世界的なリスク回避の動きの強まりにより、ドル円の105円割れ、10年債利回りのさらなる低下の可能性は十分ありうる。今後、日銀はどのような対策ができるのか。(『牛さん熊さんの本日の債券』久保田博幸)
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FRBのような予防的措置はきびしい、日銀が打つべき手とは?
物価安定の目標が達成できなさそうであれば、追加緩和が行われる?
世界的なリスク回避の動きの強まりにより、ドル円は一時105円台、日本の10年債利回りはマイナス0.200%という日銀の長期金利コントロールの下限を下回ってきた。この水準でいったんリスク回避の巻き戻し的な動きも起きたが、ドル円の105円割れ、10年債利回りのさらなる低下の可能性は十分にありうる。
FRBは7月31日のFOMCで0.25%の利下げを決定し、ECBも追加緩和の可能性を示唆した。1日の日銀の金融政策決定会合では、声明文に「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる」との文面が付け足されていた。それでは躊躇なく、何を行うのか、7日にこの決定会合の主な意見が公表されたので、そこにヒントはないか探ってみたい。
ヒントとなりそうなのは「金融政策運営に関する意見」の部分であるが、まずはいつものように「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要である」としている。そして次のような意見があった。
「今後海外経済が一段と悪化し、わが国経済・物価に悪影響を与える場合は、金融・財政のポリシーミックスの中で迅速に政策対応すべきだが、当面は金融システム面への副作用に留意して、現行の緩和政策を継続することが重要である」
「金融・財政のポリシーミックス」がひとつのキーワードとなりそう。日銀が単独で動くというよりも、政府の財政政策などと金融政策をミックスさせて動く可能性がありそうである。
「わが国の金融緩和の度合いは、既に欧米以上に強力なものになっているとみられる。そのうえで更なる緩和が必要かどうかについては慎重な検討が必要であり」
確かにと言わざるを得ないものの、市場は現在の緩和規模よりもここからの緩和策に期待してしまう。欧米の中銀の緩和策が日銀に追いついていないからといって、円安になるわけではないという現実がある。
金融政策で市場心理に働き掛けたいのであれば、小出しに限る。ただし、リスク回避の動きなどが極端になったときとかは、小出しの倍あたりで市場も納得してしまう。米国では政府関係者が小出しの3倍の利下げをしろと言っているが、市場はさすがにそれは言い過ぎであろうとみている。
それでも小出しの3倍に過ぎない。ただし、その小出しも可能なのはFRBに限るという状態でもある。
Next: 日銀が行うことができる更なる金融緩和とは、どんなものなのか
予防的・先制的に制作対応することが重要
それはさておき、下記の意見もあった。
「現時点において、物価の下振れリスクに対して予防的・先制的に政策対応することが重要である。長短金利操作とフォワードガイダンスの両面から金融緩和を一段と強化することが必要である」
これも可能性があるのかもしれないが、両者(長短金利操作とフォワードガイダンス)ともに伸ばせば良いというものでもない。
「躊躇なく、必要な政策を適切に実施する、という情報発信を行っていくことが肝要である」
いわゆるアナウンスメント効果を意識したものであろうが、これを繰り返し使うと「躊躇なく」の意味合いが薄れてしまう。
「いわゆる予防的金融緩和論を検討する必要があるのではないか。消費税率引き上げの影響や市場の急変などに対して、日本銀行の政策が後手に回らないよう十分な警戒が必要である」
予防ができるほどの緩和の余裕がないようにも見受けられるが、FRBが予防的措置を行った翌日に大統領がリスクをまき散らすという、なんともいえない状況下、予防ではなく現実にリスクが高まったときのために、カードは温存しておいたほうが良いと思う。
カードがそれほどなくてもあるように見せる工夫も大事かと思う。
「これまでよりも明確に内外に伝え、緩和策についても予め検討しておくべきである」
確か金融政策決定会合はそういったものも話し合う場ではないのだろうか。
「量・質・金利を始め様々な緩和策などについて、それぞれの利害得失を検討する必要がある」
必要があるのであれば検討してほしいし、政策委員からも意見の投げかけも必要なのではなかろうか。
「政策対応を考えるにあたっては、効果と副作用の点検が必要である。その際、副作用によって効果が損なわれてしまう可能性も念頭において、慎重な点検や設計を行うことが重要である」
リバーサルレート論と呼ばれているものであるが、副作用を意識したうえで、よりアナウンスメント効果があり、小出しでも市場心理に働きかける手段をぜひ見つけて欲しいと思われる。それが物価に影響を与えるかどうかはさておき。
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『牛さん熊さんの本日の債券』2019年8月7日号より
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による
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