米フェイスブックは6月18日、2020年より仮想通貨「Libra(リブラ)」を使った金融サービスを開始すると発表しました。このリブラは、ビットコインなど他の仮想通貨を駆逐する可能性をも秘めています。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2019年6月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
マネロンにも使われる?新たな仮想通貨というより「新たな通貨」
フェイスブックの仮想通貨「リブラ」とは?
新たな仮想通貨(暗号資産:cryptocurrency)「リブラ(libra)」の概要が公表されました。
これ、「バッタもの」感を消すことに腐心していて、興味深いです。誰もが一度は中身を見ておくべきです。
ということで、概要はこちらからご覧ください。このリンクは日本語版です。サイトの「ホワイトペーパー」が概要そのものです。
この「リブラ協会」なるサイト、色んな言語で観ることが可能です。英・仏・中はもちろん、ドイツ語・ロシア語・スペイン語・ポルトガル語、そして何故かインドネシア語版が選べます。日本の新聞報道は、このサイトにある日本語版をほぼコピペしたものです。
ビットコインとは違って「価値の裏付け」がある
ビットコインとの大きな違いは「価値の裏付けがある」という点でしょうか。
潔いくらい、各国の信用力をパクっています。リブラの価値は「安定性と信頼性のある中央銀行が発行する通貨での銀行預金や短期国債など、価格変動率の低い資産の集合体により裏付け」られている、とのことです。
詳細は見つからなかったのですが、ドルやユーロ、円などの通貨や短期国債利回り(価格)を「がっちゃんこ」して「バスケット価格」を作り、それをリブラのレートとする、そんな感じです。
IMFのSDR(Special Drawing Rights:特別引出権)や、複数通貨の為替レート貿易の比率で合わせた「実効為替レート」などと、「がっちゃんこ」の仕方は一緒です。
リブラは、米国債等の信用力を丸ごと借りたデジタル通貨とも言えそうです。
Next: リブラは世界中で使われる?それともマイナーコインのまま終わる?
リブラは人気化するのか?
リブラがビットコイン等の目指す仮想通貨の姿と同じなのか違うのか、既に様々な意見が出ています。
ただ、唯一の関心事は、リブラが世界中で使われるようになるか、それだけです。
「エジプトはナイルの賜物」であるならば、おカネは「信用の賜物」です。ビットコインが一般的に普及していないのも、1つには「信用」に難があるためです。
その点、リブラは「パクリの信用」を得ています。フェイスブックやビザなど有名企業の「信用」も活用しようとしています。
おカネの機能を果たす可能性はあるのではないでしょうか。
リブラは新たな「通貨」になりうる
金融市場の者としては、バスケット通貨とリブラ、そしてドルやユーロ、円などとの換算レートがどのようになるのか、関心が高まります。
恐らく登場当初は理論値よりもリブラは高めで取引されるはずです。ビットコインほど乱高下はしないでしょうけど、多少のプレミアムは付くでしょうから。
その上で、理論値と実際の値との乖離を狙ったアービトラージ、裁定取引の機会も生まれるかも。ノリは日経平均先物と日経平均225銘柄から算出される理論値との差を狙った裁定売り・買いと同じです。
そんな想像を巡らせてみると、リブラは「新たな仮想通貨」というより、単に「新たな通貨」と呼んだ方がスッキリします。「デジタル国リブラの通貨」てな感覚です。
Next: ビットコインほか仮想通貨の存在感を薄める?リブラの可能性は…
ビットコインほか仮想通貨の存在感を薄める?
もし、リブラがサイバー空間での通貨として認知されれば、ビットコインをはじめとする仮想通貨の存在感は薄れる可能性が高まります。
変な話ですが、マネーロンダリングにもリブラが使えるかどうか、そんな闇の世界での利便性も高まれば、ますます他の仮想通貨の存在感は薄れます。
もちろん、国内金融機関なんかが実験している仮想通貨なんて、見向きもされなくなるはずです。
信用をパクられる各国中央銀行の存在意義も含めて、リブラの動向は注目されそうです。
<今回のまとめ>
・フェイスブックなど、新仮想通貨「リブラ」導入を公表
・おカネに必要な「信用」を予め備えている分、他の仮想通貨より使われやすい
・各国中銀の存在意義にまで議論が発展すれば面白い
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『高梨彰『しん・古今東西』』(2019年6月19日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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