マネーボイス メニュー

不適切営業に沸く、郵政グループ3社合わせて10兆の時価総額を保つことはできるのか=街

かんぽ生命やゆうちょ銀行の不適切営業の問題が、広がりを見せています。そこで今回は、大元である日本郵政を例に今後の株価を考えてみたいと思います。(『億の近道』街のコンサルタント)

プロフィール:街のコンサルタント
20数年間を金融(主に証券)会社で過ごし、投資銀行業務や事業育成の業務を担当。「金融機関に籍を置く(安全な)立場で客観的なことを言うより、いっそのこと経営者と同じ立場で事業拡大のお手伝いを出来ないものか」と思い立ち、2005年春に証券会社をリタイアしてコンサルティング会社を設立。

かんぽ生命やゆうちょ銀行の不適切営業が企業価値に与える影響

上場前の予想通り、株価は大きく下落し続ける郵政3社

即位礼正殿の儀も無事済み、いよいよ本格的な令和の時代が始まります。

その様子をTVで見ていて、世界も「これで日本は何か変わるのか?」と、興味深く見ているようにも感じました。是非日本にとって新しい思想を持った良い時代になって欲しいと願います。

さて、そんな明るい雰囲気に有る中で、かんぽ生命やゆうちょ銀行の不適切営業の問題が広がりを見せています。

これだけ稚拙で露骨、且つ悪質な営業手法が広範囲に行われていたにも関わらずニュースが少なく感じます。何せマスメディアが騒ぎません。総務省をはじめとした政官の上層部が抑えつけているのでしょう。

日本郵政グループ3社が揃って上場したのが2015年秋

もう4年も前、鳴り物入りの上場で引受け証券会社も必死に売りまくっていましたが、残念ながら想定通り、3社ともが上場時から大きく下落しています。

当時、何人かの知り合いから「郵政株を勧められているが買った方が良いか?」の問い合わせに対して、「将来性が見込めない株は私なら買わない」「どうしても付き合いで買わねばならないなら、上場後直ぐに売ったほうが良い」などと答えていました。

上場翌月は(営業努力もあり)3社とも幾らか上がりましたが、その後売られて下げてからは概ね横ばいで推移していましたが、2018年春以降にダラダラと下げている中で不適切営業の問題が噴出しました。

以前から書いている通り、上場させても既得権維持に腐心する(地方を含めた)ゴキブリやシロアリの群れ、外部から招聘した(お飾りの)経営陣、本当のノルマ営業の現場や方法を知らない中間管理職、何でもかんでも押し付けられ疲弊する営業の最前線。そこにインセンティブ狙いの悪質営業マンも参戦し、これらが一体となって今回の問題に繋がっていったはずです。

さて、問題発生の本質は読者の皆さまの誰もがご存じの通りですし、そして国(政府)がこの問題をどうやってウヤムヤにして責任を回避するのか?…は分かりませんが、大元である日本郵政を例に今後の株価を考えてみたいと思います。

同社の売上高は前期(2019年3月期)1兆2,775億円、経常利益が830億円で、上場直前の15年3月期のそれぞれ、約1兆4,259億円、1,116億円から徐々に減少傾向にあります。

今期の予想売上高を1兆1,880億円(前期比約7%の減少)、予想経常利益で710億円(同約14.5%の減少)としており、不適切営業の問題が発覚した以降も期初予想を修正していません

これは今年春にかんぽ生命株の売り出しをしているため「下手に修正してはまずい」と考えてのことかも知れません(苦笑)。

が…、第1四半期が前期比で売上5.5%の減、営業利益3.8%減となっており、これに第2四半期以降の保険及び投信の販売自粛を踏まえれば、今後は売上げも利益も大きく減っていく可能性が高いと考えられます。

となると、今まで郵政3銘柄の「セールスポイント」であった高配当を続けられるのか?という疑問が湧いていきます。

Next: 郵政3銘柄は、今後も高配当を続けられるのか?



業績低迷を織り込んで、PBR0.3倍まで株価は低下

日本郵政は足元2年間のEPS(1株当たり利益)が110円強で50円の配当ですから、配当性向は約40数%。株価が1,000円前後をウロウロしていますから配当利回りが5%前後(ゆうちょ、かんぽは4%台後半)と、比較的利回りが高いことで買われている面がありますが、業績低迷で今期のEPS(現在予想103円)を大幅に下回るようであれば、この配当レベルを今後も維持できるのか?と言うことです。

それを先取りして株価が下げているのでしょう。減益の中で配当を維持すれば配当性向が上昇する一方、株価の成長期待が一気に下がります。つまり株価は上がり辛くなりますから、配当利回りは高いが株価は上がらず、且つ減益どころか赤字になれば資産を食いつぶし始めることになります。それらを織込んでPBR0.3倍まで株価が下げているのでしょう。

ゆうちょ、かんぽも同じ理由で配当を維持できるのか?ということです。

ゆうちょに至っては、前期EPS71円に対して配当50円(配当性向70%)ですから、いよいよ高額な配当を維持できるのか疑問になります。無理をしているように見えます。

減益が続くことで配当を減らさざるを得ず、それにより成長期待も無くなるなら株価は下がり続ける可能性が高まります。

少なくともPBR1倍を大きく下回っているのですから、解散して資産分配でもしてくれるなら株主は報われるかも知れませんが、公益企業でそれは無さそうです。何せ役所(のシロアリ)は負担を国民に押し付けて予算を獲得することしか頭にありませんから、国民の利益の為に折角の資産を失うなんてことはしません。

間もなく中間決算の発表になります。

さて、現在3社合わせて約10兆円の時価総額を保てるのか?

B/S上の資産総額は30兆円にもなりますが、本来はこの10兆円が将来的な実態資産と言うべきなのでしょうか?

元財務官僚の高橋洋一氏が言うところの、本当の資産は役所のみが知ると言うことで、これも日本国の財務体質を知る手掛かりになるのかも知れません。この貴重な国民資産をゴキブリやシロアリが食い潰す前に何とかするのが民営化(上場)であり、事業価値を高める施策だったはずです。

【関連】ソフトバンクGはいま買えるのか?バリュー株投資家に求められるのは「ドM気質」=栫井駿介

【関連】新規上場後、株価も業績も好調なレオクラン。新事業の創出で開発すべきサービスとは

【関連】個人投資家は大口の売買に逆らうな…機関投資家の売り買いを見極める歩み値の見方=山田健彦

image by : Osugi / Shutterstock.com

億の近道』(2019年10月21日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

億の近道

[無料 週3~4回]
個人投資家の方にも機関投資家並み、若しくはそれ以上の情報提供をするのが目的です。株式で「億」の資産形成を目指しましょう!我々マーケットのプロが導きます。各種コラムが大好評!内容に自信アリ。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。