マネーボイス メニュー

From Wikimedia Commons

イエレン議長「利上げを求められている(できるはずはないのに)」苦しい心情吐露?

FRBの3月利上げは見送りがコンセンサスとなっていますが、利上げに動けば株も債券も大きな混乱が予想される「テールリスク」の面があるだけに決めつけは禁物です。(『マンさんの経済あらかると』)

FRBに対する「強い利上げ圧力」はマーケットの想定以上

利上げ警戒怠れず。いつもと異なる事情あり

ECB(欧州中央銀行)が先週、市場予想を上回る「政策総動員」を打ち出し、市場の関心は今週の日銀、FRBの動きに移っています。

FRBについては利上げ見送りがコンセンサスとなっていて可能性は高くないとしても、利上げに動けば株も債券も大きな混乱が予想される「テールリスク」の面があるだけに、決めつけは禁物です。

市場は2月の雇用統計後でも、FRBは今年1回利上げできるかどうか、と予想し、利上げ時期は早くても6月、多くは9月以降とみているようです。

しかし、市場に準備ができていないときに利上げに出れば、それだけ市場に与えるショックが大きく、通常は当局もこれを避けます。しかし、今回は事情が異なる面があり、警戒が怠れません。

「真のキーパーソン」は利上げに前向き

まず、FRBでのキーパーソンがイエレン議長でなく、フィッシャー副議長とみられることです。

彼が国際金融資本とのパイプ役を果たしている面があり、節目での重要な意思伝達を果たしています。その副議長が、先週FOMC前の最後の機会に、労働市場は完全雇用にあり、インフレ率が目標に向けて高まっていると言いました。彼は市場ではぶれません。

イエレン議長の発言機会は最近ありませんが、腹心のウイリアムズ・シスコ連銀総裁が、海外市場の不安定のもとでも米国経済は影響を受けず、堅調で、緩やかな利上げシナリオは変わっていないと代弁しています。

副議長の認識と合わせて、これで利上げをしなければ、逆に道理に合わないことになります。

実際、利上げを阻害する要因となってきた低インフレも、FRBが重視する消費デフレーターがコアで1.7%にまで高まり、2%が視野に入ってきました。

ブレイナード理事は1回だけではわからないので、これが定着するのを待つべき、といいますが、時間給が2.2%増に後退したものの、生産性上昇率がほぼゼロのため、これでも単位労働コストが上昇しています。

言い換えれば、市場が利上げなしとみた「平均時給の伸び低下」は、FRBからみれば、見送り材料ではないことになります。

また市場が不安定と言いながら、1-3月のGDPは、アトランタ連銀の「GDPナウ」によれば年率2.2%成長と、ここ何年かの弱い1-3月と異なり、かなりしっかりとした数字が見込まれています。

Next: イエレン議長「利上げを求められている」苦しい心情を吐露か



イエレン議長「利上げを求められている」苦しい心情を吐露

それと、FRBが気にしていた市場も、原油価格の安定化とともに、株価も年初来高値を更新し、ドル高も一服しています。

この市場の安定が、国際金融資本による人為的に作られたものである可能性はありますが、仮にそうであっても、現実の安定に加え、そこまで努力して利上げ環境を作った意図を無視することはできません。

さらに、伝聞ですが、イエレン議長自身の経済環境認識は慎重らしいのですが、親しい人に対して、「こんな状況で利上げできるはずはないのに、利上げを求められている」と、苦しい心情を吐露したと言われます。

つまり、経済論をこえた政策判断があることを示唆しています。

予想以上の「利上げ圧力」にさらされるFRB

その政策判断としては、巷間言われる「のりしろ」づくり、つまり次の金融危機に備えて利下げの余地を作っておくというものですが、それ以外に、国際金融資本配下の金融機関が、付利金利の上昇で黙って大きな利益を得られること(0.75%の付利なら年190億ドル弱)、中国経済に打撃を与え、軍事力拡大、覇権拡大を阻止できること、などがあります。

以上のように、市場が予想する以上にFRBには利上げ圧力がかかっています。

それでも仮に反対が強く、今週の利上げが難しいとの判断となった場合、これまでの市場安定化努力を無にしないためにも、4月ないし6月の利上げを示唆したうえで見送ることになるのではないかと思います。

影響が大きいだけに、利上げリスクを頭の隅に置いておいた方がよいと思われます。

【関連】世界が注目する3人の大暴落予測 近づく「ダウ6000ドル時代」の生き残り方

マンさんの経済あらかると』(2016年3月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

マンさんの経済あらかると

[月額880円(税込) 毎週月・水・金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。