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アメリカ大統領すら震え上がらせた「米FBIの諜報活動」を語ろう=不破利晴

市民の行動監視は何も東側諸国の専売特許ではない。アメリカではCIAが海外の諜報活動を主たる任務としており、国内についてはFBIが担当している。そしてこのFBIが市民の監視活動を推進していたのは見逃せない点である。(『インターネット政党が日本を変える!』不破利晴)

アメリカ合衆国大統領さえも諜報対象、FBI初代長官フーバーの闇

人間の性を逆手に取った国家による国民統制

1995年から1996年にかけて放映されたNHKスペシャル『映像の世紀』は、数あるNHKスペシャルの中でも金字塔と断言して差し支えない作品で、民放も含めた他のTVプログラムの追随を許さない歴史的な作品でもある。最近はデジタル・リマスター版も登場し、いまだ根強い人気を誇っている。

そんな『映像の世紀』の続編ともいえるのが『新・映像の世紀』であり、これは『映像の世紀』をさらに掘り下げた特異な番組で、「ここまで語ってしまって良いのか!?」とある種の驚愕を誘う、その意味では日本国民必見の作品だ。

この『新・映像の世紀』は第1集~第6集で構成されており、1月24日に放映されたのが第4集「世界は秘密と嘘に覆われた」である。

これはCIA、KGBなどアメリカ、旧ソ連を軸とした諜報機関の暗躍の記録であり、番組オープニングでは先般公開された旧東ドイツの国家保安省、番組では“秘密警察”と呼ばれていたが、この通称「シュタージ(Stasi)」が秘密裏に撮影していた映像が紹介されたのである。

旧東ドイツは監視国家として広く知られており、エスカレートした監視社会は西側諸国に通じたスパイ摘発のため、終には身内の内部告発を奨励するに至り、夫婦、兄弟はおろか親子の間であってもスパイとしてシュタージに“たれこみ”を謀るケースが相次いだ。

近親憎悪は身内であるがゆえに他人のそれよりも時として根深く、度し難く、そして自身ではどうにもならない人間の性を逆手に取った国家による国民統制である。

東ドイツが崩壊し、それまで隠されていた情報が暴露されたとき、それまで国家の犠牲になっていた人々は、自分を売ったのが自分の身内だったことを始めて知るに至る。この冷酷な事実に呑まれてしまった人は自ら命を絶った。

『新・映像の世紀』は内部告発を受けて一般市民を盗撮した映像、シュタージの具体的捜査の手口の映像を赤裸々に紹介していたのであった。

市民の監視は西側の盟主・アメリカでも行われていた

問題となるのは、このような市民への監視行動は何も東側諸国に限らないということだ。アメリカではCIAが海外の諜報活動を主たる任務としており、国内についてはFBIが担当している。そしてこのFBIがシュタージと何ら変わらない市民の監視活動を推進していたのは見逃せない点である。目的は「赤狩り」だ。

FBI(アメリカ連邦捜査局)の初代長官にしてその後48年間に渡り長官職にあったエドガー・フーバー自身も自他共に認める共産党嫌いであったために、国家権力を背景にした赤狩り活動は熾烈を極めた。文字通り、“秘密警察”の役割を果たしていたのである。

エドガー・フーバーについてはもう一つ見過ごしてはならない事実がある。「情報」というものが計り知れない権力の源泉となることを、おそらく最初に証明して見せたのがフーバーであるに違いないということ。48年も長官に居座るということは、尋常ならざる情報の蓄積をもたらすことを意味している。

いまでもアメリカ大統領の子息などの交友関係などはFBIによって瞬時に大統領の知るところとなり、一般の若者が楽しめる男女交際の大きな障害になっているといったように、とてもストレスフルな日常を彼らは送っている。

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エドガー・フーバーは盗聴を中心とし、有力議員はおろか大統領さえも諜報対象の一人に含めていた。政治家に限らずあらゆる著名人が諜報の対象となり、その中には俳優なども含まれていた。どうやら興味深い情報はすべてフーバーの元に上げられていたようである。こうして集積された「秘密ファイル」は大統領でさえも震え上がらせていたのである。

FBIの予算は常に一発で議会を通過したし、ホワイトハウス内にはフーバーの銅像すら据えられた。こんな離れ業をやったのは後にも先にもフーバーだけだ。これに異議を挟む者など一人もいなかった。彼の「秘密ファイル」が恐ろしかったのだ。

女装癖があったフーバーの闇

ちなみにフーバーは生涯独身を貫いたが、それは彼が同性愛者だったからだと、インターネットを検索すると、そんなフーバー譚がはじき出される。現在では同性愛者であること蝶々するのは一つの差別であると認められつつあるので、その是非はここでは問わない。しかし、ある種の嗜好を持っていた可能性はあるようだ。

というのも、その筋の方々が集まる会合にフーバーが出席しており、こともあろうに化粧をして女性の下着を身に着けていたという証言が残されているからだ。

このフーバーの話は案外本当かもしれない。彼は事実上、裏でアメリカを支配していると言っても過言ではなかったし、そのようは人間は経済も含めたあらゆる活動がフリーハンドであるからだ。要するに自由に何でもできる環境にあったのだ。

金、酒、セックス、麻薬、カルト教団…。権力と経済力はリンクしており、そんなフリーハンドを得た人間の活動はどんどんエスカレートしてゆき、最後にはカルト教団にハマるといったように自身の精神をもいじりだすようになる。

アメリカのエスタブリッシュメントがよく陥る罠である。フーバーが前述のような嗜好を持つに至ったとしても何ら不思議ではない。

アメリカは「自由の国」ではない

アメリカは「自由の国」であるというのは、もはや都市伝説である。

フーバーの時代は共産党員でなければ一般人は監視の対象とはならなかったが、現在はテロ撲滅の一環でごく普通に市民の日常が監視されているし、治安維持の効果もあるということで市民がそれを望んでいるふしもある。

また、エドワード・スノーデンが暴露したのはアメリカNSAによる海外要人への盗聴であった。

特にドイツのメルケル首相の携帯電話の盗聴は頻繁に取り沙汰されたが、その背景にあるのは彼女が旧東ドイツで英才教育を受けており、彼女の父親も熱心な社会主義者だったため、という話もまことしやかに聞こえてくる。

これも過去の赤狩りといったように、アメリカ人の基本的なメンタリティーが根底にあるような気がしてならない。

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次のターゲットはヒラリーの対抗馬、サンダース上院議員か?

ちょうどアメリカ大統領の予備選が始まったばかりだが、ヒラリー・クリントンの対抗馬、バーニー・サンダース上院議員は自ら「社会主義者」であることを堂々と定義している。

私が心配しているのは、無論彼が常軌を逸した盗聴、監視の対象になっているだろうことだ。本人もそれを重々承知しているだろうが、いよいよヒラリーが負けそうになった場合、サンダースのスキャンダルが待ったましたとばかりに暴かれそうな気がしている。

アメリカは、まあ、そんなお国柄なのである。

【関連】東芝と小沢一郎~「日本の基幹企業」が潰れない政治的カラクリ=不破利晴

インターネット政党が日本を変える!』(2016年2月4日号)より
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「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

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