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中小企業のコンサルニーズを掘り起こし、山田コンサルティンググループは成長できるか=栫井駿介

中小企業向けの経営コンサルティングを主要事業とする山田コンサルティンググループ<4792>は、近年、業績は拡大しています。今回は、その理由を解説します。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

中小企業に特化した山田コンサルティンググループ<4792>

事業継承やM&Aのニーズの高まりで売上が続伸

山田コンサルティンググループ<4792>は、中小企業向けの経営コンサルティングを主要事業とする会社です。

近年、業績は拡大しています。直近の利益こそ落ち込みましたが、売上高はなお過去最高を更新し続け、今期も最高を見込んでいます。

出典:マネックス証券 山田コンサルティンググループ<4792>業績

業績拡大の背景にあるのが、従来からの経営コンサルティングに加えて、事業承継やM&Aなどのニーズです。

国内経済は高齢化や人口減少に伴い縮小傾向にあります。経済が成長する時代であれば「何となく」経営していても業績が伸びたかもしれませんが、成長が止まれば、生き残るために効率的な経営が求められます。

しかし、経営を大きく変革するには非常に大きなパワーを必要とします。コンサルティング会社はそこで道筋を示し、より良いルートに乗せるための手伝いをするのです。

中小企業のコンサルティングニーズはまだまだ眠っている

経営コンサルティングと言えば、マッキンゼーやボストンコンサルティングと言った会社が挙げられます。しかし、これらの企業はあくまで大企業向けのコンサルであり、中小企業までは手が回りません。そこを補完するのが同社というわけです。

中小企業のコンサルティングと言うと、手がかかるばかりで実入りが少ないと思ってしまうかもしれません。少なくとも、上場するような大きな企業がやることではないと思われていた節がありました。

その常識を覆したのが日本M&Aセンター<2127>の存在でしょう。大手投資銀行やコンサルティング会社が手がけなかった中小企業のM&Aに特化し、急速に業績を伸ばしています。

出典:マネックス証券 日本M&Aセンター<2127>業績

これまでM&Aと言えば大企業のものと考えられていましたが、実は中小企業にとっても必要なことです。特に、後継者不足に悩む企業にとっては事業継続のために会社を「買ってもらう」という選択肢が必要なのです。

山田コンサルティングも同様にM&Aを手掛けており、業績拡大に寄与しています。また、同社の強みはM&Aだけではない幅広いニーズに応えているということです。

M&Aで明らかになったように、中小企業にはこれまで大企業にしか受けられないと考えられていたニーズがまだまだたくさん眠っていると思われます。例えば、IT化や海外進出です。その部分にメスを入れることができれば、ここからさらに業績の拡大が期待できるというわけです。

ちなみに、私は空港に設置された看板を見て同社の存在を知りました。これはブランド力の向上に寄与しそうです。

Next: コンサルティング会社が成長するために必要なこととは?



人員の増加により利益の伸びは鈍化

同社の拡大意向は、従業員数の推移を見てもわかります。この5年でおよそ2倍に増えているのです。

コンサルティング会社は人がすべてですから、事業拡大のためには当然人員の拡充が必要となります。

一方で、人員が増えるということは、それだけ固定費が増加するということでもあります。

近年の利益の伸びは売上高の伸びに対して緩やかです。直近の業績は減益となっています。想定していた売上が間に合わなかったということですが、人員の増加はこのように減益となる可能性をはらんでいるのです。

また、M&Aも買い手がいなければ成り立ちません。景気が良いときは買い手の意欲も増しますが、悪いときには極端に減少します。つまり、景気連動の側面があり、このような会社も景気後退から逃れることはできないのです。

すなわち、長期的に見れば拡大傾向にある中小企業のM&Aも、一時的には縮小する可能性があります。そうなれば、人件費が重荷となり赤字になる可能性もはらんでいるのです。

景気後退があれば影響は避けられないが、長期的に見れば伸びる余地あり

もっとも、同社はM&Aだけでなく幅広いコンサルティングメニューがあるので、その時々に応じたニーズに応えることができるでしょう。リーマン・ショック直後も、経営コンサルティング事業の売上は増加しています。

もし仮に赤字に転落するようなことがあっても、財務内容は非常に健全です。借金はゼロで、80億円の現預金を有しています。経営に窮するようなことは考えにくい状況です。

以上より、景気後退によってM&Aニーズが一時的に減少する可能性はありますが、長期的に見れば中小企業へのコンサルティングニーズは増える傾向で、軌道に乗ればここからさらに業績を伸ばすことができる会社と言えます。

そのような状況で、PERは16倍と決して高くない水準にあります。株価は2月の東証一部上場後息切れ感がありますが、仕込むタイミングとしては決して悪くないのではと感じます。

山田コンサルティンググループ<4792> 週足(SBI証券提供)


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image by: tsyhun / Shutterstock.com

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年9月28日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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