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脱・黒田バズーカに動き出した安倍政権「次の一手」=近藤駿介

先週末にかけて今年初の4日続伸を記録した株式市場だったが、週明け以降は一転さえない展開となってきた。メディアでは、国債市場でマイナス金利が進んできていることが取り上げられ、黒田日銀総裁はマイナス金利政策の効果がこれから発揮されると、その宣伝に躍起になっているが、今後の市場はむしろ「脱黒田バズーカ」に向かって動いていく可能性が高い。

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるメルマガ『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』がまぐまぐ大賞2015メディア賞を受賞。

黒田バズーカに見切り。官邸サイドが次に打ち出す株高支援策とは

市場の期待を大きく裏切った「マイナス金利政策」

黒田バズーカ第3弾」として打ち出した「マイナス金利政策」が、今後どのような影響を及ぼすかは定かではない。

ただ、重要なことは、市場は「黒田バズーカ」に対して、短期的に市場を好転させる期待を抱いていたということだ。

「黒田バズーカ」の中長期的な効果に関しては、「異次元の金融緩和」が実施されてから2年10カ月が経過した今でも「2%の物価安定目標」が達成される気配すら見えない上、成長率がマイナスを記録するなど、実体経済にほとんど効果をもたらさないことは共通認識になりつつある。

それでも「黒田バズーカ」に対する期待が残っていたのは、中長期的に意味はなくても、短期的には市場がポジティブな反応を示してきたからだ。市場が短期的とはいえポジティブな反応をすることが、もしかしたら「数撃ちゃ当たる」ではないが、いつかは実体経済に好影響が及ぶのではないかという淡い期待を抱かせ続けてきた。

しかし、黒田総裁が「中央銀行史上最強の政策」と自負した「マイナス金利導入」という「黒田バズーカ」を撃ちだした後の市場の反応は、その期待を大きく裏切るものだった。

日経平均株価 週足(SBI証券提供)

「中央銀行史上最強の政策」に対する短期的な市場の反応がネガティブなものになってしまったことは、わずかに燻り続けていた、いつまでも効果が現れない「異次元の金融緩和」に対する期待に冷水を浴びさせるものとなった。

黒田バズーカには効果はない

今後の市場はこうした「脱黒田バズーカ」に向かって動いていく可能性が高い。年明けに「日銀の金融緩和を織込んで年末2万5000円」などといった恥ずかしい予想を出していた専門家達も軌道修正を余儀なくされることになりそうだ。

Next: 「脱黒田バズーカ」に動き出した安倍政権の次の一手とは



「脱黒田バズーカ」に動き出した安倍政権の次の一手

こうした状況を受け、安倍政権も「脱黒田バズーカ」に動き出したかのようである。

政府は8日、安倍晋三首相や経済関係閣僚と国内外の有識者が世界経済の情勢を議論する『国際金融経済分析会合』を16日と17日に開くと発表した。初日となる16日はノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授を招く。

出典:国際金融経済分析会合、16~17日に開催 スティグリッツ氏ら招く – 日本経済新聞(2016年3月8日)

2013年9月に消費増税の影響等に関して有識者から意見を聞くために開いた「集中点検会合」の結果が散々だったことで国内の有識者の能力を見限ったのか、政府は今回は海外の有識者の意見も聴くことにしたようだ。

「集中点検会合」では政府主導で「消費増税賛成派」を7割揃えたのに対して、今回の「国際金融経済分析会合」ではトップバッターに消費増税に否定的なスティグリッツ教授を、2番手に「集中点検会合」で消費増税の予定通りの実施に慎重な姿勢を示した岩田元日銀副総裁を抜擢したところが大きな違い。

こうしたメンバー表を作り公開するところに、市場に「消費増税先送り期待」を醸成させようという政府の思惑が透けて見える。

最終的には、安倍総理が財務省の反対をはねのけ「総理の英断」で消費増税先送りにしたという構図を作り「国民生活を救ったヒーロー安倍」を演出することになるのだろうが、それは選挙に最も有効なタイミングまでしまっておかなければならない。

「黒田バズーカ」が「自爆テロ」になる可能性が高まった今、官邸サイドも「自爆テロ」になりかねない「バズーカ期待」よりも、自ら演出できる「消費増税先送り期待」で市場を支えようという方向に舵を切ったように見える。

「マイナス金利政策導入」という「黒田バズーカ」が「自爆テロ」となってしまった今、市場も政治も「脱黒田バズーカ」に向かうと考えておいた方がよさそうだ。

【関連】公開すればパニックに?年金(GPIF)が保有株式より前に開示すべきもの=近藤駿介

近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年3月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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