fbpx

最低賃金のアトキンソンの指摘と各国GDPの20年間の推移比較=世に倦む日日

立憲民主党が最低賃金を1300円に引き上げることを参院選の公約に据えた。太郎新党は1500円(政府補償付)を公約に掲げている。選挙の論戦で最低賃金が焦点になることは結構なことだ。社会保障の財源を立て直すためには、所得と税収を増やさなければならず、そのためにはGDPを拡大させなければならない。それは賃金を引き上げて労働者の購買力を高め、個人消費(内需)を拡大させることによって実現される。(『世に倦む日日』)

(※本記事は有料メルマガ『世に倦む日日』2019年6月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。)

(※編注:2019年7月4日、初出時よりタイトルを変更しております)

日本経済の景気回復は、広範な国民の所得の増大によってのみもたらされる。論戦を先取りする意味で、デービッド・アトキンソンが昨年3月に東洋経済に寄稿した記事に着目しよう。アトキンソンは今年4月17日の報道1930に出演し、日本の最低賃金は低すぎるという持論を述べている。あの反響を呼んだところの、20年間で他の先進諸国は時給が70%伸びているのに、日本だけが-9%と落ち込んでいるではないかという衝撃のOECD統計が紹介された放送回である。1年前の東洋経済の論稿では、日本の最低賃金は台湾や韓国よりも低く、豪州やフランスの5割から6割の水準でしかない事実が示されている。

この記事のハイライトは、労働者の質(a)と最低賃金(b)の関係を指標表現した絶妙なグラフの説得だろう。日本の労働者は世界第4位の質の高さを持ちながら、最低賃金では先進諸国中最低レベルに甘んじさせられていて、その乖離が甚だしいと指摘している。まさに正鵠を射たデータ分析であり、我が意を得たりと膝を打つ本質的な説明である。労働力商品の不等価交換の真実暴露。これこそエコノミクスだ。画期的な問題提起であると評価したい。このアトキンソンのモデル解析に加えて付言する議論があるとすれば、aとbのギャップ分である価値生産はどこへ行ったかという問題である。消えたわけではない。生産されてないわけでもない。言うまでもなく、その価値分は内部留保と配当金とケイマン諸島に計上されているのであり、特別剰余価値の集積となって資本会計に回収されているのだ。日本の労働者が働いてないわけではない。その真相までアトキンソンが言及すれば満点なのだが、マルクス経済学の知識と視角がないとそこまでの究明や結論には行き着かない。しかし、見事な分析と提起であり、どうして日本のアカデミーの経済学者はこれができないのだろうと溜息をつく。

日本の労働者の能力に注目し、経済学的観点から問題を正しく洞察したアトキンソンの功績を称えたい。特別剰余価値(内部留保+配当金+ケイマン資金)を年70兆円も溜め込んでいる絶倫資本主義国など、米国は知らないが、日本以外には他にないのだ。特別剰余価値への搾取分が半分になれば、すなわち年40兆円が労働者と国庫に還流されれば、年金財源は立て直され、非正規労働者の年収は倍になり、日本経済は年5%以上の成長軌道に乗ることができる。その内容については別途論じるとして、まず何より言いたいのは、日本経済の右肩上がりは終わってないという事実であり、右肩上がりは終わったなどと軽々しく言うべきではないということである。田中優子や小熊英二が無分別に言うような、経済成長が不能なインポテンツには日本人はなっていない。脱構築の左翼社会学者は経済を何も知らない。経済を語る言葉を持っていない。知らないくせに知ったようなことを言い、経済成長は悪だと呪文を吹き込み、日本人を経済能力の自信喪失と自己否定に追い込む。日本人に自虐経済観を刷り込み、経済成長を憎悪させる。ユニクロ着て鍋をすすって満足する緊縮教の信徒にする。去勢動物にする。

190625yoniagumuhibi_2

■各国のGDPの伸びを比較するグラフを自製した。日本経済の異常な病態がよく了解・納得できる図だ。1994年を100とした25年間の伸び、1999年を100とした20年間の伸び、二つのグラフを作成して各国のGDPの推移を検証した。1994年から2019年の間に、米国は2.9倍になり、英国は2.7倍となり、フランスは2倍の経済となった。日本は1.1倍である。ちなみに、韓国は5倍となり、豪州は4.1倍になっている。

■1999年から2019年の間に、米国は2倍に、英国は2.1倍に、フランスは1.7倍に、ドイツも1.6倍になっている。日本は1.1倍と冬眠。引きこもり。今回、グラフ作成の作業をしながら再発見した重要な事実を申し上げると、この20年間の各国の平均成長率が、米国5.1%、英国5.6%、フランス3.6%、ドイツ3.4%だったということだ。高い。20年間の平均成長率である。日本は0.4%。日本が長くゼロ成長で、失われた30年を続けていることは誰もが既知の事項だが、他国の経済成長率が思っていた以上に高いのに驚く。

190625yoniagumuhibi_3

ドイツの20年間の平均成長率は年3.4%である。この数字を日本に適用して、1999年のGDP値519兆円から年3.4%で成長を続けたと仮定するとどうなるか。20年後である今年2019年、めでたく1000兆円を超える試算の結果が出る。フランスの平均成長率3.6%を当て嵌めると、昨年2018年にGDP1000兆円を突破している。英国の実績である年5.6%で試算すると、7年前の2012年にとっくに1000兆円を突破し、何と今年2019年には1500兆円の大台に乗っていた。他の国と同じようにやっていれば、日本は1000兆円の経済規模に達していて、所得も税収も2倍になっていたのである。年金基金の財源も万全だったのだ。不安なく働き暮らせたのだ。今、われわれは、GDP1000兆円の高みなど夢の夢だと思っている。だが、20年前の当時、20年後のGDP1000兆円は決して不可能な未来ではなかったし、実際にEU諸国は20年で2倍化を達成している。韓国は20年で3.2倍にしている。平均成長率は11.1%だ。他諸国が何か特別な施策を行ったわけではない。日本が間違った制度改悪のために自滅型の病気になり、さらに自虐経済観の自己否定に陥ったことが原因だ。

ジョン・レノンは「想像せよ」と言った。想像力を持つべきなのだ。内部留保と配当金とケイマン諸島に積み上がっている年70兆円を、そのせめて半分の年40兆円を労働者と国庫に回し、すなわち所得と税収に正しく還流すれば、消費(内需)が自律的に回復し、日本経済は健康を取り戻し、年率5%から7%の拡大循環の運動を始めるとができる。社会保障の財源不足も解消され、子どもの貧困も解消され、現役世代は夢を持って会社に出勤し、若者は結婚して二人の子どもを育てる家庭を持つことができる。最後に、各国GDP値の推移を比較するスプレッドシートの入力とグラフ化の作業をしながら、私は「泣いたエリツィン」を思い出した。泣いたエリツィンを思い出して胸が詰まった。91年だったか、訪米してヒューストンのスーパーマーケットを視察したとき、店に溢れる食料品の数々を見て、目眩のするような豊かさを目の当たりにして、ロシアはどうしてこれほど酷い仕打ちを受けなければいけなかったのかと、涙が止まらなかったエリツィンを思い出した。ロシアだけが、どうして地獄の運命を遭わされなければならないのかと、人目も憚らず号泣したエリツィンを思い出した。

いい男だった。

有料メルマガ好評配信中!初月無料です

<初月無料購読ですぐ読める! 7月配信済みバックナンバー>

※2019年7月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2019年7月配信分
  • 消費税を選挙の争点から隠すマスコミ – 所得階級別世帯分布の変容(7/3)
  • 7/1号の配信は7/2以降になります。(7/1)

いますぐ初月無料購読!


※本記事は有料メルマガ『世に倦む日日』2019年6月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込324円)。

2019年6月配信分
  • 韓国を見よ、AIロボットを社会保障の肩車図の分母に描き入れよ(6/26)
  • MMTについて – 年40兆円の薔薇マーク政策出動を躊躇せずやれ(6/24)
  • 最低賃金のアトキンソンの指摘と各国GDPの20年間の推移比較(6/21)
  • 三位一体 – GDPの長期低迷、賃金の削減と抑制、内部留保の絶倫増殖(6/19)
  • 日本経済の右肩上がりは終わったのか - 否、力強く絶倫的に続いている(6/17)
  • GDPを2倍にして年金財政を立て直そう – 拒食症経済からの脱却を(6/12)
  • 日本の財政と経済は緊縮なのか放漫なのか – 予備的認識整理(6/11)
  • ひきこもりの問題解決 – 年25兆円の薔薇マーク出動で希望と再生(6/5)
  • 「引きこもり」って言うな - 行政とマスコミは刺激と連鎖への深慮を(6/3)

2019年6月のバックナンバーを購入する

2019年5月配信分
  • 川崎登戸の児童殺傷事件 – 小社会の倫理(5/29)
  • 菅野完の性的暴行事件を考える – 書類送検まで7年かかった理由(5/22)
  • 野党は消費税と女系天皇を選挙の争点にせよ – 主役の勢いの太郎新党(5/21)
  • 天木直人氏との対談 – 5月17日(5/17)
  • そんたくナルちゃん – 安倍政治に手を貸して国民の分断を深める新天皇(5/16)
  • 正念場の共産党 – しばき隊バブルの崩壊、問われる27回党大会テーゼ(5/13)
  • なぜ立憲民主は支持率を半減させたのか – 枝野幸男のヤヌスの顔(5/8)
  • 変節を美化・肯定する河西秀哉の言説工作 – 「古層」に屈服した新天皇(5/7)
  • 「皆さんとともに日本国憲法を守り」と言わなかった新天皇(5/3)

2019年5月のバックナンバーを購入する

2019年4月配信分
  • 令和の皇室像 – 上皇家・天皇家・皇嗣家が三者共同して象徴天皇制を担う(4/29)
  • 天木直人氏との対談動画 – 4月26日(4/26)
  • 共産党の屈辱的惨敗 – 展望を失って清算を迫られている「野党共闘」(4/22)
  • 万葉集を売った中西進 – 忖度学者の口から出任せの曲学プロパガンダ(4/18)
  • 中西進の爆弾証言 – 「考案者は私ではない、粘土を出しただけ」(4/17)
  • 「太郎新党」の登場 – 展望を失って混迷する野党と山口二郎の愚痴(4/10)
  • 中西進との約束を破って名前を出した安倍晋三 – 「令和」の好感度のため(4/8)
  • 安倍晋三の本命元号を潰した皇室 – 皮肉が重なって誕生した「令和」(4/5)
  • 天木直人氏との対談 – 4月3日(4/3)
  • 反中・国粋主義剥き出しの「安倍元号」とマスコミの奉祝セレモニー(4/2)

2019年4月のバックナンバーを購入する

2019年3月配信分
  • 国書と漢籍の両方を出典とする妥協的でアクロバティックな新元号(3/27)
  • 安倍晋三氏が皇太子に「安」の新元号を強要 – ゲンダイのスクープ(3/26)
  • 麻薬ビッグバン – 薬物解禁の扇動とグローバルスタンダードの洗脳(3/22)
  • 「作品には罪はない」という言説 – 薬物汚染された芸能の反社会性(3/18)
  • 安倍4選と「安」の新元号 – 安倍晋三氏が新天皇のゴッドファーザーに(3/15)
  • 陸前髙田と高台移転 – 復興構想会議、菅内閣、野田内閣、マスコミ(3/13)
  • 復興政策は失敗だった – 五百籏頭真と御厨貴は責任をとれ(3/11)
  • 「安」の字の新元号は内心の自由の侵害 – 野党は国会で質疑討論を(3/6)
  • 天木直人氏との対談動画 -3月4日(3/4)

2019年3月のバックナンバーを購入する

2019年2月配信分
  • 元山仁士郎は次にどう動くべきか – 野党の基本政策の変更を焦点に(2/26)
  • 24日には天皇陛下に日韓問題でお言葉を発していただきたい(2/20)
  • 家族会の後退姿勢と田中実氏の生存情報 – 「拉致問題」崩壊の兆し(2/18)
  • 天木直人氏との対談動画 – 2月16日(2/17)
  • 戦略的で計画的な文喜相発言の政治 – 天皇訪韓で歴史問題に終止符(2/13)
  • ロシアへの譲歩を遠慮と言うテレビ報道 – 安倍晋三氏氏の北方領土外交(2/12)
  • 和田春樹らの日韓問題声明 – 嘲笑する右翼、黙殺するマスコミと左翼(2/8)
  • 井出孫六の松陰批判 – 『幽囚論』と長州閥カルトの政治思想史(2/6)
  • 日韓基本条約の歴史認識 – 95年の岩波主催・日韓シンポジウム(2/4)

2019年2月のバックナンバーを購入する

2019年1月配信分
  • 三一節の日本のマスコミ報道を懸念する – 「価値観」と政治意識(1/31)
  • 天木直人氏との対談動画 – 1月29日(1/30)
  • 安倍晋三氏氏の支持率を高めるマスコミの韓国叩きと嫌韓過熱世論(1/28)
  • 1/25号の配信は1/26以降になります。(1/25)
  • 国後・択捉の割譲は容認できない – 日ソ共同宣言は無謬のドグマなのか(1/23)
  • ICJで日本は勝てるのか – ILO勧告、国連人権理事会、村山談話(1/21)
  • 文在寅は反日なのか – 日本マスコミの文在寅への誹謗中傷の嵐(1/18)
  • 徴用工問題のヒステリー – 嫌韓ショービニズムで染まった(1/16)
  • 【動画】天木直人氏との新春対談(1/11)
  • 2019年の朝鮮半島と米中新冷戦 – アメリカは常に『敵』を求めている(1/9)
  • リベラルからソシアルへ – 2019年、時代の底流(1/7)

2019年1月のバックナンバーを購入する

2018年12月配信分
  • 皇室の言論の自由 – 天皇誕生日の会見は新しい時代への布石(12/25)
  • 新防衛大綱 – 「統合作戦室」の出所は第4次アーミテージ・レポート(12/21)
  • 新防衛大綱と対中戦争 – いつの間にか軍事大国になっていた日本(12/19)
  • 辺野古の土砂投入 – 面妖で不自然なNHK-NW9の「街の声」(12/17)
  • 天木直人氏との対談 12月13日(12/14)
  • フランスにおける階級闘争の勝利 – 国民的争議で最賃月20万円(12/12)
  • 何を守りたいのだろう – 「多文化共生」の美名の下で進める新自由主義(12/10)
  • 人手不足は日本人で補え – 「君たちはどう生きるか」プロジェクトの提案(12/7)
  • AIがホワイトカラーの労働をリプレイスする – その意味を考える(12/5)

2018年12月のバックナンバーを購入する

2018年11月配信分
  • 正規・非正規・外国人の三階層の固定化 – 労働法制が解体された2018年(11/30)
  • ゴーン逮捕で移民法スピンに成功 – 日本をカースト構造にする移民政策(11/26)
  • 四島返還を不毛なナショナリズムだと貶める山口二郎の売国言説(11/21)
  • 孫崎享の『日本の国境問題』と東郷和彦の『日本の領土問題』を読む(11/19)
  • 二島返還で手打ちの暴挙 – 自画像の損壊、戦後日本の外交の否定(11/17)
  • 人手不足への対策案 – 200万人の引きこもりの再生とAIの活用を(11/14)
  • 入管法改正に反対する – 移民政策を美化・宣伝しすぎるマスコミ(11/13)
  • 11月11日、天木直人氏との対談(11/12)
  • オカシオコルテスは希望だ – 台頭する米国社会主義のシンボル(11/9)
  • トランプの独裁権力強化となった中間選挙 – トランプ主義の米国(11/7)
  • 『そろそろ左派は<経済>を語ろう』 – ブレイディみかこの序文(11/2)

2018年11月のバックナンバーを購入する

2018年10月配信分
  • マルクスと日本人 – 『きけ わだつみのこえ』と『君たちはどう生きるか』(10/29)
  • マルクスと日本人 – 世界一の右翼大国、世界一のマルクス大国(10/24)
  • マルクス生誕200年 – 世界での社会主義の意識調査結果と日本(10/22)
  • 天木塾で憲法9条について講演(10/19)
  • NHK「マネー・ワールド」第3回 – ミャンマーの農村金融禍に絶句(10/17)
  • 米国経済のディレンマ – 株暴落を導く高金利と中国制裁の二政策(10/12)
  • ペンス・ドクトリン – 同盟国日本への対中国経済制裁協調の押しつけ(10/10)
  • 玉城デニーはDCに飛べ、間髪を置かず自己決定外交に打って出よ(10/5)
  • 改憲シフトの党人事と安倍改憲の情勢 – 煽るマスコミ、醒める公明党(10/3)

2018年10月のバックナンバーを購入する

【関連】「7pay」不正利用続出でお先真っ暗。どこで「ファミペイ」と差が付いたのか?=岩田昭男

【関連】ファーウェイは死んでも潰さない。一般人が悪びれもせず知的財産を盗む中国の恐ろしさ=鈴木傾城

世に倦む日日』(2019年6月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

世に倦む日日

[月額330円(税込) 毎週月・水・金曜日(祝祭日を除く)予定]
ブログ「世に倦む日日」のメルマガ版です。政局分析、政策提言を中心に豊富な解説をお届けし、現代政治を読み解く視点をご提供します。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらTwitterでMONEY VOICEをフォロー

ついでに読みたい