っているとしてトランプ大統領が課した関税措置と、隣国への措置という地理的な影響の2つを意識せざるを得ません。

まず、米国との貿易額を、中国・メキシコ・(ついでに)日本と並べてみます。

<米国の貿易額(2018年)>

(米国全体:輸出16,639億ドル/輸入25,426億ドル)
対中国:輸出1,203億ドル/輸入5,395億ドル
対メキシコ:輸出2,650億ドル/輸入3,465億ドル
対日本:輸出749億ドル/輸入1,425億ドル

どの国も、米国の輸入額の方が大きくなっている。つまり米国の貿易赤字です。

対中国との貿易戦争では、米国から中国への輸出額が小さく、その分だけ「中国に勝ち目はない」と言われています。

対メキシコでも米国の貿易赤字ではありますが、米国からメキシコへの輸出額も多くなっています。メキシコからの輸出のうち、約8割が米国向けです。今回の措置はメキシコ経済に打撃を与えます。しかし、米国にとっても、打撃は大きいものです。輸出額をみても中国の2倍分だけ、対抗措置による打撃を受ける可能性があります。

ちなみに、米国のGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)は約20兆ドル強です。個人消費がGDPの7割を占める米国にとって、貿易額の割合は大したことないと言う向きもありますが、貿易が滞れば、ヒト・モノ・カネすべての動きが滞ります。物価高への懸念も高まります。

個人消費(と企業の設備投資)への影響を軽んじるべきではありません。

また、隣国メキシコの経済が傷めば、アメリカにだってその影響は伝播します。素直に考えれば米国への不法移民だって増えるはずです。「中米より北米」と人は思うはずですから。

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隣国の不況は伝播する

加えて、金八先生にも出て来た「腐ったミカンの方程式」も気になります。不況の伝播です。

ライトハイザー氏が反対したのも、本人が進める新自由貿易協定へのメンツだけではないはずです。

中国への制裁に米国民が鈍感なのも、1つには「遠い国」への制裁という他人事な感覚があるのではないでしょうか。

米国内にスペイン語しか話せない人がかなり居ることを考慮しても、対メキシコ関税への影響は侮れません。本物のラティーノ(ラテン系アメリカ人)達が、Viva La Raza(われらが民族よ、永遠に)と始めちゃったら…。

メキシコへの関税、財務省の太田理財局長が「それはいくら何でも」と国会で発言した、あの瞬間と同じ感覚を得ます。

多分、トランプやり過ぎです。

<今回のまとめ>

・トランプの対メキシコ関税、対中国より影響大なのでは
・中国は遠い国、メキシコは隣国です
・温厚な姿勢を貫いていた太田理財局長が「いくら何でも」と発した瞬間と重なります

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高梨彰『しん・古今東西』』(2019年6月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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