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若者に死ねと言うのか?究極の貧困ビジネス「戦争民営化」の悲惨な現実=不破利晴

日本がアメリカ的な軍事国家へと変貌を遂げるとき、真っ先に狙い撃ちされるのは非正規や失業中、あるいは貧困層の若者たちである。グローバル市場で最も効率よく利益を生み出すのが「貧困ビジネス」としての「戦争民営化」なのだ。(『インターネット政党が日本を変える!』不破利晴)

究極の貧困ビジネス「国防の民営化」がもたらす日本の未来

狙い撃ちされる若者たち~必読の改憲シミュレーション

法政大学の経済学部に竹田茂夫教授がいる。専門は経済理論だが、東京新聞の本音のコラムでは反骨的でかつ緻密な論を展開されている方だ。竹田教授のコラムは非常にエッジが効いているのが特徴である。

そんな竹田教授は、2013年の念頭に極めて重要な国民必読とも言えるコラムを書いた。自民党による憲法改正が仮に為された場合、どのような事態になるのかを1つのシミュレーションとして提示しているのがそれだ。

そこには「軍備増強」の可能性と、そこから派生する「国防の外注化・民営化」が現実的懸念点として挙げられている

軍は大学のキャンパスで兵士の募集活動を始めるだろう。非正規や失業中の若者の生計とキャリア形成を、国防の大義名分で国が面倒をみることになるのではないか?

また、核武装については短期的にはないものの、長期的には選択肢となる可能性が極めて高い。ゆえにプルトニウムを生み出す原発は維持する必要がある。

原発産業は軍需産業の要を占め、建設、セキュリティ、通信といった企業も民間軍事企業へと脱皮する可能性がある。

この「民間軍事企業」は何も絵空事ではなく、アメリカでは既に現実化しており様々な問題が指摘されている。

1つは民間軍事企業の非効率性であり、2つには民間人の戦争責任である。

つまり、効率化を狙っての戦争民営化だったが、経費を調査してみると多くの無駄が判明したこと。そして委託された民間兵士によってイラクなどでは尋問が行われ、イラク民間人の殺害も起こっていることである。

竹田教授の指摘はアメリカの今を軸に捉えたものだが、対米従属をいわば国是としてきた日本にとっては対岸の火事ではない。

このような「民間軍事企業」の恐るべき実態は、ジャーナリスト・堤未果による『貧困大国アメリカ』(岩波新書)などに詳しいリポートが報告されている。

竹田茂夫氏が指摘する「国防民営化の悪夢」とは、堤未果氏が言うところの「民営化された戦争」に他ならない。

グローバル市場で最も効率よく利益を生み出すのが「貧困ビジネス」であり、それが国家レベルにまで昇華したのが「戦争」だと言うのだ。

Next: 「若者の貧困」を狙い撃ちにする戦争ビジネスの悲惨な実態とは



「若者の貧困」を狙い撃ちにする戦争ビジネスの悲惨な実態

ノーベル経済学者、ミルトン・フリードマンは、国家の役割を警察と軍事に限定することを提唱し、彼の薫陶を受けた元国防長官ドナルド・ラムズフェルドは、戦争すら「民営化」できないものかと考えた。

そして、そのモデルケースの最たるものが先のイラク戦争であったのだ。

ケロッグ・ブラウン&ルート社(KBR社)は2005年時点で登録派遣社員数が6万人を超え、週に200~300人をイラク、アフガニスタンに派遣していた。

年収約700万円でこの会社と契約したある男性は、バグダットで40度近い炎天下の中、武器運搬のトラックの運転手として1年間従事した。

兵士たちは基地内にあるペットボトルの水を飲んでいたが、彼のような「民間派遣社員」は会社から現地の水を飲むように言われていた。バグダットの水は米兵が使用する劣化ウラン弾の影響で放射線に汚染されている可能性が高いにも関わらずだ。

彼は10ヶ月を超える頃から肺に鋭い痛みを覚えるようになる。その後下痢と嘔吐の症状が見られるようになった。そうしているうちに下痢に血が混じり、勤務中にめまいを感じるようになった。

帰国後、医師の診断は白血病であった。その後、彼は寝たきりとなり支払われた報酬も結局はアメリカ特有の高額医療費に消えてしまったのだ。

日本とも関わりが深いブラック・ウォーターUSA

KBR社はいわば兵站を中心とする企業だが、その一方で「ブラック・ウォーターUSA社」といった戦闘行為自体を請け負う民間企業も存在している。

いわゆる「傭兵」を派遣する企業なわけだが、ジュネーブ協定が定義する傭兵とは戦争のために「外国」から雇われている個人であって、社員は軍人ではなく民間人だからこの協定には該当しないと、ブラック・ウォーターUSA社は主張している。

しかも、戦場における「民間人」は戦死者数にはカウントされない。ゆえにブラック・ウォーターの傭兵には監視や法的拘束力が掛からなくなってしまう。

このことが 前述した現地民間人への不当な尋問や、無差別殺人への土壌を形成しているとの指摘もある。実はこのブラック・ウォーター社、日本においても少なからず関わりがある。

Next: 青森県の自衛隊基地にも「警備員」として派遣されていた



青森県の自衛隊基地にも「警備員」として派遣されていた

2006年、青森県自衛隊基地でブラックウォーター社が「警備員」として派遣されていたことあるという。

日本海に面した人口約5500人の小さな村落、つがる市車力地区(旧車力村)で、この軍事民間企業の約100人が弾道ミサイルの警備、及びミサイルやレーダー搬入の時の警備業務を請け負っていたのである。

ただ、その直後ブラックウォーターの派遣社員がイスラム諸国で殺害されたり、劣化ウラン弾による被ばくで世界的に問題になった経緯もあり、それ以降日本ではアメリカ民間企業の人間は姿を消した。

アメリカから兵士や兵站員として中東へと派遣される民間人は、大部分がワーキングプアといった言葉に象徴されるような貧困層が中心だ。彼らは世界中から集められている。

日本の若者もやがて戦場に送り込まれるのか

安倍政権が発足した当時、秋葉原で顕著に見られたように、非正規や失業中、あるいは貧困層と思われる若者たちから多くの支持を集めたことを忘れてはならない。

そして、日本がアメリカ的な軍事国家へと変貌を遂げるとき、真っ先に狙い撃ちされるのは非正規や失業中、あるいは貧困層といった若者たちであることは容易に予測できる。このことをかの若者たちはどれほど認識していたのであろうか?

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インターネット政党が日本を変える!』(2016年3月1日号)より
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「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」驚かせてすみません。私は不破利晴と申します。私は、元駐レバノン特命全権大使・天木直人氏と共に、「インターネット政党」の成功に向けて活動しています。インターネット政党『新党憲法9条』のWebサイトをつくり、日々の運用管理をしています。想像して欲しいことがあります。→「毎日働き詰めで辛くありませんか?」→「生きることに目的を見失って辛くありませんか?」→「あなたにとってハッピーな世の中とは、どのようなものですか?」インターネット政党の主役は「あなた」です。

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