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なぜ日本人は東京圏に住むと子供を産まなくなるのか=三橋貴明

日本の少子化を引き起こしているのは、結婚した夫婦が子供を作らないことではない。結婚そのものが減っていることだ。すなわち、婚姻率の低下である。婚姻率が低下している原因は、主に二つ。一つ目は、実質賃金が未だに下落を続けていること。そして、二つ目が東京一極集中だ。(『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』)

日本の少子化を解消するために「二つの施策」を実施せよ

少子化に繋がる「東京一極集中」

図の通り、高度成長期以降の我が国では、人口がひたすら東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に吸い取られ続けてきた

【都道府県間の人口移動】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/20160312-1.jpg

名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)や大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)は、74年に高度成長が終焉を迎えるまでは、やはり東京同様に転入超過であった。

とはいえ、74年以降は大阪圏も名古屋圏も共に「横ばい」といったところだ。最近の大阪圏に至っては、転出超過が続いている。ただひたすら、東京圏が全国から人を吸い寄せ続けているのが現在の日本だ。

今日、日本国中を見回しても、大幅な転入超過が続いているのは東京圏だけだ。2011年に東日本大震災が発生し、いったん東京圏への人口流入は下火になった。ところが、2013年には震災前の水準に戻ってしまい、相変わらず年間10万人前後が東京圏へと流入し続けている。

なぜ東京は日本で最も合計特殊出生率が低いのか

東京への流入のメインは、若い世代である。

東京に若者が集中すればするほど、我が国は必然的に少子化にならざるを得ない。何しろ、日本で最も合計特殊出生率が低いのは、東京なのである。

日本の都道府県において最も合計特殊出生率が高いのが沖縄県(1.88)で、最も低いのが東京都(1.2)になる。しかも、ワースト10に東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県と、「東京圏」の一都三県が全て入っている。

日本人は東京圏に住むと、子供を産まなくなるのだ。なぜ、東京の出生率は低いのか。

東京都の各区について、30歳~49歳の女性の未婚率と、合計特殊出生率を見ると、見事なまでに相関関係にあることが分かる。もちろん、未婚率が高ければ高いほど、合計特殊出生率が低い。

特に、東京は渋谷区や新宿区といった「繁華街」が存在する区において、女性の未婚率が異様に高くなっている。新宿区が約45%、渋谷区は約50%である。新宿や渋谷に住む30歳~49歳の女性は、半分前後が未婚なのだ。

これでは、合計特殊出生率が低くなって当たり前である。逆に、未婚率が25%を切る江戸川区の合計特殊出生率は、全国平均を上回っている

東京圏への転入超過の年齢層を見ると、15歳~19歳が2.7万人(2013年)、20~24歳が5.7万人(同)と、若い世代が大半を占めている。婚姻率が著しく低下し、合計特殊出生率が低下する東京圏に、結婚適齢期の国民が流入を続けているわけである。

しかも、東京圏は保育所等の数が不足し、地方と比較すると子育てのコストが高い。三世帯同居の家庭は少数派であるため、夫婦は子供の面倒を両親に見てもらうこともできない。これでは、日本の少子化が深刻化していくのも無理もない。

Next: 日本の少子化を解消するための「二つの施策」とは?



日本の少子化を解消するための「二つの施策」

日本の少子化を解消し、人口を維持もしくは増大させるためには、二つの施策を実施する必要があるのだ。すなわち、若い世代の雇用安定化、厳密には実質賃金の上昇を伴う雇用安定化と、東京一極集中の解消である。

もっとも、東京圏があまりにも膨張した結果、確かにサービス業を中心に雇用が創出されている。外食サービス一つとっても、東京ほど多種多様(かつ美味しい)な食を楽しめる都市は、世界中に一つもない。それがまた、東京に人を惹きつける一因になっている。

人口流入による市場拡大が、マイナーな国の料理を供するレストランであっても、存続可能としているのだ。

サービスとは、基本的には在庫ができない。サービスは、生産と消費が同時に行われる。というわけで、サービス業の発展のためには、人口が集中していればいるほど都合がいい。

とはいえ、東京一極集中は日本の少子化の主因の一つであり、同時に「安全保障」を弱体化させる。世界屈指の自然災害大国である日本国が、人口を特定地域に集中させるのは極めて危険だ。

というわけで、我が国は人口の地方分散と経済成長を両立させる必要があるわけだ。そのためには、新幹線や高速道路という交通インフラを整備し、日本を「小さくする」必要がある。

地方と東京圏を短時間で結ぶことで、分散して住んでいながら、同時にサービスの市場としては「同一」という環境を実現できるのだ。

東京一極集中を解消するための交通インフラの整備は、
「少子化を解消する」
「安全保障を強化する」
「仕事量を増やすことで、実質賃金を引き上げる(これも少子化解消に貢献する)」
「デフレという需要不足を終わらせる」
と、日本国が抱える主問題の多くを一気に解決してしまうのである。

それにも関わらず、「財政均衡主義」に手足を縛られ、政府が交通インフラの整備に乗り出せないとなると、小手先な対策をどれだけ繰り出したところで意味はなく、日本国は最終的には「亡国」に至らざるを得ないだろう。

【関連】野田政権期より「日本国民を6%も貧乏にした」安倍総理の結果責任=三橋貴明

週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』(2016年3月12日号)より
※記事タイトル、本文見出し、リード、太字はMONEY VOICE編集部による

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