安倍首相は、今回10%に消費税を上げたら向こう10年は上げなくてよいといった趣旨の発言をしています。税金の使い道も不透明な今、信じていいのでしょうか?(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
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既存の税収だけでは対応不能?金利が上昇したら大変なことになる
向こう10年は増税なし?
参議院選挙が本格スタートしています。
安倍首相は、今回10%に消費税を上げたら向こう10年は上げなくていいと言った趣旨の発言をしています。
そもそも自分が総理大臣を降りた後までどうやってギャランティできるのか。そんな素朴な疑問が湧くわけです。
2012年「3党合意」の枠組みはまったく守られていない
すでに7年も前の話というと、多くの方が記憶になくなっている可能性が高いと思います。
そもそも消費税を段階的に10%に上げるというのは、当時の民主党と公明党を含めた3党合意なるものからスタートしているわけです。
(参院選も近いのであまり政治的なことをくどくど書きたくはありませんが)平成27年の政府資料では、消費税率引き上げによる増税分は、全額社会保障に回すことになっているはずです。
<当初の予定では…>
およそ14兆円とみられる増税分の使い道(内訳)としては……
・後代への負担のつけ回しの軽減:7.3兆円
・基礎年金の国庫負担割合2分の1の恒久化:3.2兆円
・社会保障の充実(社会保障4経費):2.8兆円
・消費税率引き上げに伴う経費増加の対応:0.8兆円
となるはずだったわけです。
また「社会保障の充実」の財源2.8兆円の内訳としては……
・医療・介護:1.5兆円
・子育て:0.7兆円
・年金:0.6兆円
だったはずです。
<ところが現在は…>
ところが現在では増税分の使い道は以下のように変更されています。
・後代への負担のつけ回しの軽減:2.8兆円
・少子化対策(人づくり革命):1.7兆円
・社会保障の充実:1.1兆円
まだすべての増税が完了していないわけですからここからどうなるかですが、すでに後代への負担の付け回しの軽減4兆円はいとも簡単に減らされて、1.7兆円は「人づくり革命」と呼ばれる教育無償化と少子化対策に充当されてしまっています。
「人づくり革命」と言えば聞こえはいいですが、幼児教育の無償化待機児童の解消、高等教育の無償化、私立高校の授業料実質無料化、保育士・介護人材の処遇改善、大学改革、リカレント教育、高齢者雇用促進などはほとんどうまくいっていないのが実情。
こうしてみてきますと、増税しても果たして何に使われるのかはよくわからないことが鮮明になってきます。
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金利が上昇したら既存税収だけでは対応不能
さて、ここからがいよいよ本題となります。
安倍首相は、大切なのは実体経済を良くすることで、金融政策が雇用に働きかけ、デフレではない状況を極めて短い間で達成することができたとしています。
しかし実際には経済は決して良くなっておらず、デフレも完全に抜け出せたわけではない点が非常に気になるところです。
とくに、ここ30年ほとんど金利がつかないゼロ金利政策をとってきたことで、政府はいくら国債を乱発してもほとんど借金の金利を負担しないままに負債を大きくさせてきたことから、利払いの恐怖というものをすっかりお忘れのようです。
しかし、財務省が2017年に出した試算でも、金利がここから1%上昇すれば利払い費を含めた国債費は2020年度で3.6兆円増、2%上昇すれば7.3兆円増になります。
仮に3%の経済成長がはかられても、6.4兆円の赤字になると試算しているわけです。
追加の増税はありえる
今のところ、そこまでの金利上昇がにわかに起こる可能性は低くなっています。
しかし、もしスタグフレーションのような状況に陥れば、日本も利上げを行わざるをえず、また外的な要因で米国をはじめとして他国で暴落のような事態が発生して金融パニックになれば、日本国債もどうなるかはまったくわかりません。
そして金利の上昇が続けば、足元の税収ではとても利払いができなくなり、さらなる借金か増税がめぐって来る可能性はまったく否定できない状況にあると思われます。
財政ファイナンス漬けでぼけたのか?
平成の30年間、政府はほとんど赤字国債の利払いをせずに済んできています。
足元の日銀黒田緩和による国債買い入れというほとんど財政ファイナンスに近い状態につかり過ぎて、金利のことがまったく頭に浮かばなくなっているとしか思えない状況です。
Next: 政府にビジョンはあるのか?10年間「増税なし」は信用できない
10年間「増税なし」は信用できない
とにかく税金のことは、個別世帯にとっては非常に重要な要件となっており、もはや適当には聞き流せないところに来ているのは間違いありません。
国家統計は、もはや何が本当かよくわからない世界に陥っています。
税収とその使い道、この先の消費税率引き上げの見通しについては、適当なことを言わずに、ぜひもっとしっかりとしたビジョンを提示してほしいと願うばかりです。
徴収した税金はちっとも社会保障には使われず、適当に消費されていて、「ここから先の消費増税の心配はない」と言われても、誰も安心できないのが現状ではないでしょうか。
個人的にはとても嫌な予感しかしない足元の状況です。
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※太字はMONEY VOICE編集部による
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