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Libraが期待されるのには理由がある、ほかの暗号通貨にない特別な特徴とは?=シバタナオキ

Facebookがついに、長い期間噂されていた独自の暗号通貨Libraを発表しました。今回は、原本に当たるホワイトペーパーを詳しく読み解いていきたいと思います。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2019年7月2日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

Libraについて今知っておくべき3つのポイント

Q. Facebookが発表した新しい暗号通貨Libraの特徴とは?

A. 以下の3つ。
1. 安全で、スケーラブルで、信頼性の高いブロックチェーンを基盤とする
2. 実態価値を付与するための、資産のリザーブを裏付けとする
3. エコシステムの発展を目指す、独立したLibra協会がLibraを運営する

これまでも長い期間噂されていましたが、ついにFacebookが独自の暗号通貨Libraを発表しました。

今日の記事では、このLibraに関して、原本に当たるホワイトペーパーを詳しく読み解いていきたいと思います。

読書の方の中にはお忙しい方がとても多いかと思いますが、この記事では、原本に当たるホワイトペーパーに基づいて、Libraについて今知っておくべきことを簡潔にまとめてみたいと思います。

※参考:Libra ホワイトペーパー

初めに、Libraがどのようなことをしようとしているのかというのを簡単に解説したビデオがこちらにありますので、是非ご覧下さい。時間としては90秒の、短いビデオになっています。

Next: Facebookは、なんのためにLibraを作ることにしたのか?



Libraが解決しようとしている課題

Facebookがこれだけ大掛かりにプレスリリースを打っているので、どのような課題を解決しようとしているのか、というのをまずはしっかり押さえておきましょう。

LibraのWebサイトにある情報を、こちらにまとめてみました。

Libraが今回解決しようとしている課題はここにあるように、お金回りの保管や決済、そして送金に、まだまだ大きな課題があるという認識で、それらを解決するソリューションがLibraであるとされています。

特に、世界中で10億人がスマホを持ち、5億人がインターネットにアクセスできるにも関わらず、いまだ17億人もの大人が従来の銀行口座を持てず、金融システムの外側に追いやられている、という点を大きな問題にしているのが、Facebookらしくてとても印象的でした。

Libraがユニークな点

ホワイトペーパーによると、Libraがユニークなのは以下の3点にあると書かれています。以下では詳しく、それぞれを見ていきたいと思います。

1. 安全で、スケーラブルで、信頼性の高いブロックチェーンを基盤とする
2. 実態価値を付与するための、資産のリザーブを裏付けとする
3. エコシステムの発展を目指す、独立したLibra協会がLibraを運営する

Next: 現在の仮想通貨にはないLibraに期待される点とは?



特徴その1: ブロックチェーンを基盤とする

特徴の一つ目は、ブロックチェーンを基盤とするという点です。

Libra通貨の基盤は「Libraブロックチェーン」です。全世界のオーディエンスに対応することを意図しているため、Libraブロックチェーンを実装するソフトウェアはオープンソースです。つまり、これをベースに誰もが開発を行うことができ、多くの人びとがこれを利用して金融ニーズを満たせるようになっています。

今回、事前の予測では、Facebookが自社で保有する金融サービスをリリースするのではないか、という噂もありましたが、そうではなく、Facebookとは独立したLibra Associationが、Libraブロックチェーンを運用する形になります。

それだけではなく、Libraブロックチェーンを実装するソフトウェアもオープンソースにするというように、Facebookとは完全に切り離されて運用されるのが特徴的です。

事前の予想報道を見ている限りにおいては、Facebookが独自通貨を開発するのであれば、ブロックチェーンに必ずしも依存する必要はないのかなと、個人的には思っていました。

しかしこのように運営組織面だけではなく、ソースコードまでオープンにするのであれば、ブロックチェーンという仕組みを利用するのはとても合理的だと思えるようになりました。

Libraのブロックチェーンに要求される要件は、以下の3つです。

・数十億のアカウントに対応できるスケーラビリティ。特に、高い取引スループット、低遅延性、効率的で容量の大きいストレージシステムが必要
・堅固なセキュリティ。資金や財務情報の安全を確保するため。
・柔軟性。Libraエコシステムのガバナンスを可能にすると共に、金融サービスのさらなるイノベーションを可能にするため。

冒頭で述べられた社会問題を解決するために、この3つの要件が必要だと、勘の良い方であればすぐご理解頂けたのではないかと思います。

スケーラビリティとスループットに関しては、現在の暗号通貨で必ずしも優れていると言えない部分もあるかと思いますので、Libraに期待したいと思います。

セキュリティに関しては、皆さんご存知かと思いますが、暗号通貨関連で非常に大きなセキュリティインシデントが何度も起きていますので、こちらも期待したいところです。

最後の柔軟性という点に関しては、今回の仕組みは非常にオープンで、かつ透明性が高いので、こちらも期待したいところです。

Next: ビットコインなど、ほかの暗号通貨と大きく異なる点とは?



特徴その2: 通貨とリザーブ

今回個人的に最も驚いたのは、Libraという通貨は、法定通貨をリザーブとして要求することを、最初からアナウンスしている点です。

今日の暗号通貨の多く(ビットコイン、イーサなど)には基盤となって支える資産がありません。その結果、主なユースケースは投機と投資になっています。価値が大幅に上昇する可能性があるため、多くの人が後で価値が上がることを期待してそれらのコインを購入しているのです。これらの通貨の長期的価値やそのネットワークに対する信用と同様に、その価格も変動し、時として大幅な価値の揺れを生み出します。

ここで書かれていることは非常にインパクトがあります。現在の暗号通貨は、基盤になる資産がないため、投機や投資目的にしかならない、と明言されています。

リザーブの資金源
リザーブの資金源は2つあります。それぞれの投資トークンの投資家と、Libraユーザーです。協会は創立者へのインセンティブをLibraコインで支払い、ユーザー、販売者、開発者による採用を促します。インセンティブとして配られるコインの資金源は投資家私募です。ユーザー側では、新しLibraコインの作成のために、法定通貨と等価のLibraを購入してその法定通貨をリザーブに移行する必要があります。したがって、リザーブはLibraに対するユーザーの需要が高まるにつれて増大します。つまり、投資家とユーザーのいずれの側でも、Libraの作成を増やす方法はただ一つ、法定通貨によるLibra購入を増やしてリザーブを増大させることです。

Libraのユーザーは、Libra通貨を得るために法定通貨を支払う必要がある、というのがビットコインなどの暗号通貨との違いです。

つまり、リブラ通貨を増やす唯一の方法は、ユーザーからの法定通貨の支払いを増やすことであるという意味です。

リザーブの投資方法
Libraのユーザーはリザーブからの利益を受け取りません。リザーブは低リスク資産に投資され、時間をかけて利子を生み出します。この利子による収入はまず、Libra エコシステムの拡大と発展のための投資、NGO への助成、エンジニアリング調査への資金提供などといった協会の運営費用のサポートに利用されます。それが充足された後の利益は、初期投資家に当初の出資に対する配当をLibra投資トークンで支払うために活用されます。リザーブ資産は低リスクで低利回りなので、初期投資家への利益が具体化するのは、ネットワークが成功し、リザーブの規模が大幅に拡大した場合に限られます。

そしてさらに驚いたのが、Libra通貨を購入する入金された法定通貨を低リスク資産に投資をして、利子を生み出す、と明言されている点です。

生み出された利子は、Libra Associationの運営費用に使われるだけではなく、初期投資家に対して配当という形で分配されるとも書かれています。

Next: Libraは、Facebookが発行するわけではない?



特徴その3: 独立したLibra協会が運営

最後に押さえておくべきことは、Libraの運営は独立したLibra Associationが行うという点です。

Libra協会は、独立・非営利・メンバー制の組織で、スイスのジュネーブに本部を置きます。
Libra協会のメンバーは、さまざまな地域に拠点を置く多様な企業、非営利組織や多国間組織、学術機関などで 構成されます。初期メンバーとして協力して協会の設立趣意書をまとめ、完成後に「創立者」となる組織は以下の とおりです(業界別)。

Libra Associationはスイスのジュネーブに本部を置く、独立したノンプロフィットの形で運営されるとのことです。

初期の創立者は以下になります。

最後に、Facebook の役割についても明確に書かれています。

Facebook, Inc.の役割についての注記
FacebookチームはLibra協会とLibraブロックチェーンを創立するために他の創立者と協力して重要な役割を果たしました。最終的な意思決定の権限は協会にありますが、Facebookは2019年の残りの期間も引き続き指導的な役割を果たしていくでしょう。Facebookは「Calibra」という規制対象子会社を設立しました。これはソーシャルデータとファイナンシャルデータを適切に分離し、Facebookの代わりにLibraネットワーク上でサービスを開発して運営することを目的とする会社です。Libraネットワークの運用開始後は、Facebookとその関連会社の責任や、特権、財務上の義務は他の創立者と同等になります。協会のガバナンスにおけるFacebookの役割も、協会のいちメンバーとして、他の多くのメンバーの役割と等しくなります。

Facebookは創設者の一人であり、かつLibraを支援するための子会社も設立していますが、Libraと言う暗号通貨の運営はFacebookとは切り離され、独立して行われていくことが明確に宣言されています。

Next: Libraを発行するために残る不安な点とは?



今後のLibra関連で注目すべき点は?

1つ目は規制面です。現時点で既にアメリカの規制当局がLibraは証券に該当するのではないかとの見解が去年も発表されており、まだまだ規制面で不透明な部分も多く残っているのは事実です。

2つ目に、リリース時点で28社とされる創設者が、2020年のLibraローンチまでに100社程度まで増やしたいというアナウンスがありましたが、リリース時点でどの程度のサービスがLibraでの支払いを許容することになるのか、というのがひとつの見所だとは思います。

3つ目に、リリース時点での対応法定通貨がどのようになるか、という点も見ものです。既にG7の国々からは、規制面でのリスクが指摘されていますが、日本もリリース時の対応通貨に含まれるのかどうかというのは注目したいと思います。

4つ目に、Facebookをはじめとした創設者たちが、この新しい暗号通貨をどのように普及させていくのかが楽しみです。

こちらの図が、ペイメントネットワークの普及施策です。

日本のLine PayやPay Payも含まれていますが、各社かなり大規模なキャンペーンを行っています。

Facebookは、過去に自社でペイメントサービスをFacebook Messengerに導入したことがありますが、あまり使われているとは言えません。

WeChat Payが開始した時、WeChatユーザーのうちWeChat Payを利用したのはたったの8%でした。

WeChat Payはその後、紅包(Red Pocket)」によって普及しましたが、Libraの創設者にはFacebook、Uber、Lyftなどのメンバーが名を連ねているとはいえ、単に決済手段としてサービスに追加されただけでは普及しないのかもしれません。

例えば、「Libraで決済すれば X(=2)%引き」のようなキャンペーンが行われるかもしれませんね。既存の決済手段(クレジットカードなど)の手数料分だけ、ユーザーに還元しても同じですので。

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image by : Wit Olszewski / Shutterstock.com

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『決算が読めるようになるノート』 2019年7月2日号『Q. 世界最大級のクラウドソーシングプラットフォームFiverrの最大の特徴とは?』より抜粋
※記事タイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部による

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