認知症患者が520万人いると言われている現在、入居者が突然認知症となってしまうこともあるでしょう。この場合、家賃の滞納、さらには火元管理ができないことによる火災など大損害を招く可能性があります。今回は不動産オーナーとしての認知症リスクへの向き合い方、また適切な対応とは何かについて解説します。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)
プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。
認知症はリスクの1つと冷静にとらえ、適切に運用せよ
他人事じゃない!入居者の認知症発症リスク
2007年に認知症の方が徘徊し列車を遅延させたとの理由で家族に対し損害賠償を請求された裁判に結果が出ました。
- 認知症徘徊鉄道事故は家族に責任なし
- 同居するだけで家族に監督義務があるとは言えない
という画期的な判決でした。
この件は相手が金銭的体力のあるJRであり納得できるものです。
520万人の方が認知症と言われる現在、入居者が認知症になるかもしれないという点で、不動産オーナーにとっても無関係ではありません。
家賃滞納だけじゃない大損害の可能性
認知症といっても日常生活に支障が少ない人から生活困難な人まで差があります。問題なのは生活に支障がある場合です。
よくある話としては認知症の入居者が家賃支払いを忘れるということです。一人暮らしをしている高齢の入居者など普通に支払ってくれていた方が急に滞納しだして、認知症であることが発覚します。こういった方に家賃を請求すると、もう支払ったと逆ギレされたりします。
本人は支払ったつもりなので、家賃帳や通帳を見せて振り込まれていないと説明しても理解してもらえないです。この場合は家賃を自動引落としにするなどしなければ、滞納は増えていく一方となります。
さらに言えば家賃の支払を忘れるほどですから、鍋を火にかけたまま忘れたりする可能性もあります。火元の管理が適切に出来ない入居者はオーナーにとって好ましいものではありません。
通常なんらかの損害が起きた場合、まずは連帯保証人に損害を請求します。しかし連帯保証人がいない場合、家族などに請求をしなくてはなりません。
今回の裁判における判決は、別居している息子に監督義務はないということを言っています。この判例をそのまま援用すると、不動産オーナーは認知症の方が起こした損害を別居する家族に請求することができなくなります。
判決ではケースバイケースで考えるということで、損害賠償を請求できる場合もあるでしょう。ただ、今回のJRのように圧倒的に金銭的体力のある人は社会的コストの負担を求められる可能性があります。つまり大地主や大不動産オーナーなど損害を吸収できる人は負担しなくてはいけなくなる可能性もあるということです(まぁ、これまでも大小そういう負担はあったとは思いますが)。
Next: 新たな認知症専門不動産ビジネスも?「認知症リスク」に見合った不動産運用を
新たな認知症専門不動産ビジネスも?
今後は大家が認知症の方の入居を拒否したりする一方で、高額な家賃で認知症専門に貸し出す新たな形態も出るかもしれません。
また現在では認知症の入居者に対応するための教育を行っている不動産管理会社もあります。さらに一歩踏み込んで、認知症専門の不動産管理会社なんてのもニッチに成立する可能性もあります。
認知症リスクに見合った不動産運用を
最後に不動産投資は慈善事業ではありません。利益を出すことが目的です。認知症というリスクをいたずらに恐れるのではなく、リスクに見合ったリターンの設定を行い運用する必要があります。
単なる認知症の否定ではなく、家賃を上げる、敷金を3倍にする、定期借家にする、認知症に対応できる管理会社にする等、適切な対応を考えていきたいですね。
※法的にはケースバイケースですので、個別の法的判断は専門家にご相談下さいね
『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』(2016年3月2日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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