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日韓関係悪化、トランプは「韓国が悪い」と判断。文在寅に3つの改善要求へ=勝又壽良

米国トランプ大統領は、6月28~29日にかけて大阪で開催する「G20」と、その後の韓国訪問に当たり討議テーマを発表しました。突きつけた3項目は、どれも韓国にとっては頭の痛い問題ばかりです。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)

※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年6月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:勝又壽良(かつまた ひさよし)
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。

日韓関係が改善せずとも、日本には国際法に基づいた奥の手がある

韓国外交は「四面楚歌」

韓国外交は、文字通り「四面楚歌」の状況に追い込まれています。今から110年前、李氏朝鮮が日本・清国・ロシアの3カ国との外交関係で結論が出ず、混迷していたときと同じ構図になっています。民族の特性と言えばそれまでですが、大きな歴史的な転換点に遭遇した時、甲論乙駁で結論が出ないままに時間を空費するのです。

20世紀の偉大な歴史家とされる英国のアーノルド・トインビーは『歴史の研究』の中で、日本と中国が最初の文明的衝撃を受けて開国するまでにかかった時間を後述の通り説明しています。

この記述の中から、韓国が中国と同じ文明圏(儒教)に属しており、新文明出現への対応が遅れる事実を推測できるのです。

中国は1793年、英国のマカートニー卿が北京へ着いてから開国までに118年日本は1853年、米国のペリー提督が浦賀で米国大統領の親書を江戸幕府に届けてから15年後に開国しました。

トインビーはこの事実に基づき、日中の開国に至るまでの年数差が、新しい文明的衝撃への対応の速度の差と見ています。

時間を浪費するだけの韓国外交

韓国は現在、日本・米国・中国・北朝鮮と外交課題を抱えています。

だが、結論を出さずにただ時間を無為に過ごしているだけです。

これは、同じ儒教文明圏である中国でも同じです。米中貿易協定が、一度はまとまりかかったにも関わらず、国内の反対派によって振り出しに戻っている形です。同一文明圏が持つ恐ろしいまでの共通性を認識するほかありません。

トインビーの見方は、大変に興味深いのです。

日本が近代化過程で、明治維新・戦後民主化という大きな歴史の波をくぐるときに制度改革を行っています。中国は、共産中国に変わり「革命」と称していますが、それは中国流の「易姓革命」で王朝の交替に過ぎません。

欧米流の「革命」とは、過去との断絶です。中国では、専制主義が一貫して続いています。日本は、明治維新と戦後民主化という2度にわたって過去を全否定する「革命」を実現しました。

韓国はどうでしょうか。李氏朝鮮の時代は1910年に終わりましたが、両班(ヤンバン)を代表する特権意識は消えていません。権力の重心が現在、大企業労働組合と市民団体の手に移っています。司法(検察・裁判所)は、前記の団体が文政権の有力支持母体であることから、不法行為に対して見て見ぬふりをしています。それどころか、前記の2団体は政府に代わって政策を動かしています。

日本では許されない行為が罷り通っている背景には、李氏朝鮮時代と同じように、特権階級の存在を許す文明を持っているのです。中国が専制主義で一貫している裏には、韓国と同じで特権階級の存在を許す文明が生き続けていると見るほかありません。

日本が中韓に働きかける必要はない

トインビーは、1つの文明が衰退し解体してから、新しい文明を受け入れるまでに1000年(100年ではありません)の時間が必要であると指摘しています。中国と韓国が、欧米流の真の民主主義を受け入れるには、まだまだ気の遠くなるような時間が必要です。

こういう歴史認識を持てば、日本が中国や韓国に対してどう対応すべきか。結論が出るように思います。

焦っても仕方ありません。中韓に働きかける必要はないのです。別の文明圏の出来事として傍観するほかないでしょう。「友好」などと言う綺麗事では済まされません。日本は、同盟国と固い絆を結んで「生き延びる」ことに専念すべきと思います。

Next: なぜ文氏は親中朝・反日米路線を歩む?米国が韓国に提示した3つの条件とは



トランプが韓国に提示した3つの条件

米国トランプ大統領は、6月28~29日にかけて大阪で開催する「G20」と、その後の韓国訪問に当たり討議テーマを発表しました。

(1)北朝鮮の完全に検証された非核化協力
(2)日米韓共助・日韓関係改善
(3)米韓同盟強化策協議

これら3項目は、韓国にとっては頭の痛い問題ばかりです。

韓国は、米韓同盟による安全保障体制によって平和が維持されている現実を忘れかけています。韓国の独自性を主張して、米韓同盟の枠から飛び出しそうな動きを見せ、米国の神経を逆なですることが多くなっています。

米朝会談は、2度も開きながら目立った成果が上がっていません。この裏に、韓国の文大統領が、米国の厳しい「完全に検証された非核化」(FFVD)について、北朝鮮を誤解させるようなメッセージを送っているのでないか、と疑われています。ベトナムでの2回目の米朝首脳会談で、文大統領と金国務委員長の2人が「調印確実」と見ていたのは、文氏が金氏に誤った情報を提供していた証拠です。

こうなると、文大統領に正しい国際認識を持ってもらう以外に、前記の3項目は解決しないことになります。

なぜ文在寅大統領は「親中朝・反日米」路線を歩むのか

(1)(2)(3)に共通している点は、文氏の間違った理念が大きく災いしていることが分ります。それは文氏が、北朝鮮の金日成が唱えた「主体(チュチェ)思想」に深く傾倒していることです。チュチェ思想なるものは、提案者自身が脱北して、その誤りを指摘した個人崇拝思想です。

文氏は、20代の若い時代に洗脳されています。民主国の大統領が、専制主義の北朝鮮思想に傾倒していること自体、韓国の国政を歪めます。韓国プロテスタント教会会長が、個人資格で「年内に文大統領下野を要求する」声明を発表しました。理由は、「主体思想」に毒されており、韓国が思想的にも滅亡に追い込まれるという危機感でした。

文氏は、「主体思想」に影響された結果、「親中朝・反日米」路線を歩んでいます。前記の3項目は、まさにこの路線がもたらした外交現象です。

米国が、「(2)日米韓共助・日韓関係改善」において、日韓関係の改善を求めています。米国は、日韓関係悪化の原因が韓国にあると判断したのです。

決め球は、徴用工問題でしょう。韓国大法院(最高裁判所)が、1965年の日韓基本条約で解決済みの問題をひっくり返す判決を出したことの裏に、文大統領の示唆があったことは十分に想像できます。昨年8月、文氏は大法院判決を示唆する演説をしました。本来ならば、国際問題に発展する徴用工問題ですから、文大統領は発言を慎むべきものなのです。その禁を破ったところに、文氏の積極的関与という疑惑を感じます。

Next: 米国は韓国が悪いと判断。日韓関係が改善しない場合、日本には奥の手がある



日本が持つ「外交的保護権」

こういう経緯があるので、韓国政府は「大法院判決に関与できない」という理由で、日本政府の対話提案に応じずに放置しています。文氏の「親中朝・反日米」路線が生み出した判断です。

しかし、トランプ大統領が米韓首脳会談で正式議題にしたことは、韓国の非を前提にしています。文大統領が、トランプ大統領の要請を断って、日韓関係改善に動かない場合はどうなるでしょう。

それは、日本が国際的に認められている「外交的保護権」の発動を行う道が開けることです。

外交的保護権とは、次のような内容です。日韓に限定して説明します。

「日本の国籍を有する私人が、韓国の国際違法行為によって損害を受けた場合に、日本国が国際違法行為を行った韓国に対して国家責任を追及する国際法上の権限である」

日本企業は、日韓基本条約を覆した国際違法行為によって、韓国から損害を受ければ、日本政府が韓国に対して国家責任を追及できる権限を持つというのです。

日本から「外交的保護権」が発動されるとどうなるでしょうか。

日本の反撃で崩れ去る韓国

韓国の元国立外交院長で現在は、韓国外国語大学碩座(せきざ)教授の尹徳敏(ユン・ドクミン)氏は、次のように指摘しています。要旨をまとめます(『朝鮮日報』6月9日付「米中日の報復におびえる韓国」と題する寄稿の引用です)。

(1)韓国の旧徴用工被害者たちは、法的手続きを踏んで韓国国内にある日本企業の資産を差し押さえて売却する。

(2)日本政府は外交的保護権を発動して報復に出る。その場合、日本の製品・半製品・部品に依存する韓国主力製品である有機発光ダイオード(OLED)、スマートフォン、半導体生産のすべてが「まひ」する。また、金融措置により韓国の信頼度が下がり、韓国経済に大きな打撃を与える可能性がある。

これまで、外交的保護権の問題はあまり注目されませんでした。「報復」というイメージで捉えられてきたからです。しかし、「外交的保護権」という立派な国際法の規定があれば、堂々と活用するしかありません。

韓国大法院が、あえて現代意識の「人権」という言葉で、70年以上前の問題を裁けるかという基本的な疑問もあります。罪刑法定主義に基づき、その時に存在した法律で裁くのが原則です。後から生まれた「人権意識」で裁けません。しかも、日韓基本条約を否定した判決である以上、日本は胸を張って「外交的保護権」に基づいて対抗すべきでしょう。

Next: 日韓の法的紛争は、長い目でみれば両国関係の正常化につながる



日韓の法的紛争は、長い目でみれば両国関係の正常化につながる

韓国大法院は文大統領へ「忖度」した判決を出したばかりに、韓国経済を塗炭の苦しみに追い込みます。司法が、条約という高度の行政行為に踏み込んで来た結果が、日本に外交的保護権を発動させる結果となったのです。

日韓という隣国同士が、こういう法的に争う事態に入ることは、長い目で見れば両国関係の正常化につながるはずです。

韓国が、日本は憎いという感情論で外交を進めることは、いかに非生産的であるか。文政権は、それを立証した形になりました。

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中韓は没落文明の典型へ

ここで、韓国の属する儒教文明圏が、1つの文明的な衝撃に出会ったときの対応について、冒頭に引用したトインビー史観で説明したいと思います。

新しい文明が出現した際、既存の文明はどう対応するのでしょうか。トインビーは2つあると指摘しました――
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勝又壽良の経済時評』(2019年6月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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勝又壽良の経済時評

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経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。

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