マネーボイス メニュー

ドラクエウォークの年間収益は220億円?スクエニ&コロプラは任天堂を倒せるか=栫井駿介

スマホゲーム『ドラクエウォーク』の人気化で、共同開発したコロプラ社の株価が急騰しています。この快進撃は今後も続くのでしょうか?(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

共同開発コロプラの利益は2倍に!? 過去の業績撃沈から復活なるか

ドラクエウォークが流行中

コロプラ<3668>の株価が急騰しています。きっかけは9月12日にスマホゲーム「ドラクエウォーク」をリリースしたことです。早速アプリストアのセールスランキングで1位を獲得し、収益への貢献が期待されています。

私はあまりスマホゲームをやらないのですが、街に出てふと目に入った前にいる人のスマートフォンの画面がドラクエウォークでした。Twitterのタイムラインもドラクエウォークの話題で溢れ、その様子は「ポケモンGO」を彷彿とさせます。

ドラクエウォークはコロプラの株価をこれからも押し上げ続けるのでしょうか。その可能性を探ります。

【関連】『ポケモンGO』ヒットで株価爆上げ、任天堂の復活劇に潜むリスク=栫井駿介

ドラクエウォークの年間収益は220億円?

それぞれの浸透度を測るために、ゲームソフトの売上本数を見てみましょう。累積販売本数は以下のとおりです。

ドラゴンクエスト:7,600万本以上
ポケットモンスター:3億本以上

これを見ると、ポケモンの方が圧倒的に売れていることがわかります。その理由は、ポケモンが日本のみならず世界中で大ヒットしたことでしょう。日本ではライバルに見えても、世界的にはポケモンの方がリードしているのです。

もしこのままドラクエウォークがヒットし続けるとしたら、先行する「ポケモンGO」を基準に収益をある程度推定できます。

ポケモンGOは、リリース翌年の2018年に日本円で860億円の収益をあげたと言われます。これを単純に売上本数で割ってみると、ドラクエウォークはざっと220億円程度の収益が想定されます

もちろん、ゲームの仕組み次第ではもっと効率的に収益を稼ぐかもしれません。ミクシィ<2121>がリリースしたモンスターストライクは、ゼロから1年で1,000億円以上を稼ぐ化け物になりました。

しかし、モンストの収益は重課金者が多く発生する「ガチャ」による要因も大きいでしょう。ドラクエウォークはガチャの要素も少ないことから、やはりポケモンGOを基準に考えるのが良さそうです。

Next: コロプラの利益は2倍に!? 過去の業績急降下から復活なるか…



コロプラの利益は2倍に!?

ドラクエウォークはスクエア・エニックス<9684>とコロプラのコラボ商品です。仮に両者均等に分配されるとすると、それぞれ110億円の収益増となるはずです。

これがどの程度のインパクトを与えるのでしょうか。それぞれの会社の業績数値を見てみます。

業績規模がコロプラの方が小さく、影響が大きそうです。これが、ドラクエウォークのヒットがコロプラの株価を大きく押し上げる要因になっています。リリース後のスクエア・エニックスの株価上昇率が約2割なのに対し、コロプラは2倍に上昇しています。

スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 日足(SBI証券提供)

コロプラ<3668> 日足(SBI証券提供)

仮に売上の50%が利益になるとしても、コロプラの利益は昨年度の約2倍に膨れ上がります。そう考えると、株価が2倍になることは決しておかしなことではありません。

かつて飛ぶ鳥を落とす勢いも、ついに利益はゼロに…

ここで改めて、コロプラがどんな会社なのか見て見ましょう。

もともとは、創業者で現在も社長を務める馬場功淳氏が個人で開発した携帯電話位置情報ゲーム「コロニーな生活」が会社の起源で、ゲームの名前が会社名の由来にもなっています。実はドラクエウォークのような位置情報ゲームとは縁の深い会社なのです。

2008年に会社化すると「黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」などのヒット作を連発し、スマホゲーム界では欠かせない存在になりました。2012年に東証マザーズ、2014年に東証一部に上場しています。

しかし、ここ最近の業績は奮いません。業績は2015~2016年頃をピークに、あれよあれよという間に急降下しています。

直近の業績はついに利益がゼロになるなど、目も当てられない状況となっています。

Next: スマホゲームの大きなブームは去った……コロプラは任天堂を倒せるのか?



スマホゲームの大きなブームは去った

業績が降下した理由としては、1つにはスマホゲームの大きなブームが去ったこと、そしてもう1つは規模拡大に伴って従業員数が増加し、固定費が大幅に増えたことでしょう。

スマホゲームのブームが去ったことは、同業でモンスターストライクを有するミクシィの業績からもうかがい知ることができます。

スマホゲームは「ガチャ」に代表されるように、ギャンブル性が高いことが社会問題にもなりました。しかし、ゲームの単純さがゆえに結局はユーザーに飽きられてしまったのです。

当時、これらの銘柄は飛ぶ鳥を落とす勢いでした。しかし、ブームはそう長くは続きません。いつまでもブームの勢いが続くと思って株に投資すると痛い目を見てしまうのです。

任天堂とコロプラの決定的な違い

それでは、ドラクエウォークのヒットで上昇したコロプラの株価はどうなるのでしょうか。

私は、現在の上昇は一過性のものにすぎないと考えます。

確かに、ドラクエウォークが貢献し、一時的に業績は伸びるかもしれません。しかし、その収益がずっと続いたり、ましてさらに拡大する可能性は高くないと考えます。

例えば、かつてポケモンが発売された時には、多くの少年たちが熱狂し、続編が次々に発売されました。何百種類にも及ぶモンスターから生まれる関連商品の裾野も広く、かつて子供だった世代が大人になってもいまだにお金をつぎ込み続けています。

大人が騒げば、その子供も必然的に熱中することになります。そうやって、長きにわたって愛され続けるものを生み出してはじめて、大きな価値が作られるのです。任天堂の時価総額が5兆円もあるのは、そのようなものに資源を集中させているからです。

一方のドラクエウォークはどうでしょうか。「ドラゴンクエスト」の看板を持つスクエア・エニックスにとっては30年以上も続くドラクエシリーズの1つとして大きな役割を持つでしょう。

しかし、ドラクエウォーク自体は続編の必然性も低く、コロプラにとってはこれで終わってしまう可能性が高いと考えます。ここで多少ヒットしたとしても、それは何年も続くものではありません。

その意味で、これがコロプラの株価を支え続けるとは到底思えないのです。

Next: あなたがしているのは「投資」?それとも「投機」?



あなたがしているのは「投資」?それとも「投機」?

もちろん、これをきっかけにコロプラが経営改革を行うなら期待できます。しかし、今のところそのような動きはなく、業績の下落傾向が改善する兆しは見いだせません。

今コロプラを買っている投資家の多くも、長期的な成長に期待しているわけではないと思います。ここまで短期間で上昇すると、あとはどこで手を引くかを探り合うチキンゲーム、すなわち「投機」の場となっているのです。

投機では、短期的には利益が出たとしても、失敗すると一気に崖から落ちるリスクを負います。あなたはそのリスクを背負ってお金を増やしたいと思いますか?

賢明な投資家なら、このようなところに参戦する必要はありません。あくまで長きにわたって価値をもたらすものに投資し、持ち続ければ良いのです。自分が何をしているかを理解し、原則にしたがった行動を取りましょう。


つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

【関連】しまむら、客離れ加速で業績悪化。ユニクロを目指して主婦に嫌われる大失策=栫井駿介

【関連】ミニストップ、193店閉店で経営悪化が止まらない。もう取り返せない4つのしくじり=栫井駿介

【関連】なぜバフェットは下げ相場で買うのか?暴落が楽しみになる「Buy the Dip」の極意=栫井駿介

image by:slyellow / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年9月30日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問

[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。