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今こそ8%消費増税の「検証」会合を~ウソつきを許さないために=藤井聡

消費税の増税は日本経済に、「凄まじいディープインパクト」をもたらすことは火を見るよりも明らか。藤井聡・京都大学大学院教授は、「来年4月に10%消費増税を控える今だからこそ、一昨年の8%増税で一体何が起こったのかを徹底的に検証することが求められる」と指摘します。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年3月1日号より
※本記事のタイトル・リード・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

10%増税の前に、8%消費増税で何が起こったかの徹底検証を

現在の法律では、来年四月には、「消費税10%増税」が予定されています。

ですが、この「予定」は、何があっても絶対に変わらない、というものでは断じてありません。

総理が何度もこれまで発言してこられたように「リーマンショック級」「東日本大震災級」の事態となれば、増税は当然凍結せざるを得なくなりますし、
http://www.sankei.com/premium/news/160110/prm1601100031-n1.html

「リーマン」が何かはかどうかはさておいても、「世界経済の大幅な収縮」があるだけでも、差し控えるべきものであることは、論を待ちません。
http://www.sankei.com/politics/news/160224/plt1602240030-n1.html

あるいは、菅官房長官が発言しておられるように、「増税で税収減なら見送り」する可能性も十二分に考えられます。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6192656

いずれにしても、消費税増税は日本経済に、「凄まじいディープインパクト」をもたらすことは火を見るよりも明らか(としか当方には思えないという状況)なのですから、10%増税にあたっては、様々な検討が求められていることは必須です。

そうした検討は、「凍結するか否かの判断」のみならず、断行するにしても、「そのための対策として何が必要か」を理解するためにも、必要となるでしょう。

では、10%増税を果たしたときにどうなるのか、を検討するにあたって、最も効果的なアプローチは何かと言えば……

一昨年に8%に増税したことで、一体何が起こったのかを検証すること

に他なりません!

ついては、10%増税の予定年月日をおおよそ一年後に控えた今日、我々は、あの8%増税の時に何が起こったのかを、可能な限り客観的な視点から検証することが求められているのです。

消費税増税以後、消費は縮小し、所得も減少し、鉱工業生産指標も悪化し、物価は伸び悩み、GDPの成長率はマイナスに凋落しています。

これらはいずれも「増税後」に生じたことですが、この「変化」が「消費税増税によってもたらされたのか、それとも、それ以外の要因で引き起こされたのか」を、可能な限り公正中立な立場から検証することが求められています。

その検証は、「増税を正当化したい」という意図や「全てを増税のせいにしてやりたい」という意図を持った人物や組織には決して委ねられません。

そういう意図を排除した、客観的視点から判断可能な人物、組織に検証させることが必要です。

Next: 「客観的で公正な検証が可能な人物や組織」の条件とは?



この検証を行うに当たって何よりも大切なのは、

「そういう客観的で公正な検証が可能な人物や組織とは誰か?」

という点です。

通常、こういう人物を選定する事は必ずしも容易ではないのですが、今回に限っては、大変素晴らしい、選定基準があります!

その基準とは、

「消費税8%の増税『以前』の時点で、どういう影響がもたらされるかを述べていた『予想』と、増税後、2年が経過した『現状』との乖離がどれだけあるのか?」

という基準です!!

この乖離が大きい人物、組織は、

「増税インパクトを過大評価/過小評価したいという『意図』を持っていたか、あるいは、増税インパクトを正確に予測する『能力』が無かったか、あるいはその両方に当てはまる」

ということになります。

ですから、彼らに、10%増税のインパクトについて論ずる資格などあるはずは有りません(というか、そんな「資格はない!」と言われても、何人たりとも否定できないですよね)

一方で、8%増税前に言っていた予測内容と現状との乖離が少ない人々は、少なくとも、乖離が「大きかった」人々よりは、圧倒的に「10%増税の影響についての言説」に耳を傾けるべき人々であることは間違い無い、と言えるでしょう。

したがって、10%増税にまつわる政府の取り組みを考えるにあたっては、こうした「見通しと現状との乖離が少ない人々」の声を、重視すべきであることは論を間違いありません。

そして、かの点検会合では、どうやら7割の有識者が、極めて楽観的な見通しを語っていたのが実情です。
消費増税の集中点検会合、有識者の7割が増税賛成〜誰が賛成?(参加者の賛否一覧)【争点:アベノミクス】

ついては、筆者は、10%増税問題を考えるにあたって、以下のプロセスで検討を進めることが、可能な限り公正で客観的な情報を把握するに当たって重要なのではないかと考えます。

Next: 10%増税問題を考えるにあたって重要な3つのプロセスとは?



(1)まず、かの点検会合の「議事録」を精査して、まずは、誰が信頼に足るエコノミスト、経済学者なのかを検討する(あるいは、エコノミスト、経済学者を、当時の議事録と現状の客観的な経済状況とを比較することで「格付け」する)。

(2)そうして選定された比較的公正な有識者達を集めて「8%増税」の影響を評価させる(あるいは、当時の有識者全員を集めて「8%増税の影響」を評価させると同時に、彼らの「格付け値」を参考にしながら「重み付き平均」の考え方で、理性的な評価を行う)

(3)そうして得られた「8%増税の影響についての評価結果」に基づいて「10%増税の影響」を想定する。

こうしてできるだけ客観的なアプローチに基づいて、

10%増税の影響

を公正中立な視点から評価すべきであると、筆者は考えます。

イメージや政治力などではなく、

本当に公正中立で、客観的で理性的な判断

に基づいて、日本の10%増税にまつわる評価がくだされることを、心から祈念いたします。

なお、上記評価を通して、「低く格付けられた有識者」に対しては、本来なら何らかのペナルティが下されなければ……当方は、この世に「神も仏もあるものか……」とおもってしまいます。それほどに、有識者のウソや欺瞞は、絶対に許してはならないものと、憤怒をもって、当方は認識致します。

ちなみに最後に当方の個人的な見解を申し上げるなら……消費税8%増税について楽観的な見通しを語っていた「7割」の有識者達は、「ウソつき」と言われても仕方ないのではないかと….思います……が、その判断を下すためにも、上記の様な可能な限り公正中立、客観的な評価プロセスを踏む必要があると思います。

そうしたプロセスを経ることを通して、誰が「ウソつき」で誰が「正直者」であるのかが明らかにできる可能性がグンと高まるものと考えます。

PS この「消費税増税問題」をマジメに考えるにあたって、下記書籍は、本当に有用であると考えます。なぜなら、マジメに考えるには思考停止は絶対排除すべきで有る一方、下記書籍は、包括的な視点から彼らを「排除」する方途が示されているからです。是非、ご一読を。
戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する(佐藤健志著/徳間書店)

【関連】「マイナス金利」の現状を、如何にすれば活用できるのか?=藤井聡・京大大学院教授

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